内藤由樹の海外武者修行ログ
vol.21 シャーマンの儀式を受けに行った村で木登りをし、変な男と闘った話


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
世界各地を巡り、現在ペルーにある「Centro de la imagen」のマスタークラス在籍中。
http://yuki-naito.tumblr.com

さて、メシア(救世主)に祭り上げられてしまったジャングルの村を去り、
再び、アンティグアに戻ってきました。
2週間程ジャングルに居ただけで、スーパーマーケットのある町の大きさに戸惑った。
朝に鶏の声がしないのも、庭にブタが居ないのも寂しかった。
そんなどうしようも喪失感を抱えていたところに、語学学校で仲良くなった日本人の女の子が
わたしのスペイン語の先生がマヤ人で、その人の実家のコミュニティにはシャーマンみたいな人が居て、
週末プライベートな儀式をしに行くらしいんだけど、一緒に行く?
と誘ってくれました。
何じゃそりゃ。
と思ったけど、なんだか楽しそうなのでついていくことにしました。
そこは、サンペドロといって、世界一美しい湖(と言われている。しかし関西人のわたしにとっては琵琶湖最強)、アティトラン湖のほとりにある小さな村でした。
なんとなくそこが気に入り、結局1ヶ月以上居ることになるのです。

サンペドロは自然の良い村でした。
滞在していた安宿から5分程歩くと、湖のほとりの岩場があって、
そこでみんな泳いだりのんびりしたりしています。
ジャングルの生活の名残で朝は早く目が覚めてしまっていたので、毎朝その岩場に行って、
湖を、水面がキラキラするのとか波が立ったり静まったりするのを見ていました。

が、なかなか静かに過ごすことにはなりませんでした。
日本人は、どこに行ってもよく話しかけられます。
特に1人で旅行している女は話しかけられやすい。
そういう地元の人のフレンドリーさを好きな人も多いけれど、実はわたしはあんまり好きではありません。
話しかけてくるのはだいたい男の人で(女性はあんまり自分からぐいぐい来ない)、
どこから来たの、名前は何、どこを旅行したの、どれくらいここにいるの、これからどこに行くの、いつ日本に帰るの、日本のどこからきたの、家族はどこにいるの、兄弟はいるの、空手できる?
という一通りの流れを、何十回も色んな人と繰り返すのです。
暇なやつに捕まると何十分も話し続けるので疲れます。
そして1人去るとまた違う人が来るのです。人の居なさそうな方へ行っても誰か来ます。

ということで、木に登ろう!となりました。
話しかけられないような上の方まで行こうとどんどん登ると高い、とても怖い、
けど、風が枝を揺らしてワサワサする音や、たくさん太陽にあたった木の匂いがとても気持ちよくて、
そのうちに朝ごはんもそこで食べるようになりました。
飽きるまでぼーっとしていた。
ずっと同じ窪みにいると、自分の身体と木が少しずつフィットしてきて、
どっちがどっちに合わせたのかわからないけど、そこがどんどん自分の場所になっていきます。
こういうことって人間同士や場所とも起こるけど、木ともできるんだ。と思いました。
静かだ…と幸せを感じていたある時、
下から大声で話しかけられました。
良く聞こえないし、ほっといて、
と言ってもずっと話しかけながら登ってきます。
来ないでというのを無視してどんどん近づいてきたので木の実を投げつけて追い払いました。

数時間木の上で過ごしてから下界に降りるとそいつが居て、何か言ってきます。
マヤの言葉のなまりがあってよくわからなかったけど、たぶん金を出せと言われていて、
あれよあれよという間に取っ組み合いになりそうだったので飛び蹴りをしたら湖に落ちました。
といっても火曜サスペンス劇場みたいな崖とかじゃなく、1メートルもないようなところです安心して下さい。
後日そいつと道で会うと、へらへらしながら
湖気持ちいいから一緒に泳げば良かったのに~
と謎なことを言ってきました。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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