内藤由樹の海外武者修行ログ
vol.23 マヤのシャーマンと明け方の薄暗い森の中で炎を囲み恋愛話をした話


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
世界各地を巡り、現在ペルーにある「Centro de la imagen」のマスタークラス在籍中。
http://yuki-naito.tumblr.com

サンペドロに来た本来の目的であるシャーマンの儀式の話をしましょう。
村に着いて、通っていた語学学校のその村出身の先生と、シャーマン(正式にはシャーマンとは言わないらしいです。ガイド、という意味合いのマヤ語で呼んでいたけれど、ここではシャーマンと書きます)の家に挨拶に行きました。
シャーマンは旅行者のブログに出てくるような衣装は着ていなくて、普通のおじいさんだった。
が、部屋を見せてもらうとたくさんの石とか、なんか尖ったものとか、鏡とか、見たことが無いものなので
何と表して良いのかわからないけれど、祈りの道具がたくさんあった。
その儀式の中で(彼らはセレモニーと言っていた)祈りとか、お願いごととか、そういうものができるらしく、地元の人は、家族の健康や、旅行の安全や、収穫のお礼をするらしいです。

あなたは何を望みますか?と私も聞かれました。
ちょうどその時ペルーのマスタークラスの入学審査のポートフォリオをつくりながら
今までと違う、成長した新しいモノにするんだ!と意気込んでいたので、
今までの古い自分を捨て、新しい自分をつくりたい。というようなことを言いました。
オッケー、では儀式はいつにしよう。となって、カレンダーを見てみるとなんと、
というかいきなりですがわたしはバツイチなのですが、翌日は離婚二周年でした。
シャーマンに、明日離婚記念日だわーと言うと、ちょうどマヤのカレンダーでは太陽が新しく生まれ直す日だそうで、シャーマンが興奮しながら、
これは明日にするしかない!運命だ。明日他の儀式入ってたけど断るわ!
と携帯で誰かに電話してました。呑み会断るようなノリで。
良いのかしら。
本当は、今までの経験をふまえつつも、ここらで一新して今までとは違う自分で作品をつくりたい、
みたいなことを言いたかったのだけど、
なんかどんどん、過去の辛い思い出を捨てて新しい一歩を踏み出すの。みたいな、
そもそもわたしは離婚の傷を癒すために旅行をしている。みたいになってしまった。
違うんだけど、この武者修行の説明をスペイン語でするのは不可能だったし、
めんどくさかったのでそのままにしておきました。

そのまま市場で儀式に使う花やろうそくを買って、その明け方の3時頃家を出発し、
3人で儀式の場所に向かいました。
森の中をろうそくを持ってどんどん奥へと進んでいくと、石の神殿があり、そこが儀式の舞台です。
よく聞くシャーマンの儀式は、幻覚作用のある樹液を服用し、音楽を使ったりしてトランス状態にして自分の常から抜け出す。みたいなのが多いですが、その人は、専用の燃料やそれぞれに意味のあるろうそくを山のように盛って、そのまわりに花びらを散らしてただ静かに燃やす、というものでした。
その火を見て気持ちを落ち着けて、内なるものと向き合う。そんな感じです。
その間にシャーマンがいろんな話をしてくれます。
地味ですが、昔の人はこうやって、火とか水とか、自然の力の中に恐れとか、神秘とか、何かを見いだしていたのかなあと思いました。

儀式も終わりに近づいた時、シャーマンが
あなたは今特定のお付き合いしている人はいますか?
と尋ね、すかさず先生が、
こんな生活していたら無理に決まっているじゃないか。
とシャーマンに言い、
うるせえよ
と思いながら、
いません。
と答えると
別れたその男の人ともう一度やり直したいですか?
と更に聞かれ
いいえ。
というと、
ではまたいつか誰かと結婚したいですか?
と、友だちでも気を遣ってなかなか言わないことを質問し、
まあ、機会があればいつかは。
と答えると
どんな男性と一緒になりたいですか?
ええと、優しくて笑顔が素敵で経済力がある人。
みたいな、や、それだけじゃダメだよ、とか先生に突っ込まれたりしながら、
これ本当に儀式に必要なのだろうか?というやり取りがしばらく続き最後に
元夫の名前は?
と聞かれたので答えると、シャーマンが急に炎の中に燃料を投下し、
今燃えているのがあなたの中の○○(元夫の名前)です。これで○○はあなたの中から居なくなりました。新しい出会いも訪れるでしょう。
と言ったのと同時に朝日が強く差した。
太陽が新しく生まれ直す日の朝日。
なんかありがたく、シャーマンは朝日に背を向けていたので後光が差しているように見えました。

しかし、なんでわたしは離婚記念日にグアテマラの森の奥でたき火をしながらマヤ人のシャーマンと、女友達と居酒屋でするような会話を、暗がりの中iPhoneの辞書を使いながら話しているのだろう。
となりました。
まあそんな感じですがとにかく私の中の◯◯さんは消えたようです。んー、思い出消された。
はじめ意図していた感じとはすいぶん違った方へ行ってしまったが、いい経験になったと思います。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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