ポートレート好きにお勧めの名作写真集④アウグスト・ザンダー


ポートレイト撮影は、楽しいけれど難しい。それは撮影技術だけでなく、撮影者のアイディアや人間性が、仕上がりに大きな影響を与えるから。先人たちの有名な撮影エピソードを改めて知れば、「自分はどうする?」そんなワクワクする気づきに出合えるはず!
※PHaT PHOTOvol.92「ポートレイトマイスターに学べ!」号 p.29より抜粋

「20世紀の人間の見取り図」という壮大なプロジェクトのために撮られた、力強いポートレート

アウグスト・ザンダー August Sander(1876 ~ 1964)
『ANTLITZ DER ZEIT』Schirmer-Mosel 1976 年

カメラに正対する被写体。彼ら、彼女らは遠すぎず近すぎずの一定の距離感を保ちながら、静かにレンズを見つめる。

「20世紀の人間たち」という、肖像写真によるプロジェクトを1924年頃に計画した、ドイツの写真家アウグスト・ザンダー。最終的にこのプロジェクトは未完のまま終わってしまうが、社会的類型を7つのグループに分け、540点もの肖像写真で「20世紀の人間の見取り図を描く」という壮大な計画だった。

均質的な撮影で人間の本質を捉える眼差しが、ザンダーの写真の凄み

ここに掲載している写真もその一部。職業や階層ごとに分類されているものの、貧困層や障がい者と、上位階級との眼差しに差はない。

いかなる人に対しても一定の距離を保ち、その人物を印象づける背景を入れ、均質的に撮影している。肩書きや地位で人格を決める差別的な分類ではなく、人間とは何かを問うような包括的な分類の試みが、この写真群から見てとれる。

ザンダーの写真の凄みは、人間そのものの本質を捉えようとするその眼差しから生まれている。

text:飯沢耕太郎

ここがすごい!Master’s Episode
ザンダーは、1935 年頃に、さまざまなポートレイトの眼、鼻、耳、口などを組み合わせた「『人間の研究』のためのコラージ
ュ」という作品を残している。「20世紀の人間たち」同様、人間がどういう存在であるかをあぶりだそうとする試みだったといえる。写真にできることの可能性を模索し続けた写真家であることがわかる。(参考文献:飯沢耕太郎「フォトグラファーズ」)

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