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HOW TO / 作品制作のヒント

PPC上位入賞への道!


無料で気軽に応募できるPPC(ファットフォトコンテスト)
プリント応募、オンライン応募が自由に選べるようになりました。
「なかなか入賞しない!」という方に向けて、上位入賞への極意を、
さまざまなプロフェッショナルに教えてもらう連載企画です。
本コンテスト以外の応募時や、写真展で作品を展示するときにも
使えるテクニックをご紹介していきます!

Vol.1「1枚写真のタイトルの付け方」

大和田良

今回のテーマは「タイトルの付け方」。写真は撮れても、タイトルをつけるのが苦手!という方も多いのでは?フォトコンテストの応募時に参考になるタイトルの付け方について写真家の大和田良さんに訊きました。後半では、現在公開中のVol.100で実際に応募された方の作品のタイトルについて何作品かをピックアップし、作品タイトルの講評を行っています。

大和田良/Ryo Ohwada
おおわだりょう 1978年宮城県生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科修了。スイス・エリゼ美術館「明日の写真家50人」に選出される。日本写真協会新人賞受賞。

 

写真=大和田良

 

この写真のタイトルは何?大和田さんがどう考えて付けたのか、文の最後をチェック!

タイトルの前に、審査でいつも気になる、
インクジェットプリントの話。

PPCで拝見する応募作と作家は、他誌やさまざまなコンペに比べても年齢層が比較的若く、そのためアイデアがありフレッシュな作品を見かけることが多いように思います。

ただ、同時に技術的な不足が目立つ写真が多いという印象があります。特にプリントのクオリティには技術の差というのが表れやすいのですが、みなさんはどのようにプリントされているでしょうか。

1枚出してOKという方は、少なくともプリントではなくまずはオンラインで応募することをお勧めします。熟練した技術者や写真家でも1枚でプリントが成立することは、ほとんどありません。

特にインクジェットプリントは難しく、トーンやコントラスト、紙の相性などを吟味する技術が無ければ、モニタ上で撮影したままの写真のほうが数段高いクオリティで写真を見せることができるでしょう。

オンライン応募が可能なPPCにおける最大の利点はここだと私は思います。

撮影技術で劣るということは今のカメラを使えばほとんどありませんが、プリント技術はそうはいきません。

しかしながら、この難しいプリントの工程をパスできれば、今日写真を始めたという方でも十分に入賞の可能性はあるでしょう。初心者から中級者の方にはオンライン公募の制度を積極的に使ってみてほしいですね。

ただし、最終的には適切なプリントが仕上げられるように精進していくことが重要です。良いトーンで再現されたプリントのモノとしての存在感は、やはりモニタで見るよりもずっと説得力がありますし、作家の力を感じられるものです。

審査員がタイトルを確認するのは、どのタイミング?

さて、前置きが長くなってしまいましたが今回はタイトルについてです。

はじめに写真の審査においてタイトルがどのように見られているのかということをお話ししておいたほうが良いかと思います。

作品を裏返してタイトルを確認するのは、いちばん最後。どれを1位にするのかといったタイミングになります。

いままでに多くの方とPPCに限らず写真審査をご一緒する機会がありましたが、途中の段階からタイトルを重要視する選者は、いないとは言いませんが、かなり少なかったように思います。

まずは純粋に写真の力を見て候補を残し、最後の一押しとして作者の真意を探るヒントのようなものを得るために、タイトルを確認するということが多い印象です。

ですから、選者はタイトルを確認する段階で、すでに一定の評価をその作品に与えていることになります。

写真が得たこの評価を、タイトルが大きく引き上げることはほとんどの場合ありませんが、逆に下げることは多くあります。

みなさんに注意してもらいたいのはこの「下げる」点だと言えるでしょう。

たとえば、

こう見て欲しいという作者の思いが強すぎてひとりよがりなタイトルになっているもの。

写真の説明文のような言葉。

あるいは写真の内容と全く関係がないと思われるタイトルなどは、

評価を下げやすい一例といえます。特に言葉で表現を押し広げようとしている場合や、

言葉の意味合いのほうが強いタイトルは選者を白けさせる傾向があります。

Vol.100の受賞作品から、気になったタイトルを講評!

今回は、いまWebで紹介されている、Vol.100の実際のPPCの応募作からいくつか気になったものを取り上げてみたいと思います。

まず2位の笹岡正人さんの「繋がる」。

これは写真とも合っていますし、非常にシンプルで良い言葉選びをされたと思います。

 

5位の畠山雄一郎さん、「Street life」。

写真に合っている気もして良いのですが、LifeやLoveといった言葉は非常に意味が深く、ともすれば安易な言葉選びに感じられることがあります。意識して慎重に使っていったほうが良い言葉だといえるでしょう。

 

次に同じく5位の竹嶋亮太郎さん、「Dangerous flight」。

私から見るとちょっと言葉での表現が強く、写真から想像できる広がりを阻害しているようで、世界観が狭くなってしまうタイトルだと感じました。

 

入選作品の加藤光博さんによる「いざないの道」は、写真の説明、あるいは答え合わせになってしまったように思います。

1枚写真のタイトルというのはなかなか迷うかたもいらっしゃるのではないかと思いますが、

良い言葉が見つからない場合は物や場所の名をそのままシンプルに付けるというのが良い場合があります。

たとえば、「渋谷」だとか「赤い服の女」といったような言葉の意味による表現を最小限にしたタイトルですね。

生半可に言葉をひねってしまうと、表現がうまく写真と調和しないことがあります。

また、練った言葉をタイトルにする場合には一度時間を置いてから再考してみるのも良いでしょう。

いずれにせよまずは、タイトルが作品の評価を下げることがあるということを意識するだけで、言葉選びは大きく変わってくるのではないでしょうか。

タイトル「掴むということについて」

見ての通り、冒頭の写真は不自然なフレーミングによって一見なにを主体とした写真なのかがわかりにくいところがあります。

このような場合、私は被写体の名称をそのまま付けるのではなく、そこで写そうとした「なにか」を、あまり説明的になりすぎない言葉を選んだ上でタイトルとしています。

ここで私が被写体にレンズを向けた大きな理由のひとつは、鋭い爪が木を掴むその握力のようなものにどこか心が惹かれるものがあったのだということを端的に伝えるようにしました。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和