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「御苗場」夢の先プロジェクトグランプリインタビュー「ダンボールヒーローになった箱入り息子」あふれる日常感を1枚に② with Nikon D750

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御苗場夢の先プロジェクト Supported by Nikon
第11弾グランプリ・ニコン賞
箱入り息子
1994年徳島県生まれ。第61回二科会写真部展学生部門入選。2013年度第11回JPA公募展入選。2014年第39回2014JPS展20歳以下部門優秀賞受賞。御苗場Vol.19関西エプソン賞受賞。Facebook

御苗場の「夢の先プロジェクト」とは、ニコンイメージングジャパンの協力のもと、レビュアー賞受賞者が特別ワークショップを経てグループ審査展を行い、
最終的にグランプリ・ニコン賞1名が決定されるものです。
本記事は、御苗場Vol.20横浜の受賞者による「夢の先プロジェクト」にて
グランプリ・ニコン賞に輝いた箱入り息子さんをご紹介。

前半では、箱入り息子さんの作品に対する想いや変化について話していただきました。
後半では、撮影方法や今後について語ってもらいます。

Df78㎜/f3.2SS1/1000秒/ISO100/AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

D750120㎜/f2.8SS1/80秒/ISO1600AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

――いろんな場所で撮影されてますね。アイディアがわかないときはどうしていますか?

 

箱入り息子 はっきりとした撮影イメージが湧いてくることは本当に稀です。
基本的には、出かけた先でどこか惹かれる背景を見つけて、ダンボールを探して、そのあとにダンボールに書く文字を考え始めるといった感じです。たまたま見つける背景ですが、不思議なことに、ダンボールの文字と背景と日記でまとまればしっくりくることが多いです。
いい背景が見つかっても、なかなかダンボールの文字が思いつかないときは結構ありますが、そのときはただただ考え続けます。

 

――上記の2枚の写真は、それぞれ人物が前ボケになっていますが、意図的だったのでしょうか?

 

箱入り息子 上の写真に関しては、編集の段階で、画面左の母子も、画面右の2人の子どもも外し難いということになって、たまたま中心に前ボケで彼女が写っていたカットがあったので、最終的に彼女を入れるかどうか迷ったのですが、それを採用しました。

彼女への思いを書いたカットだったので、やはり彼女にも画面に入っておいてもらいたかったのと、前ボケの彼女を入れなかったらもっと平面的な写真になって物足りないかなと思うところもあったので、彼女にはちゃんと断りをいれて、使わせてもらいました。あと、中心に前ボケの写真はいままでなかったのでなかなか新鮮でいいなと思ったのも理由のひとつです。
 
また、下の写真に関しては、自分のイメージ的に画面左の鉢植えはそのまま使いたくて、中心の遠くに自分と彼女がいて、画面右に前ボケで通行人を入れたかったのですが、うまいこと通行人が入らなくて、最終的に彼女のポジションが画面右になりました。幼女に覗き込まれている彼氏と距離を開けて彼女がいた方がシュールな雰囲気が出て写真としてはいいと思いました。彼女には本当に感謝しています。

 

D75098㎜/f2.8SS1/8秒/ISO2500AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

――夜景など暗いところで撮影することもありますよね。作品にも活きたD750の性能はどんなところですか?

 

箱入り息子 撮影スタイルは、基本、セルフポートレイトなので、三脚を使用してローアングルで撮影するときもあります。そんなときは、チルト式液晶で低い位置でもモニターを確認できるのが便利でした。また、日中だけでなく、部屋の中や夜景、雨が降っているときに撮影することもあり、ストロボが欲しくなるのですが、内臓ストロボだけでも光量がありました。また、暗い場所の撮影でも高画質なので、イメージ通りの絵づくりができて、とても助かっています。

 

――撮影で苦労した点はどんなところですか?

 

箱入り息子 いい場所を見つけてからダンボールを探して三脚を用意して、構図を考えたり文字を考えたりしていたら、どうしても時間がかかってしまい、だいたいいい場面を逃してしまいます。雪が止んだり、日が沈んだり、店の照明が消えたり…
また、どうしても箱とカメラの距離が空いてしまう場合は、箱に入るときはカメラから離れなければならないので、カメラが盗られたりしないように全力疾走で箱に入って可能な限り素早く撮影します。望遠レンズを使うときはそれなりの覚悟が必要です。

 

Df180㎜/f2.8SS1/160秒/ISO2500AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

――こちらの雨の日の写真は、傘をさして地面が濡れているので、撮影が大変だったのではないでしょうか?

 

箱入り息子 雨で濡れるとダンボールがどんどん弱っていくので、時間との勝負でした。
最後は何回か飛ぶうちにダンボールが大破して撮影終了でした。
ちなみに、僕がどうしても「ダンボールヒーロー」と書きたかったのでダンボールヒーローと書いたのですが、彼女としてはもっとちゃんとした1年記念日の写真にしたかったようで、撮影も雨で大変でしたが、それ以上に撮影後に彼女の機嫌をとるのが大変でした。

 

――構図や光はどんなところをよく意識されていますか?

 

箱入り息子 基本的には広角から望遠まで、色んな画角のレンズを使うようにしていますが、最近はやたら望遠にはまっているので望遠が多めになっています。
自分の入る位置は、近景、中景、遠景と、できるだけ色んなポジショニングになるようにして、同じような写真が続かないように、アングルもできるだけ変えるようにしています。
自分にあたる光は、多くの場合スポット光が理想ですが、できないときは目立つ明るい場所に自分が入るようにしています。自分を目立たせたくない場合は別ですが。

 

――1枚の撮影時間と1枚に仕上げる時間はどのくらいですか?

 

箱入り息子 ほんの数枚撮っただけで撮影を終えるときもありますが、300〜400枚くらい撮影しているときもあります。通行人を入れたくて、人が通りかかるまでただ何十分か待っているだけのときもあります。
撮影時間にすると、最速で2、3分で、最長で3時間くらいかけて撮っていることもありました。 

稀に一発撮りで、後からパソコンで明るさやコントラストを調整して終わり、というようなこともありますが、基本的には何百枚撮った中から、それぞれのカットのいいとこ取りで1枚を仕上げていることが多いです。このカットのこの通行人を使いたいとか、このカットの自分がいちばんいい表情だから自分はこのカットを使おう、とかいう感じです。そうやって1枚をつくっていくと、撮影枚数が多いほど選択肢が多いので、その分仕上げるまでに時間がかかります。
撮影で何百カット撮ると、自分の優柔不断な性格もあり、このカットも捨て難いとか、迷ってしまい、仕上げるまでに1週間くらい悩んでいることもあります。

 

D75034㎜/f7.1SS1/200秒/ISO200AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

――作品を観ていると、彼女ができたんだ、とか、同棲したんだ!など、箱入り息子さんの人生の転機に、思わずほっこりしますね。

 

箱入り息子 写真を振り返ると、2017年は横浜の御苗場から始まり、夢の先プロジェクトに参加して、さらに作品制作を深めることができました。私生活でも、旅行や引っ越し、ご家族に会うなどの大きなイベントから、彼女と揃って風邪をひいてしまったり、日常の些細な風景だけど、自分にとってはかけがえのない1日を写しています。それも自分ひとりでは成立しなかった思い出ばかりです。

 

D75090㎜/f4SS1/60秒/ISO1250AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF)

―作品点数が増えてきていると思いますが、今後、どのように活動していきたいですか?

 

箱入り息子 このシリーズを撮影し始めてからもう5年経つのですが、よく5年も続いてるいなと自分でも思います。飽きっぽい性格なので驚いています。もともと自分を知ってもらいたくて撮った写真なので、このまま続けて、多くの人に見てもらって、もっと自分を知ってもらえたらと思います。

 

―最後に、これだけは伝えたい!ということはありますか?

 

箱入り息子 もし街でダンボールに入っている人を見つけても、決して怪しい者ではないので、警察に通報するのはやめてください(笑)

 

D750200㎜/f3.2SS1/125秒/ISO2500AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF) 


箱入り息子さんが使用したカメラ

Nikon D750

フルサイズならではの描写力と高感度が生み出す写真は、表現者に撮る喜びを与えてくれます。
どこへでも連れていける小型・軽量ボディに高い機動力を凝縮。
・室内や夜など、暗所撮影にも強い有効画素数2432万画素FXフォーマットCMOSセンサー搭載
・約6.5コマ/秒の高速連続撮影、高密度51点AFシステムで高い被写体捕捉性能を発揮
・チルト式液晶モニター、Wi-Fi機能を搭載


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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