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現代アイドル写真論


Vol.6 遷りゆくスキャンダルの現場


アイドルにとって、写真は諸刃の剣だ。1枚の写真で一躍全国区(最近では橋本環奈など)になることもあれば、反対に事務所解雇や芸能界引退を余儀なくされることもある。写真週刊誌に代表されるスキャンダル記事がそれだ。
1950年代後半に相次いで創刊された『週刊新潮』、『週刊文春』、女性週刊誌の『週刊女性』や『女性自身』にはこれまで芸能人のゴシップ記事が数多く掲載されてきた。だが、写真を前面に押し出すようになったのは、『FOCUS』や『FRIDAY』、『FLASH』など1980年代に創刊ラッシュとなった写真週刊誌の登場からだ。その特色は主に、写真班が張り込みで撮ったスクープ写真と、元恋人など関係者が持ち込む私的な写真や下積み時代に撮影された写真といった「発掘」写真の2つに大別できる。
カメラの普及と技術革新によって、スキャンダルはその姿を刻々と変えてきた。『FOCUS』が芸能人のスキャンダルに本腰を入れるきっかけとなった、1983年のアイドルグループメンバーのベッド写真は10代の元恋人が持ち込んだとされている。子どもでも簡単に扱えるカメラの普及がここに反映されている。原宿露店でのアイドル生写真の販売も含めて、80年代は誰もが撮影できることで「流出」が起こるようになった。90年代に入ると使い捨てカメラ「写ルンです」やプリクラの流行によってその流れが加速し、写真週刊誌でも滅多に撮れないような恋人とのキス写真が流出するようになる。1997年に創刊された『BUBKA』の目玉は、そうした関係者からの持ち込みと思われる流出写真だった。
そして今や、デジタルカメラやスマホの普及によって、アイドル自らがスキャンダルの「供給源」にもなり得る。実際、別名義のアカウント(通称「裏アカ」)でアップした文章や写真が流出したり、海外ではクラウドに保存されたセレブのヌード写真がハッキングによって流出したりしている。ネットがスキャンダルの「現場」になる日もそう遠くないのかもしれない。

調文明 / しらべぶんめい
11980年東京生まれ。写真史/写真批評。日本女子大学/京都造形芸術大学/東京綜合写真専門学校非常勤講師。『アサヒカメラ』『日本カメラ』などで執筆中。


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