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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.12 水着を盗まれてジャングルに迷い込み、居候先を見つけた話

Magazine, レポート


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

グアテマラのアンティグアという街ではスペイン語の学校に通っていました。
午前中に4時間学校に行って、ホームステイ先に帰り、
昼ごはんを食べてカフェに行って夜ごはんまで予習復習をする。そんな毎日です。

私は勉強が、とても嫌いです。
必要に迫られてやっているのであって
別に語学に興味があるわけではない。
英語もロクに話せないのに。
なかなかしんどかったです。
旅行に戻りたい、砂漠に行きたい。富士山に登ってみたい。
何で外国でこんなにガリ勉してんだろう…と、
どんどんと気持ちが狭くなってきて、楽しくありませんでした。
そんな私を見て、同じホームステイ先に泊まっているフランス人と、ドイツ人の女の子が
「ゆき!遊びに行こう!週末ビーチに行こう!」と誘ってくれました。

と、いうことで。
ビーチリゾートへ2泊3日で行ってきました。
綺麗な海で遊び、疲れたらビールを呑んで、音楽を聞く。
とても良いのですが、私はあんまりそういうノリノリな、イエーイみたいなのが得意じゃないので、
みんなについていけず、ひとりハンモックに揺られながら月を見たりして
んー。スペイン語も上達しないし、やっぱり、日本帰りたいなあ。梅干しのおにぎり…と
切ない夜を過ごしました。

次の朝。ドミトリーの外に干してあった水着が盗まれていた。
この旅行の前日スーパーに買いに行って、みんなで見せ合いっこしてテンションをあげていた水着。悲しい。
これは神様が、26歳になってオレンジのビキニなんて着てんじゃねーよ。と怒っているのだろうか、と考えたけど、
海には入りたいので、ひとりで海の周りの売店に水着を買いに行く散歩に出かけました。

少し離れただけでリゾート感が薄れ、ただの村になりました。
しばらく歩くと、綺麗なマングローブが見えたので近づいていきました。
マングローブまで行くと、放し飼いにされた子豚達が見えたので寄っていきました。
すると人が来て、あっちにも牛とか、イグアナとかいるからついておいで、と言われてついていくと、ちいさな集落がありました。
用心はしているけど、大丈夫だと判断すると、知らない人にもついていっちゃいます。

一通り動物たちと戯れた後、疲れたので、ある家の庭に吊ってあるハンモックに乗って一休みしているといつの間にか寝てしまって、知らないおばあちゃんに揺り起こされて目が覚めました。
うちで何してんの?
と聞かれ、
すみません寝てました。
と答える。
怒られるかなあと思ったけど、まあこれでも食べなさい。と庭の木になっているマンゴーをいただき、楽しくお話をしました。
リゾートもいいけど、こんなところでのんびりしたいなあ。
と言うと、
じゃあウチに泊まればいいんじゃない?
と言ってくれました。
アンティグアであと2週間学校の授業が残っていたので、終わったらまた来るわーと約束をして別れました。

それから、あんなに憂鬱だったスペイン語の勉強も、それほどは苦でなくなった。
それだけのことを考えて、それだけのために頑張ってもうまくできないもんだなあ。
良い写真を撮りたいと思って、良い写真を撮ろう!と頑張っても
うまくいかないのと同じようなものかもしれない。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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vol.13 友だちが戦闘の中にいるかもしれない。となったことで、平和を願った話
vol.14 名人を目指すことになった話
vol.15 ジャングルでのホームステイ、なんとか始めた話

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