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現代アイドル写真論


Vol.2 成功の鍵はマルチタスク性


先日、人生初となるジャニーズコンサートに参加した。まさか男性アイドルの公演に参加するとは思わなかったが、案外楽しんでしまった。参戦したのは「テゴマス」と人気絶頂の「Sexy Zone」で、アイドル業界における写真の役割を改めて体感できた。
ジャニーズ事務所は写真の扱いに厳しいことで有名だ。いまでこそ緩和したが、ドラマ・映画のサイトにすらアイドルの写真掲載を認めないのが通例だったほどだ。
それには深いわけがある。ジャニーズ創立者のジャニー喜多川は1931年ロサンゼルスに生まれ、青年期に同地の劇場で雑務をしていた。そこで、親戚の写真家に日本人歌手や俳優を撮ってもらい、その写真を観客に販売していたという。写真がビジネスになることに若くして気づいていたのだ。さらに驚くべきは、その写真家こそ戦時中の日系人強制収容所の撮影で著名な宮武東洋だったことだ。
そんな彼だからこそ、いち早く写真とアイドルの親和性に注目した。コンサートの公式グッズである顔写真入りのウチワを例に挙げてみよう。アイドルや事務所にとって、ウチワはコンサートを盛り上げる小道具として機能し、さらにその売上数は人気のバロメーターにもなる。アイドル自身も、コンサートでファンの振るウチワの存在に気づいていることをアイドル誌などで公言し、ファンの購買意欲をより掻き立てる。
ファンの側でも写真の役割は多様だ。実は、ウチワをビニルカバーに入れたままで使用するファンが多い。その理由は、コンサートが終わると、貴重な「ブロマイド」としてコレクションの一部になるからだ。さらに、他のファンとの卓越化を図るため、数年前のコンサートで販売されたウチワを持っていくことが、新参者ではないことの恰好のアピールとなる。
今回の現場を経て、アイドル・ファン・事務所など多方向に及ぶ写真の関係を実感できた。アートマーケットだ、写真市場だと言われるが、ジャニーズこそ写真業界最大の成功者なのかもしれない。

調文明 / しらべぶんめい
11980年東京生まれ。写真史/写真批評。日本女子大学/京都造形芸術大学/東京綜合写真専門学校非常勤講師。『アサヒカメラ』『日本カメラ』などで執筆中。

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