HOW TO / 作品制作のヒント 「写真の構図」を読み解く 1/2 アーヴィング・ペンの名作に大和田良が挑む 2018.04.13 HOW TO / 作品制作のヒント, Magazine Tweet 魅力的な写真には、隠れた構図の秘密がある。その秘密を読み解くには、写真をじっくり見るだけでなく、「模写」という手段があります。撮影をしながら、名作の構図に隠されたテクニックを発見できるかもしれません。今回はアーヴィング・ペンの「After Dinner Games, New York, 1947」に写真家・大和田良さんが挑戦!撮影の様子と作品をご紹介します。 Irving Penn/アーヴィング・ペン 1917年アメリカのニュージャージー生まれ。グラフィック・アーティストを経て、1943年より「ヴォーグ」誌で活動する。ファッション、ファッション・ポートレイト、静物写真などさまざまな被写体を手掛けた。20世紀後半を代表する写真家のひとり。 アーヴィング・ペン 写真集「Still Life」より「After Dinner Games, New York, 1947」「After Dinner Games」と名付けられたこの作品は、さまざまなゲームのコマやチップが配置された遊び心にあふれた作品です。一見無造作に置かれたようにも見える小物類ですが、よく見ると絶妙なバランスを保っていることがわかります。ペンはどんなふうに撮影したのでしょうか?――早速、大和田さんの撮影の様子を見ていきましょう。[1]2・8・16 ...?こんなサイコロ見たことない!と調べるとバックギャモンと判明。チェスにポーカー、チェッカー、オセロと様々なゲームのツールが登場。[2]撮影風景。大和田さんの自宅の窓際のテーブル。午前中の光がだんだん伸びてきて、11時半をすぎるとタイムリミット。時間との戦いでもあります。まずは窓際のテーブルに白いバック紙を敷き、奥の壁には大きなレフ板をたてます。最初に場をつくるため、白い紙の上をお香の灰を塗ってお手本作品のテーブルのようなニュアンスを出していきました。小物の設置はサイズの大きなものから。さらに作品の奥行き感を決定していきます。[3]テーブルを演出するため、お香の灰で白のバ ック紙にニュアンスをつけたあと、コーヒーを浸し たティッシュで細かくしみをつくります。[4]トランプやサイコロは練り消しで固定。正面からだと見えませんが、横から見るとこうなっています。おそらくペンもこうしていた?場の広さがどのくらい必要か、また奥行きがどれくらいかを掴むのは、なかなか難しそう。しかしいちばん大和田さんが悩んだのは、さまざまな小物が入り組む構図でした。[5]たくさん使われている小物の微調整。ニコンD800Eを三脚に立ててモニターのグリッドを見ながら厳密に。[6]写真集で作品と見比べながら調整。ほんのちょっとの位置や方向ちがいで、作品の印象はガラッと変わります。「全く同じアイテムを集めることは難しく、モノの大きさひとつひとつが違うので、厳密に同じ構図で撮影することは不可能。でも、どういう風に構図が成り立っているのか、どうしたらまとまるのかを考えて調整していきました。 当初はペンのように4×5など大きいフォーマットのカメラで撮影しようと思いましたが、微調整が命なので、ライブビューがないと難しい。ニコンのD800Eに持ち替え、グリッドを見ながら撮影しました。ファインダーだけで調整するのはキツいですね。 雑然としているけど均整の取れたプロポーション。そのまとまり感を崩さないように心がけて撮りました」(大和田さん)試行錯誤の上、出来上がった模写作品はこちら!photo:Ryo Ohwadaペンの作品と並べてみると...(左)photo:Ryo Ohwada , (右)アーヴィング・ペン 写真集「Still Life」より「After Dinner Games, New York, 1947」いかがでしょうか? 大和田さんも言うように、全く同じアイテムを集めることは困難なので、完全再現は難しい...ですが、厳密に調整された小物の配置やアングル、コーヒーでつけたしみなどが雰囲気を出して、見事に模写されていますね。 OTHER CUTも公開!小物違いアングル&小物のディティール違い光の強さの違い魅力的な作品に隠された構図の秘密やテクニック、光の捉え方など...名作の模写から学ぶことは多いはず。 今回はアーヴィング・ペンのスティルライフの作品からお手本作品をセレクト。小物の準備などは必要ですが、屋内でじっくり撮影できるジャンルでもあるので、模写のはじめの一歩として挑戦してみるのはいかがですか? 写真家・大和田良 1978年宮城県仙台市生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科修了。 2005年、スイス・エリゼ美術館 「reGeneration.50 Photographers of Tomorrow」展に選出され以降、国内外で作品を発表。2007年、初の写真集『prism』を青幻舎より刊行。フォトエッセイ集「ノーツ オン フォトグラフィー』(リブロアルテ)、写真集『FORM』(深水社)など著書多数。東京工芸大学芸術学部写真学科非常勤講師。関連情報 <オンライン開催>大和田良さんが教える! 自らの写真についてより深く知るための、ステートメント添削講座 Tweet 編集部 プロフィール Post Share RSS Pin it 投稿者: 編集部HOW TO / 作品制作のヒント, Magazineアーヴィング・ペン, 作品制作のルール, 大和田良 ポートフォリオレビューの受け方 1/5 [基本]知っておくべき、よくあ... 「写真の構図」を読み解く 2/2 立木義浩、川内倫子、ヨゼフ・スデクの...