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「御苗場」夢の先プロジェクトグランプリインタビュー「ダンボールヒーローになった箱入り息子」あふれる日常感を1枚に① with Nikon D750

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御苗場夢の先プロジェクト Supported by Nikon
第11弾グランプリ・ニコン賞
箱入り息子
1994年徳島県生まれ。第61回二科会写真部展学生部門入選。2013年度第11回JPA公募展入選。2014年第39回2014JPS展20歳以下部門優秀賞受賞。御苗場Vol.19関西エプソン賞受賞。Facebook

御苗場の「夢の先プロジェクト」とは、ニコンイメージングジャパンの協力のもと、レビュアー賞受賞者が特別ワークショップを経てグループ審査展を行い、最終的にグランプリ・ニコン賞1名が決定されるものです。
本記事は、御苗場Vol.20横浜の受賞者による「夢の先プロジェクト」にて
グランプリ・ニコン賞に輝いた箱入り息子さんをご紹介。
賞品であるNikon D750、愛機のNikon Dfを使用して撮影した新作、また、その作品制作への想いを語ってもらいました。
 
いままでメッセージ入りの段ボールに入って日常で感じたことを
作品にしてきた箱入り息子さん。
セルフポートレイトから始まり、彼女ができてからは彼女と一緒に、
そして新作では新たな展開が…。
今回は、作品と一緒にしたためている日記と一緒にご紹介します。

 
御苗場Vol.20横浜グランプリ・ニコン賞に輝いた箱入り息子さんの作品はこちら 

 

D75024㎜/f7.1SS1/60秒/ISO1000AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR (グランプリ受賞作品の一部)

――日記とセットで作品を見ると、作品がよりリアルになりますよね。ふだん、この作品はどのようなことを考えながら撮影されているのですか?

 

箱入り息子 自分の喜び、悲しみ、不安や希望、すべての感情が作品に反映され得るので、心の声に耳を澄ますようにしています。いま、自分は嬉しいのか悲しいのか、苦しいのか、楽しいのか?と。ここで撮りたいとイメージを持って撮影に行くこともたまにありますが、ほとんどが、直感的に良いと思った場所でのゲリラ的な撮影になるので、本当にいま残したい気持ちはどれなのかを、常に頭の片隅で考えながら生活しています。
いまの自分はいましか残せないと思って、1回1回、納得のいくまで撮影しています。

 

Df35㎜/f5.6SS1/30秒/ISO1250/AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
 

――この作品の文章の冒頭は印象的ですね。彼女のご両親にあいさつされたのですか?

 

箱入り息子 はい。日記にも書いていますが、この日が彼女のご家族と初対面でしたので、とても緊張していて仕事が手につきませんでした。怒られるかな、とか、認めてもらえるかなとか、色んな不安な感情をこの1枚に納められたと思います。ご家族に快く撮影を引き受けていただけたときは、ホッとしました。
通過していくまわりの人も、お店などから漏れるオレンジ色の光や自動販売機のブルーの光と自分の感情を重ね合わせて、この1枚に込めました。

 

――この写真でこだわったポイントは?

 

箱入り息子 手前から奥へ、青からオレンジへ色が移っていく中間地点、また、画面奥へ流れていく人の流れの真ん中に自分たちを入れることで、自分たちを画面の主役にしました。あと、画面左から登場人物の洋服の色が緑、黄色、赤の3色の信号カラーになっているところが、個人的に気に入っています。

 

――こちらの写真は、複数枚が重なり合っているのですよね。

 

箱入り息子 そうですね。この写真は、1回で撮影したものではないです。自分の撮影技法として、1回の撮影ではなく、同じ場面で何度か撮影をしています。これは彼女のご家族にご挨拶をしたときのものですが、カメラがあるとわかると相手の表情もぎこちなくなってしまうので、いい表情が撮れるまで、連続で何度もシャッターを切り続けています。撮った写真の中で、1番いい表情と風景を重ね合わせているのですが、それぞれが同じ時間を共有していて、同じ空間にいる事実は変わらないです。

 

D75020㎜/f3.5SS1/20秒/ISO1600Voigtlander COLOR-SKOPAR 20mm F3.5

D75029㎜/f5.6SS1/20秒/ISO1600AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR
 

――こちらの作品は、2点ともベランダから窓越しに撮られているのですよね。どうしてそこから撮ろうと思ったのですか?

箱入り息子 1枚目の写真は何年も過ごした部屋だったので、できるだけ部屋の広い範囲を残しておきたかったのと、当日は雨が降っていたので、外から網戸とガラス越しで撮影することで雰囲気を出しました。

その流れで、下の写真の新居でも、同じように窓越しからカメラの映り込みを活かして撮影しました。結果的に、マンションに囲まれた薄暗いひとり暮らしの部屋から、開放感のある明るい2人暮らしの部屋に引っ越した、環境の変化を残すことができたのでうまくいったと思います。

 

――そのときの箱入り息子さんの感情が伝わってきますね。作品制作をしていく中で、気持ちの変化はどのようなものでしたか?

箱入り息子 彼女ができるまでは、仕事がしんどいとか、ひとりは寂しいとか、ネガティブなイメージの写真が多かったのですが、彼女が出来てからガラッと雰囲気が変わった気がします。笑顔が増えて、本当に別人のような印象になったと思います。写真は、人のありのままを写しているなと思います。

D75020㎜/f3.5SS3秒/ISO2500Voigtlander COLOR-SKOPAR 20mm F3.5

――日記のように撮られている作品ですが、文章と写真はどちらが先に思いつくのですか?

 

箱入り息子 文章を考えるのは撮影した後です。撮影した写真をプリントアウトし、まずはその時の気持ちを思い返しながら、自分の視点で文章を考えます。その次に、少し写真を引いて見て、周りに写る人や物も含めた、客観的な視点で文章を考え、その2つを混ぜ合わせて、最終的な文章を組み立てます。

 

――写真だけの表現でなく、文章も合わせたのはなぜですか?

 

箱入り息子 実は、箱に見立てた段ボールにも文字を書いていて、写真と段ボールに書いた一言だけでも、自分には、「このときこういうことがあって、こういう気持ちでこういう文字を書いた」とわかりますが、自分以外の人にはわかりにくいと思います。僕自身、想像力が乏しく、見る側に想像させる写真がとても苦手で、難しい写真はどうしても敬遠してしまいます。単純に「綺麗、かっこいい、面白い」みたいな、誰が見ても共感できるようなイメージの写真がつくれたらいいのにとは思っていますが、なかなか僕の写真だけでは難しいと思うところがあります。
そこで、日記という形で、自分の心の中をさらけ出すことで、見る側の人に自分の意図や気持ちが伝わって、共感してもらえたらいいなと思っています。
写真だけ見て想像していただくことは自由ですが、そのあとに答え合わせをするというか、一応撮る側はこういう気持ちで撮っていますという説明があったほうが、自分の写真をより味わってもらえるのではないかと思います。

 

箱入り息子さんの人生を垣間見るかのような新作。
後編では、箱入り息子さんがD750で実際にどのように撮影していたのか、撮影時の様子や意識された点について語ってもらいます。

 


箱入り息子さんが使用したカメラ

Nikon D750

フルサイズならではの描写力と高感度が生み出す写真は、表現者に撮る喜びを与えてくれます。
どこへでも連れていける小型・軽量ボディに高い機動力を凝縮。


・室内や夜など、暗所撮影にも強い有効画素数2432万画素FXフォーマットCMOSセンサー搭載
・約6.5コマ/秒の高速連続撮影、高密度51点AFシステムで高い被写体捕捉性能を発揮
・チルト式液晶モニター、Wi-Fi機能を搭載


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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