1. HOME
  2. Magazine
  3. HOW TO / 作品制作のヒント
  4. 気になる!著作権法のあんな場合、こんな場合
HOW TO / 作品制作のヒント

気になる!著作権法のあんな場合、こんな場合


「イベントで子どもが楽しんでいた写真を広報用の写真として使いたい」
「学園祭に出演したタレントを撮影してWebにUPしてもOK?」など
誰もが気になる著作権法の疑問を、
法律の専門家であり、フォトグラファーとしての顔も持つ
塩澤先生にお答え頂きました!

QUESTION!

(1)写真家の代表作と同じ場所、構図で撮った写真を発表してもいいでしょうか。
(2)有名な建物の写真を撮って、写真展やWeb サイトで発表してもいいですか。
(3)イベントで子どもが楽しんでいた写真を広報用の写真として使いたいのですが
「肖像権」の侵害に当たりますか?

(4)許可なくインターネット上の写真や写真集の作品をスキャンして素材を集め、
加工・コラージュして自分の作品として発表してもOK ?

(5)街にあるモニュメントや芸術作品を撮ってもOK ?
(6)学園祭に出演したタレントを撮影してWeb にUPしてもOKですか。

ANSWER!

(1)写真家の代表作と同じ場所、構図で撮った写真を発表してもいいでしょうか。

全く問題ありません。そんなことを言ったら、誰も富士山を撮れなくなってしまいますね(笑)。どんどん撮りましょう! 問題になる場合があるとすれば、その写真を「複製」しようとした場合です。写真は被写体がすべてではなく、撮る季節や時間、露出やシャッタースピードなど、さまざまな要素で1枚が構成されています。できる限りその条件をあわせて意図的に複製しようとした場合は、著作権法第21 条の複製権の侵害にあたります。でも普通は、「あの作品と同じ場所に行って撮ってみよう」もしくは「ここはあの名作と同じ場所だ!」と気付いたとしても、そっくり同じ写真を撮ろうとすることはないですよね。他人のそら似は全く問題ありません。

(2)有名な建物の写真を撮って、写真展やWeb サイトで発表してもいいですか。

東京スカイツリーだってなんだって、撮影されたくなかったら、カバーをかければいいのです!(笑)誰もが目にする屋外のものを撮れないなんておかしいですよね。建物の複製に該当するのは、建築物を全く同じ建築物として建てる場合です。広告写真に写り込んでいても、Facebook にUP しても基本はOK です。

(3)イベントで子どもが楽しんでいた写真を広報用の写真として使いたいのですが
「肖像権」の侵害に当たりますか?


まず、現行法令に「肖像権」という権利はありません。判例の中で出てくることはありますが、憲法や法令にはどこにも規定されてないんです。ただし、民法第709 条の「不法行為」、つまり「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という規定に該当する可能性はありますが、撮影されたことによって金銭的な損害が生じることはまれなケースと思いますので、心配の必要はないでしょう。街のスナップも同じで、無許可でも法的には問題は生じません。ただ僕は、Web に載せないでほしいと言われたら掲載しませんし、削除してほしいと言われたら削除します。でも写真をセレクトするときに、被写体が喜ぶか、嫌だと思わないかで選んでいるので、ほとんどそんなケースはありませんよ。

(4)許可なくインターネット上の写真や写真集の作品をスキャンして素材を集め、
加工・コラージュして自分の作品として発表してもOK ?

著作権法第30 条にあるように、「私的使用」を目的とする場合、許諾なく使うことができます。個人的に使う分にはOK です。一方、それを写真展など公の場で発表する場合は、許諾を得ることが必要です。ただし、使われているのが誰の作品なのか全くわからないレベルに改変されていたら許諾を得る必要はなくなりますが、その判断は難しいですね。変えるならトコトン変えて、原形がわからないくらいにしましょう。心配があるなら許諾を得たほうがいいですね。

(5)街にあるモニュメントや芸術作品を撮ってもOK ?

はい、OK です。著作権法第46 条で、街路、公園、その他一般公衆に開放されている屋外の場所、または建造物の外壁など一般公衆の見やすい屋外に恒常的に設置されている美術の著作物や建築の著作物は原則として自由に利用できます。そのような作品を撮ろうが写生しようが自由です。しかし、その作品が一般公衆に開放されていない場所とか建物の中にある場合は、確認が必要です。ただ一般公衆の見やすい屋外の場所に設置されている場合でも、それが私有地の場合、敷地内に無断で立ち入ることは許されません。その場合は道路で撮影すれば問題ありません。

(6)学園祭に出演したタレントを撮影してWeb にUPしてもOKですか。

タレントの肖像には金銭的な価値があり、これをパブリシティ権と言います。経済的価値は法的保護の対象となりますから、著名人の写真を勝手に使ってお金儲けをしていれば、金銭的に損害を生じるので賠償する責任が生じます。お金儲けの目的ではなくFacebook にUP するなどの行為は問題ない可能性が高いですが、あくまでも学園祭で撮影が許可されていたことが前提の話ですね。撮影禁止ならNG です。チケットを買う段階で、お客さんと主催者側は契約をしているわけですよね。契約の中に「撮影は禁止です」と書かれているのに撮影したら債務不履行となります。逆に言うと、学園祭で禁じられていなければ基本的にはOK です。

塩澤一洋 / しおざわかずひろ
1969 年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、法学部卒、大学院修了。専門は著作権法。在学中より結婚式写真を中心に写真家として活動。Web 媒体や雑誌に寄稿する他、日本写真家協会や全国のアップルストアなどで写真やMac に関するセミナーの講師もつとめる。成蹊大学法学部教授、政策研究大学院大学客員教授。慶應義塾大学特任教授。shiology.com


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和