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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.7 夜行バスで隣の席のおばちゃんと一緒に少女マンガを読んだ話

Magazine, レポート


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

インディヘナというのは、スペイン語でインディオのことを指し、
先住民の方々のことを言います。
ペルーでは、インディヘナの人たちが日常生活の中でも民族衣装で生活しています。
民族衣装は鮮やかな色の綺麗な布でできていて、
おばちゃんのはいているスカートはとても可愛いです。
画像検索してみてください。
そしておばちゃんたちはだいたい概ねでかい。スカートがボリュームがありフワッとしているので
さらにでかい。フロシキみたいなのに包んで背中に背負っている荷物もでかい。
そして強いです。

クスコに向かう夜行バスで、隣りがインディヘナのおばちゃんでした。
定番の長い三つ編みとでかいフロシキが境界線を飛び越え、わたしのスペースを浸食してきます。
全然寝られなかったので、パソコンに入っているマンガを読むことにしました。
「はちみつとクローバー」
少女マンガ的要素が盛り込まれたマンガです。

気づいたらおばちゃんが隣で画面を覗いていて、
ちょっとキュンとするような場面に来るとハッ!と息を飲む音が聞こえるのでちらっと見たら
うっとりした顔をしていました。
そして、字がいっぱいあるページを読んでいると
肘で小突いてきて、それわからんから飛ばせ。と言ってきます。
そこ読みたいんですけど。

途中から完璧にページをめくるペースはおばちゃん主導でした。
というか、勝手にページ送りのボタンを押してきました。
ペルーのおばちゃんをもキュンとさせる日本のマンガすごい。

翌朝バスが着いてターミナルの隣の食堂で座っていると、
そのおばちゃんが隣にドーン!と来ました。
結局わたしたちは夢中でマンガを読み続け一睡もできず、眠いねーとか言いながら
朝食である何かよくわからない汁を一緒にすすっていました。
「あんた昨日のマンガに出てくる中でどの男がタイプなの?」とおばちゃんが聞いたので
わたしは画面を見せながらこの人だよ。と言うと、
そんな弱そうな男はダメだと鼻息を荒くしました。
うっとりしていたくせに。

それから、男はこうあるべきだ、というようなことを十分くらい力説して、
でかい荷物を周りにばんばんぶつけながら去っていきました。。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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vol.8 クスコで良い村を見つけた話
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