1. HOME
  2. Event
  3. 御苗場vol.26 パーパン・シリマ、エリック・フローンス選出 受賞者インタビュー <OHO KANAKO>
Event

御苗場vol.26 パーパン・シリマ、エリック・フローンス選出 受賞者インタビュー <OHO KANAKO>

Event, 御苗場


全面オンラインで開催した御苗場vol.26の受賞作品を紹介。選出理由と受賞者インタビューをお送りします。

本記事で紹介するのは、パーパン・シリマさん、エリック フローンスさんが選出した、OHO KANAKOさんの作品とインタビューです。
まずは、OHO KANAKOさんの作品が選出された理由から。

パーパン・シリマ(インデペンデントキュレーター)) 選出理由

60以上の応募作品から選んだトップ3の写真家の中で、私が1位に選んだのは、「OHO KANAKO」さんです。私にとっての彼女のモノクロの作品「passed away」は、とてもパーソナルな詩のような作品で、それは不安、痛み、恐怖、悲しみといった様々な感情を美しく表現していて、それでいて母の愛にあふれた作品でした。

家族というのは、よく選ばれる被写体ではありますが、モノクロの作風はこの作品のテーマによく合っていたと思いますし、それらがうまく重なりあって鑑賞者の心を動かす作品に仕上がっていたと思います。彼女の作品は、私が運営するウェブサイト- www.arctribemag.comにて紹介させていただきます。

エリック フローンス(写真雑誌「GUP」総合編集長)) 選出理由

一目見た瞬間に興味をそそられ、その後ゆっくりと問題に吸い込まれていく、ある種の謎に共鳴していくような作品を見ることが私は好きです。親密さというテーマを扱う際にこの事はとても重要で、現実世界でそうするように穏やかなアプローチが必要になります。

ステートメントを読むと、この作品にはある種の重さがあるわけですが、にもかかわらず、鑑賞者が招かれていないだとか、あるいは不快に感じることなく、子供たちと近い距離を感じられる作品である点が素晴らしいと思っています。なぜなら、それは私たちがこの作品の写真家とであるOHO KANAKOさんと同一化し、その視点からこの家族の生活を見ることが許されているからです。さらに、比喩的な要素を加えることで、メランコリーな雰囲気が強調されている点も素敵だと思います。まさに嘘が無い作品のように感じました。おめでとうございます。

続いて、OHO KANAKOさんのインタビューです。撮影のきっかけやコンセプトについてお伺いしました。

OHO KANAKO 『Past away 』

-今回のタイトルについて教えてください
タイトルの『Past away』はふと頭に降りてきた造語をそのまま使いました。英語ではpassed awayという言葉を人が亡くなった時に使いますが、もう少し”過ぎ去った”意味を強めたかったので、Past(=過去)とaway(=あちらへ、去って)という言葉を組み合わせてみました。

半径1km内で見えてくるもの

-この作品を撮影することになったきっかけを教えてください
第二子を妊娠中に、医者から絶対安静を命じられて、家の中でしか撮れなくなったのが今の撮影スタイルが生まれたきっかけです。もともと家の中で写真はほとんど撮りませんでした。写真を撮るならさぁ、出かけよう!と(笑) 今もまだ子どもたちが小さいので、まだ撮れるのは家の周りくらいです。

-作品のテーマ、コンセプトを教えてください
2014年から、ローライフレックスというフィルムカメラを使って、自宅と庭を中心に半径1km内を撮って作品を作っています。自分の中では”at home”というコンセプトを土台に置いて、身の回りにあるものを撮り溜めることで見えてくるものをセレクトしています。

作品が生まれる感覚が味わえた

-作品をつくる上で苦労したことはありますか?
現像からプリントまで全て貸し暗室で制作しているので、今回コロナウイルス流行で制作がいつもの過程を辿って進められなかったのが厳しかったです。途中の過程を全てふっ飛ばして、小さなコマを見ながら写真を選び、信頼しているプリンターの方にお願いして仕上げました。

-作品に対する熱い思いを語ってください!
何度も何度も出展を迷いましたが、背中を押してくださった方々のおかげで、久しぶりに作品が生まれる感覚を味わいました。作品を通じて、自分の未消化だった想いを具現化することが何か誰かの心象風景に繋がれば嬉しく思います。家族写真は難しいですが、撮れるものが目の前にあるものしかないので、そこからまた新しい景色を見ていきたいです。

-今後目指していることなどあれば教えてください。
今回の作品『Past away』をブラッシュアップして次の作品に繋げたいです。また、安心して暗室に通える日が戻れば、しばらく丁寧な制作時間を楽しみたいです。ブックにまとめられることも3年以内くらいには実現させたいです。

OHO KANAKO

1985年神奈川県生まれ。20歳の頃、祖父から譲り受けたフィルムカメラで写真を始める。2014年、写真家渡部さとる主宰のワークショップWorkshop2Bを受講し暗室作業で作品制作を始める。御苗場vo.l20 横浜 エプソン賞受賞。主な個展に『海馬のゆりかご』(2017 銀座ニコンサロン/ 2018 大阪ニコンサロン)がある。

Webサイト:http://www.ohokanako.com


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和