EXPOSURES
海外写真家たちのプロジェクト
ロバート・ドーソン『パブリック・ライブラリー(公立図書館)』


海外写真家のプロジェクトを紹介するコーナー。
今回は、サンフランシスコ在住の写真家ロバート・ドーソンが18年に渡って
アメリカ合衆国の公立図書館を訪ね、撮影した作品集を紹介する。
text:兼子裕代(写真家)

図書館の廃屋、ジェフリー・シティ、ワイオミング、2012
ジェフリー・シティはかつてウラニウム鉱山として繁栄したワイオミング州の中心に位置する街である。1982年に閉山したのち3年後には95パーセント以上の住民が街を去った。2010年時の人口58人。


写真集『パブリック・ライブラリー(公立図書館)』は、サンフランシスコ在住の写真家、ロバート・ドーソンが1994年から18年に渡ってアメリカ合衆国の公立図書館を訪ね、撮影した作品集である。

リーディングルーム、ウォバーン公立図書館、ウォバーン、マサチューセッツ、1994
1876年チャールズ・ウィンの巨額な寄付金によって建造された。建築家ヘンリー・ホブソン・リチャードソンによる。国定歴史建造物。

 

一見すると地味な建築写真のコレクションであるが、ページをめくるにつれ、その多様さに驚かされる。質素な木造の図書館から、重厚巨大な古典様式の図書館、ガラス張りのモダン建築もあれば、ゴーストタウンの廃墟と化した図書館まで。その差異の広さは、この国の歴史を表象すると同時に厳しい格差社会を物語っているとも言えよう。
「図書館は、この国において、税金で運営される数少ない公共施設のひとつです。人々は公というものを敵対視すると同時に依存もしている。そういった、市民と公の関係への強い関心がこのプロジェクトへ私を駆り立てました」

プレーリー(大草原)図書館の廃屋、アミドン、ノース・ダコタ、2012

デスバレー国立公園内の図書館、カリフォルニア、2009
100マイル四方に唯一の図書館。 地球上で最も暑い土地デスバレーで、熱を防ぐため、屋根にシェイドが付いている。

グラフトン・タウン・ライブラリー、グラフトン、ニュー・ハンプシャー、1994

 

確かにアメリカには公共のホールや美術館もなければ、国民健康保険もなく、自治体が市民に提供する場所やサービスが他の先進国と比べて少ない。それだけに図書館は単に本を貸し出す機関としてだけではなく、「コミュニティのサービスセンター」としての役割を担っているようである。テック・ブーム(※)で家賃が高騰し続けるサンフランシスコ市のメイン・ライブラリーは、周辺のホームレスが雨風をしのぐシェルターとしても機能し、ソーシャルワーカーが常勤しているという。

「私はこのプロジェクトを通じて、想像していたよりずっとポジティブな何かをこの国に感じることができました。人は隔てるものより共通するものを多く持っているということです。大抵の人々は家族を愛し、真面目に仕事をし、地域を大切にし、図書館を大事に思っている。なぜならそこはコミュニケーションの場であり、人が他人とつながる場だからです。現在、世の中では”ヘイト”の方が注目されているように見えますが、私たちは、自分たちが考えるよりずっと似たような思考や感覚を多く共有していると思います」

(※)2011年頃より、Facebook、twitter、Airbnbをはじめとする市内テック企業の拡大/増資により、好条件の雇用を生み、大量の若者が移住してきたため、住居不足と家賃の値上げが急激に進んだ。それに伴い、多くの地元住民が立ち退きを余儀なくされ、ホームレス人口も急増している。

コンピュータールーム、ハロルド・ワシントン・ライブラリー・センター、シカゴ、イリノイ、2009
レコード、ヴィデオテープ、eブックと、図書館は常に新しいテクノロジーを導入し市民に提供する場所であり、特に低所得者がコンピューターを無料で使用できる貴重な施設でもある。


写真集が出版された2014年と比べて、さらに排他的な情勢が加速する現在についてどう思うかを質問すると、
「年齢を重ね、政権のアップダウンをいくつも見てきた分、悪い状況の中にも、良い面があると考えられるようになりました。ひとつポジティブな例をあげれば、---------
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