1. HOME
  2. Magazine
  3. HOW TO / 作品制作のヒント
  4. 考える余地を与えてくれる作品は良い|入選作品講評Vol.105
HOW TO / 作品制作のヒント

考える余地を与えてくれる作品は良い|入選作品講評Vol.105


入選「タイトルなし」加藤真基(神奈川県・37歳)

2pt/自由部門/オンライン応募

――続きまして、自由部門で加藤真基さんの作品です。

テラウチ 何かを語ったり伝えたりする作品としては少し物足りな いように感じました。画面全体がシンプルにまとまっているので、イ ンパクトが弱くなってしまっています。画面があまりに広すぎるのかもしれませんね。

鷹野 女性が現れた時のドラマティックな感覚を共有したい、情感に訴える作品にしたい、という意図は伝わるんですが、テーマが漠然としているので少しわかりづらい気がしました。

村越 いまにも何かが起こりそうな、もしくはもう既に何かが起こってしまった後のようなストーリ ーを想像しました。ただ、単写真で作品にしてしまうと確かに弱い。1枚で完結させず、組写真などで見せても面白いかもしれませんね。

 

入選「旗」求磨川貞喜(岡山県・64歳)

2pt/自由部門/オンライン応募

――次に、自由部門で求磨川貞喜さんの作品「旗」です。

鷹野 非常にシンプルな写真ですね。この瞬間をねらって撮ったんでしょうか。背景にバツ印が入るアングルを選んだのが面白いです。

テラウチ きっと撮影者の方が撮りたかったのは、「 1本!」と力強く旗が上がった瞬間ではないでしょうか。その躍動感や臨場感を出したいなら、ただ撮った以上の工夫が必要だと思いました。

村越 意識的に入れたのか入ってしまったものなのかはわかりませ んが、背景のバツ印と赤と白のラインのコントラストは確かにこの写真においてとても効いている要素だと思います。撮影時に1枚でもストーリーが感じられるような撮り方を意識すると良いかもしれませんね。

 

入選「光と影の中で」今村修(埼玉県・67 歳)

2pt/自由部門/オンライン応募

――次に、自由部門で今村修さんの作品「光と影の中で」です。

テラウチ 相似した2つのシルエットが写っている面白さもありま すが、なにより背景のビルにかかる影がかっこいいですね。ただ、左側は影が溶け込んでしまっていて、 冗長な気がします。ここが見せたい部分なのか、いらなかった部分なのかの取捨選択をして撮影後の処理をすることを心がけてほしいですね。

村越 良い作品だからこそ、惜しいところが気になります。切りとる場所をもっと絞っても良かったと思いますね。

鷹野 画面の構築は甘い感じがしますが、水平垂直がきっちりとれているところは個人的には好ましいですね。「巨大な都市のふもとで人という小さな存在がうごめいている」といったようなテーマでもう何枚かつくってみると面白いかもしれません。

 

入選「夕陽に向かって飛び立つ」冨田学(埼玉県・62 歳)

2pt/自由部門/オンライン応募

――最後に、自由部門で冨田学さんの作品「夕陽に向かって飛び立つ」です。

鷹野 夕陽の入り方も綺麗ですね。 写っている風景もどこか田舎っぽくて面白いです。ただ、あまり撮り切れていないように感じました。 信号が切れて写っているところなど、半端な要素が画面の中にある気がします。

テラウチ 右側に見える車の配置は絶妙ですね。タンクローリーの両脇についているライトの並びも面白いです。この写真は左右対称の造形が魅力的な作品なので、い っそアンダーにしてしまっても良いかもしれません。

村越 確かに、タンクローリーに映り込んだ光景がメインではないので、アンダーにしてシルエットを見せたほうがタイトルに沿った作品になりますね。飛行機に見せたい、という意図が伝わるような工夫をするともっと良かったと思います。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和