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HOW TO / 作品制作のヒント

写真家を志す人へ テラウチマサトの写真の教科書 第8回 旅を仕事にする!


写真の学校を卒業したわけでもない、著名な写真家の弟子でもなかったテラウチマサトが、
約30年間も写真家として広告や雑誌、また作品発表をして、国内外で活動できているわけとは?

失敗から身に付けたサバイバル術や、これからのフォトグラファーに必要なこと、
日々の中で大切にしていることなど、アシスタントに伝えたい内容を、月2回の特別エッセイでお届けします。

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11月に旅立ったコペンハーゲンの夕暮れ

 

「旅を仕事にできていいですね」。そう言われることがある。

たしかに、海外へ撮影に行く仕事も多い。作品制作のためにふらっと出かけることもある。
いままで世界中を旅してきたけれど、こんなに世界を旅することになるとは、思ってもいなかった。

最初の海外出張は、30代はじめの出版社時代。当時、編集部の中でも仕事ができる人は、いつも海外出張に行っていた。
いつかその順番が回ってくればいいなと思っていたけれど、その順番は一向に周ってこなかった。

 

始まりは、勘違い

そんなある日、編集部に1本の電話がかかってきた。いま思えば、何かの間違いだったと思うのだけど、僕がパソコンに詳しいカメラマンだと勘違いした他の出版社の編集者が、サンフランシスコで開催される大規模なパソコンの展示会イベントを撮影してほしいと依頼してきたのだ。実際はというと、全く詳しくない。

他の出版社の仕事だったけど、「名誉なことだ」と上司が許可をしてくれた。
海外に行くチャンスなんて、最初で最後。当時はそれくらいに思っていた。

イベントの撮影は少しだけだったので、余った時間でケーブルカーに乗ったり、朝早く起きて撮影に行ったり、いまやツインピークスと並んで2大夜景撮影地にもなっているトレジャーアイランドにも出かけて行って(当時は地元の少数の人が知る程度)夜景を撮影したり、町も歩いた。すごく楽しい。写真家っていいなと思った。

そのとき撮った写真は、いまから考えると、全然大したことのない写真だった。でも、その仕事でもらえた金額は2の数字が6桁並んでいた。当時、若手の僕が考えていた以上の金額で、何度も振込調書を見直した。こんなに簡単で楽しいことでお金がもらえるなんて、びっくりだった。おまけに、勤めていた出版社の社長に褒められて、うれしかった。

 

会社を辞めて、写真を撮りに海外へ

しかし、調子に乗った私は、翌年、転落の時期を迎える。海外で撮影することの楽しさを知った私は、GWに有給休暇と振替休日を追加して、ニューヨークの旅を計画。社長の逆鱗に触れた。

当時は、GWに加えて長期休暇を取るなんて、ふざけるなという感じ。あのとき、褒めてくれた社長とは思えないくらい怒られた。

でもすでにチケットを取っていた私は今更辞められない。そのままNYに。もちろん、すごく楽しい日々を過ごすが、会社に戻ってくると何となく待遇も悪くなり、それがきっかけのひとつとなって独立することになった。36歳の時だ。

独立してからは営業に10社ほど回り、いまだったらプロに頼むほどのものでもない、安くて小さな仕事もたくさんやったし、ポジフィルムの時代に、オーダー以外のカットも細かく撮って納品したら、とても重宝がられた。縦横はもちろん、寄りと引き、更に、左右ページどちらに写真が使われるかわからないから、左向きと右向きのカットも。

そんな風に仕事をしていたら、「助かるよね」と言ってもらえて、少しずつ仕事が増えていった。もう行かないだろうと思っていた海外も、やめた年に、5回行くことになる。写真展をやることになって、作品を撮りにパリへ。そのあとは、音楽誌のグラビアの撮影でグアムに2回。モデルの子が日焼けしすぎて、撮影に困ったことをよく覚えている。

 

旅の書籍「癒し」のシリーズ

雑誌の「ウェッジ」や「アスキー」、「PHP」など、経営者の撮影も多くて、連載ページもしていたときに、経営コンサルティング会社の船井総合研究所の仕事をすることになった。あるとき、自費だったが、船井総研の海外視察ツアーに誘ってもらったことがある。それがきっかけで、船井幸雄会長と親しくなり、一緒に旅に出るようになった。日本と海外、合わせて10回くらい。カウワイ島、ベトナム、香港。宮古島、屋久島。

のちに船井会長の本を出すとなったとき、写真を使えませんか? と連絡をいただいて、それから「癒しの島々」の書籍シリーズを何冊も出すことになった。

 

そんなことをしているうちに、テラウチは海外によく行って写真を撮っているらしいというイメージができて、海外で撮影する仕事が増えてくるようになった。ポジフィルムを貸し出す仕事も。

思いがけない仕事から海外に行くことになり、もう二度と行けないと思っていたのに、やめたらたくさん行けるようになった。作品撮りのために行くときもあれば、仕事で行くこともある。

最初は偶然がきっかけで、その旅が最初で最後と思っていた海外に、いまも通い続けている。

旅を仕事にしたい人は、きっと旅が好きな人なのだろう。好きなことを素直に続けていれば、何の因果か仕事を呼び込むことがある。そういう時間を、これからはもっと増やしていこうと思う。

 

第1回 気が付いたら写真家になっていた
第2回 私の修業時代
第3回 本当なら、僕は選ばれなかった?
第4回 機材編:写真の出来栄えはレンズで変わる?
第5回 100回のフォトコンテスト審査を経て気付いた審査の傾向
第6回 写真上達の順番
第7回 私が撮りたい写真
第8回 旅を仕事にする!
第9回 写真と言葉の関係
第10回 「時流」と「自流」
第11回 仕事に繋がる休日
第12回 「御苗場」の出展者に伝えたいこと

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