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HOW TO / 作品制作のヒント

PHaT PHOTO CONTEST(PPC) Vol.100座談会講評


写真雑誌「PHaT PHOTO」の人気誌上写真コンテスト。毎号異なる3名の写真関係者を審査員としてお招きし、座談会形式で審査を行います。審査員たちのさまざまな視点から、あなたの写真がレベルアップするヒントが見つかるかも。100号を記念して、Vol.100の審査・講評記事を一挙公開!

審査員:佐藤正子/山岸伸/テラウチマサト

PPCでは、自分の好きな写真を応募する「自由部門」と、毎号与えられるテーマを基に写真を応募する「テーマ部門」で作品を募集しています。自由とテーマ合わせて一次審査を通過した17点を座談会にて講評します。今号のテーマは「その先へ」です。珠には各審査員が選出した1位(10pt)、2位(6pt)、3位(4pt)、特別賞(3pt)の総計で決定します。

PPCへの応募はどなたでもOK!詳細はこちら

 

1位「鳥瞰図」根岸豊(東京都・48歳)

山岸1位 佐藤2位/計16pt/自由部門/プリント応募

―今回の1位は、オンライン応募で根岸豊さんの「鳥瞰図」。撮影意図は、「ダムから下を見下ろして撮影しました。見返してみると騙し絵のようで、空間がねじれているような面白い写真になりました」とあります。山岸さんが1位、佐藤さんが2位に選ばれています。

山岸 写真を見ただけでは、いったい何が写っているのか、わからない不思議さがあります。撮影意図を読んで僕は騙されたんだなと、そこが良いと思いました。

佐藤 何だろうと思わせるところが面白いですね。しかし、その物が何であるのかということより、形そのものの面白さやモノクロの写真に私は惹かれました。

テラウチ モノクロの写真だからよりだまし絵みたいに見えるんですよね。大きいものなのか、小さいものなのか、どこがどのようになっているのかを考える面白さがあるし、写っているものが歪んでいるような面白さもあります。

山岸 じっと見せる写真が少なくなってきていますからね。

佐藤 そうですね。じっと見ていると味が出てきますね。写真の構成そのものや線の入り方など、線が際立つ抽象的な写真です。

山岸 プリントしたものを手にとって見たかったですね。しばらく見ていると地図ように見えてくるなど、また違ってくるかもしれません。

 

2位「3,2,1,GO!!」shikalovin(山梨県・33歳)

佐藤1位/計10pt/テーマ部門/オンライン応募

―2位はテーマ応募でshikalovinさんの作品「3, 2, 1, GO‼」。撮影意図は、「滑り台を目指しているが、なんだかその先へ飛び出してしまうように見えました」とあります。佐藤さんが1位に選ばれました。

佐藤 「その先へ」というテーマをきちんと自分の中で定めて撮っていて、テーマに合っていると思いました。写真を先に観て、テーマにぴったりだなと。シルエットだけで余計な情報をなくしたことが、さらに良いと思いました。ただ、写真の下の部分がもう少しトリミングされていてもいいかもしれません。

山岸 滑り台の中央に光が当たっていて、シルエットになることで、写真の強さがあります。テーマとシルエットで表現しようと思ったことがとても良いと思いました。ただ、私も同じく、もう少しトリミングしても良かったと思いました。トリミングして中央の滑り台と女の子にぐっと寄ることで幾何学模様のようにも見えて、よりシルエットが活きてくると思いました。

テラウチ 光がなんとなく弱い気がするので、露出の設定でシルエットの影を暗くするなど、工夫してみても良かったですね。

山岸 写っている女の子は、もうちょっと動いたときに撮ったら不自然だったと思うので、この写真の動きがいちばん自然でベストですね。

佐藤 機械的な遊具の線と子どもの動きのあるフォームがきれいなんだと思います。

テラウチ 髪を結んでいるところも良かったですね。

 

2位「繋がる」笹岡正人(富山県・45歳)

テラウチ1位/計10pt/自由部門/オンライン応募

―同列の2位は、自由応募で笹岡正人さんの「繋がる」。テラウチさんが1位に選ばれました。

テラウチ 顔などが写っていなくて、光の中に埋められている感じがとても面白いなと思いました。カメラの特徴を活かしたボケている光と街灯の光が繋がっているかのようですね。

佐藤 じっくり見ているとキャンディーみたいでかわいいですよね。

山岸 ピントが曖昧になってしまっていて、イメージの世界で雰囲気だけが伝わってきてしまうので、そこが勿体ないですね。ピントを手に合わせるか女の子に合わせるか、どこか1点合わせたいですね。

テラウチ ピントの位置が問題ですね。きっと演出をしたかったのでしょう。ピントを手やベレー帽に合わせるとそこに目が行ってしまい、光のラインの印象が薄れてしまうので、どこに合わせるか、相当迷われてたのではないでしょうか。

 

4位「雪景」にたばる(滋賀県・40歳)

佐藤3位 山岸特別賞/計7pt/テーマ部門/オンライン応募

―続いて4位は、テーマ応募でにたばるさんの「雪景」。佐藤さんが3位、山岸さんが特別賞に選ばれました。

佐藤 パッと見たとき、印象に残った写真でした。私自身、出張が多いので、写真のような場面に出合うんです。地方のホームで寒い中、ローカル線を待っていると思わずシャッターを切りたくなる瞬間があります。この写真は私はとても好きです。

山岸 1灯の光がすべてを語っていますよね。私もこのようなシーンに出合うのですが、なかなか撮ったことがない風景です。まわりにあるものを3つくらい排除してみたら、もっと良くなるのかなと。

テラウチ このコンテストでよく言われる言葉があって、見たことがない写真が見たいと言われることが多いです。でも実は、見たこともない写真が出てくると逆に選ばれない確率の方が高くて、撮る方も大変だけど選ぶのも大変だなと。いままで見たことがあったり、経験した中でいいなと思う写真を選ぶ傾向が大いにあると思うんですよね。そんな中で今回の写真は何となくどこかで見たことがあるなと思いました。

佐藤 写真に限らず、何か人に訴えかけるものというのは、大勢になるか少数になるかわからないけど、やっぱり見る人がどうしても自分の経験だとか好き嫌いも含めて、照らし合わせて感動するというパターンが結構あると思います。見たことのない写真、私もこれから毎日考えてみよう。

 


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