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HOW TO / 作品制作のヒント

フォトコンテストで上位に選ばれた理由は?PPC vol.114の講評をチェック!


同じ時間、異なる風景が写真で1つに

3位「大阪の印象」Kazeo(東京都)


――同列3位は、自由応募でKazeoさん「大阪の印象」。テラウチさんが1位に選ばれました。

テラウチ  応募作品の中でも目を引きました。手前のおじさん、ペイントされた壁、その向こうには電車。さらにその奥に大阪の街並み。層が重なっている面白さがあります。それぞれの人は、この風景を見ることはないんですよね。

電車に乗る人はおじさんの姿を捉えられないし、向こうの街の人々も電車を眺めることはない。でも、こうして縦にすることで、同じ時間に起こっている様々なことが1つにまとまっている気がしました。構図や切りとり方など、全体としてうまくいっていると思います。

小林  味のある写真で、気になる1枚です。タイトルの「大阪」が前面に出ているように感じました。色味の派手な装飾や少し雑多な街並み。自分の持つ大阪のイメージが、一瞬でふわっと浮き上がってくる感覚がありました。

松本  面白い作品で、私も選ぼうか迷いました。電車とおじさんが来るタイミングを合わせるのは難しかったでしょうね。この作品では青色がアクセントになっていると思うのですが、青い帽子と青い荷物を積んだおじさんを捉えることができたというのは、奇跡の1枚だなという感じがしました。

グラフィックな場面を切りとった、“ずるい”作品

6位「Lost World」takabo(兵庫県)


――続いて6位は2作品あります。最初は、自由応募でtakaboさんの作品「Lost World」。松本さんが2位に選ばれました。

松本  余計なものが入っておらず、ラインとシルエットと光で構成されている。シンプルだけど強く感じるところに惹かれました。人物のシルエットは黒い塊になりがちですが、手が入っていたり、足が少しずれて見えていたり、形の面白さもありました。

小林  ずるい作品ですね。ここに行った人なら必ず撮るでしょうし、グラフィックな場面です。どう切りとっても力強い写真で、ずるいな、でもいい場所を見つけられたなと思いました。
もっと引いて、けし粒のように人をぽつんと入れたら、洞窟のスケール感がよりわかったかもしれませんね。

テラウチ  写真としては完成度の高い作品です。ただ、小林さんが言われたように、この場所に行けばやっぱり誰でも撮る気がしました。そして、最初の1枚のように見えたんですね。

どう撮っても絵になるような状況の中では、1枚撮った次にどう工夫していくかということが大切だと思います。たとえば、この作品では下がっているロープが多く見える。もう少し右に回れば、左側の岩壁にロープが重なって黒色に融合するので、線が目立たなくなったかもしれません。

みんなが撮る場所で、どう自分なりの表現をするのか。すぐに満足せずに、さまざまな工夫を試してみてほしいです。

作者のこだわりが結実している

6位「初夏の風に吹かれて」シンペイ(東京都)


――同列6位は、自由応募でシンペイさんの作品「初夏の風に吹かれて」。テラウチさんが2位に選ばれました。

テラウチ  よく見る風景で、被写体もありふれたものですが、初夏の雰囲気は非常に感じとれました。それは少しオーバーな露出によるものだと思うのですが、ただ明るくするのではなく、風の爽やかさを表すための工夫として、露出をきちんと考えられているような気がしたんです。

さらに、同じカーブの線を2本捉え、その間に船を覗かせて、岸壁をくの字に入れている。構図も非常に上手いです。作者ならではのこだわりが、いい形で結実しているなと思いました。

松本  心地いい写真ですね。この街を散歩してみたいなという気持ちになりました。緩やかな縄のカーブと、イカの白。少しオーバーな露出の中でオレンジ色も効いていて、この場所の柔らかな雰囲気が伝わってきました。

小林  これは恐らく、快晴ではなく曇りで撮られたんでしょうね。それを露出補正で、柔らかく穏やかな感じに仕上げている。作者の方がこう仕上げたい、こう見せたいと思って工夫されたその点に、僕は拍手を送りたいと思いました。

「なんだろう」のインパクト

8位「accident」根岸豊(東京都)


――次に8位は、自由応募で、根岸豊さん「accident」。小林さんが特別賞に選ばれました。

小林  この作品を見て、自然に「なんだろう」という言葉が出てきました。純粋に色と構成が視覚的にとてもインパクトがあります。黒が効いていて、赤色も綺麗なグラデーションになっている。何が写っているのはわかりませんが、この向こうに写るものを想像させる力がありました。

松本  偶然とは思えない作品ですね。白と黒があることによって、赤と青の補色のコントラストが面白く出ています。かくかくした部分やラインも目を引きますし、曲線も入っている。どうやって撮れたのか、とても気になりました。

テラウチ  何かわからないもので心を掴むという手法は、古くから西洋絵画にもあります。この作品にも、その不可思議な面白さは感じたんですが、再現性という問題があるんですね。確かに写真は、自分の意図通りではないところを撮る魅力はあります。

でも、もう1回撮ってと言われた時に果たしてできるのか。1度きりのものは価値がありますが、それをアートとして評価するには説明が必要。また同じように撮れるやり方を作者が知っているのであれば、僕も選んだと思います。


いかがでしたか?
撮影する時の、ほんの少しの工夫で写真はもっとよくなる。
そのひと手間が、評価を大きく変えるのかもしれませんね。
次回は入選作品9点の講評をご紹介します!


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