選ばれる人は何をしているのか?表現を豊かにする作品制作のルール~藤安淳の場合
2013年大阪で開催された、日本最大級の参加型写真展「御苗場vol.13関西」にて、
エプソン賞を受賞された藤安淳さん。
彼自身に双子の弟がいることから、「双子」を題材にしたシリーズ作品の制作を行っている。
今回は御苗場にも出展した「empathize」という「双子」シリーズのコンセプトやプリントなどについて制作に関するこだわりを聞いた。
僕が無表情にこだわる理由。
それは、無表情が人間の持つ本来あるがままの表情だと思うから。
――出展作品について、テーマやコンセプトなど、どんな作品か改めて教えてください。
「empathize」というシリーズは、双子である自分が他の双子の方たちに会いに行って、いろいろ話を聞きながら写真を撮るという基本コンセプトがあります。まったくの初対面でも双子という共通点から、話題に事欠くことなく楽しく撮影ができてますし、互いに共感するところがたくさんあります。それらをきっかけに、相手の内側にあるものをどこまで自然に表に引きずり出せるか、いつも挑戦しています。
――なるほど。楽しく撮影している、とおっしゃられましたが、被写体のみなさんは無表情ですね…。
基本的にはカメラの前に佇んでいただいてレンズの中心を凝視する以外には、被写体への指示は出しません。やはり被写体のいつもの自然な感じを出したいという想いがありますので、ポーズなどは好きなようにしていただいています。
僕が無表情にこだわっているのは、それが人間の持つ本来あるがままの表情だと思うからです。笑顔や怒った顔などはその人の感情が表に出ているので、本来の表情以上の情報を見る側に与えてしまうかもしれない。被写体自身が持つ存在感や空気感をそのまま伝えるには、無表情が一番適していると考えています。
――撮影場所はどのように決めましたか?
背景も含め1枚で個性が出るように撮りたかったので基本的に被写体の部屋で撮影し、それが無理ならばその方の痕跡や記憶の残る場所で撮影しました。場所の決め方としては、やはり自分の求める構図や背景の情報力、被写体の収まり具合、光の当たり具合など、様々な要素を考慮して決めています。
――額装やサイズ、またプリントでこだわった点はありますか?
額装やサイズは、御苗場で展示する壁面を計算して自分の作品がいちばん活きるポイントを導き出しました。プリントは一目見てハッとするくらい綺麗に仕上げることは当たり前ですが、その上で被写体が浮き立って見える仕上がりになるように心がけました。
今まではフィルムで作品を創っていたのですが、デジタルでも作品を創っていく決心がつきました。
――御苗場に挑戦して何か変化はありましたか?
自分が関わるファインアートとしての写真以外にも、写真の世界にはいろいろな在り方があるのだなぁと実感することができました。やっぱり世界は広いですね。
レビュアーの方たちに実際に会って作品について説明するという経験をしたことで、自分の作品について以前より簡潔にうまく話せるようにもなりました。そしてなによりたくさんの人との出合いがあって、大事な繋がりが生まれたことが自分にとってはいちばん良かったと思っています。
あと、エプソン賞でいただいたPX-5V(※)は、プリントの色のノリが良く、色の階層の幅が広いので、一般的なデジタルプリントより立体感や奥行きが出て、手焼きプリントに近い質感を持っていると思います。人肌などを自然な質感で表現できますし、今まではフィルムで作品を創っていたのですが、デジタルでも作品を創っていく決心がつきました。
※エプソンの8色顔料プリンター。2014年11月に後継機のSC-PX5VⅡが発売される。
www.epson.jp/products/pro/scpx5v2
――次回は銀塩で作品を制作している方で、デジタルプリントをしてみたい人が絶対に知っておくべきノウハウを、エプソン販売株式会社のプロフェッショナル・アート・プリンター小澤貴也さんに教えていただきます。お楽しみに!
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藤安淳 / ふじやすじゅん
1981年東京都生まれ。2007年写真表現大学修了。翌年「第1回塩竈フォトフェスティバル写真賞」大賞受賞。精力的にグループ展へ参加・個展を開催している。現在大阪府在住。チェキで撮影した作品が「チェキとも」WEBサイトにて、近日公開予定。また、2015年1月7日よりPHaT PHOTO’S第4期契約作家展が、東京・京橋の72galleryで開催され、3月には京都でグループ展「timelake」に参加予定となっている。
junfujiyasu.blogspot.jp
「御苗場vol.16横浜」
■開催日程:2015年2月12日(木)~15日(日)
■会場:パシフィコ横浜 アネックスホール(CP+2015にて)
詳細Coming soon!
www.onaeba.com