御苗場vol.26 遠藤みゆき選出 受賞者インタビュー<言の葉(小林真佐子)>


全面オンラインで開催した御苗場vol.26の受賞作品を紹介。選出理由と受賞者インタビューをお送りします。

本記事で紹介するのは、遠藤みゆきさんが選出した、言の葉(小林真佐子)さんの作品とインタビューです。
まずは、言の葉(小林真佐子)さんの作品が選出された理由から。

遠藤みゆき(東京都写真美術館学芸員)) 選出理由

写真と額装のとりあわせ、まとまりが良く、端正な佇まいとクオリティの安定感から、総合的に優れていると感じました。とくに、今回の出展者のみなさんはこの新型コロナウィルスという社会状況の中にあるということを作品に反映している方も多くいらっしゃいましたが、今回小林さんは「辰野金吾への手紙」というかたちで表現した点が非常にユニークでした。
辰野がスペイン風邪により亡くなったという事実(の偶然)に戦慄すら覚えます。壁面展示とは対照的なアルバム形式の写真構成も、写真の配置や手書きのテキストに細やかな配慮がなされ無駄がなく、表現方法とメディアの選択が上手く機能していました。

続いて、言の葉(小林真佐子)さんのインタビューです。撮影のきっかけやコンセプトについてお伺いしました。

言の葉(小林真佐子)『拝啓 辰野金吾様 100年後の東京駅 』

-この作品を撮影することになったきっかけを教えてください
2014年に復原された東京駅の造形美にひかれ、どんな人がどのような意図で設計したのだろうと興味を持ちました。



-作品のテーマ、コンセプトを教えてください

新型コロナウィルスの恐怖にさらされる中、101年前にスペイン風邪で亡くなった辰野金吾さんに、今の東京駅の状況を伝えるというスタイルで、ふとしたきっかけで変貌してしまう日常と時代の波を乗り越えてきた美術建築東京駅とを対比して提示しました。

モノクロの表現が突破口に


-作品をつくる上で苦労したことはありますか?
当初は東京オリンピックを直前に控えて外国人観光客も多く、世界各国の次の世代に東京駅の美術建築としてのすばらしさを訴え、写真によってその継承の一助となりたいと考えていました。

ところが、新型コロナウィルス感染症の流行により、海外との行き来は途絶え、当たり前と思っていた日常生活は一変しました。東京駅前もがらんとしていて、今までのコンセプトのまま展示をすることに違和感を覚えました。悩んだ結果、今まで現在の情景としていた賑わっていた日常を過去のものとしてモノクロで表現することに突破口を見出しました。意外なことにモノクロにすることによって、東京駅の造形美も際立って見えてきました。

写真で歴史を継承する


-作品に対する熱い思いを語ってください!
東京駅は、単なる道具としての駅ではなく、威厳と貫禄をまとった近代化を進める日本の象徴的建築物として生まれました。それは、国家的プロジェクトであると同時に、辰野金吾という一人の建築家の建築観、美術建築へのこだわりでもありました。

当たり前だった日常を失った今、色あせることなく佇む東京駅の美しい姿が、際立って貴重なものとして心に響いてきます。私たちは新型コロナウィルスにより、経験をしたことのない困難に立ち向かっています。東京駅を設計した辰野金吾さんが約100年前に今と同じように世界中で流行したスペイン風邪で命を落としたということに、何か運命的なものを感じます。目に見えない敵と懸命に戦いながら、次の100年へ歴史をつなげようと頑張っている私たちに辰野さんはきっと天国からエールを送ってくれることでしょう。

-今後目指していることなどあれば教えてください。
「100年後に伝えたいと思うこと、もの」を、写真を通じて発信していきたいです。

言の葉(小林真佐子)

東京都出身。上智大学文学部新聞学科卒業。花を美しく撮りたいと思い写真を始める。2017年より写真の基礎を勉強するため、PHaT PHOTO写真教室へ入校。学生の頃は、文章を書いて情報の発信を学んでいた。今は写真を撮ることによってメッセージを伝えたいと考え、「100年後に継承したいこと、もの」を大きなテーマとして日々撮影している。

Facebook:https://www.facebook.com/masako.kobayashi39
Instagram:@mk_kotonoha

■受賞歴
2015年 すみだ環境フェア2015 フォトコンテスト 特選
2016年 第14回JPA公募展 入選
2017年 オリンパス Fotopus Grand Prix 2017 作品賞
2018年 オリンパス イルミネーションフォトコンテスト 入賞
2018年 すみだ環境フェア2018 フォトコンテスト 特選
2019年 第5回アワガミ公募展 ホトリ賞
2020年 第45回2020 JPS展 入選
2020年 御苗場レビュアー賞受賞(東京都写真美術館学芸員・遠藤みゆき氏)
2020年 第18回JPA公募展入選