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HOW TO / 作品制作のヒント

村山康則さんに聞く、ポートフォリオレビューへの心構えとは [PHaT PHOTO写真教室のすごい人]


©yasunori murayama

 

「PHaT PHOTO」写真教室の逸材を探し出し、担当講師とともにその魅力を深堀りするコーナー。「PHaT PHOTO」写真教室は、ビギナー(1年目)から、ミディアム(2年目)、ハイパー(3年目)、プレミアム(4年目以降)と進み、それぞれのクラスに応じた技術や知識の講義を行っています。今回ご紹介するのは、「PHaT PHOTO」写真教室の鈴木雄二先生クラスを3年間受講、プロ養成講座にも通っていた村山康則さんです。

本記事は2017年9月に開催された「PHaT PHOTO」写真教室主催のイベント[わたしのクラスのすごい人 vol.2 横浜13Cクラス村山康則さん×鈴木雄二先生]のトーク内容を一部抜粋してまとめています。

村山さんは、「PHaT PHOTO」写真教室在籍中に写真展イベント「御苗場」(2015年横浜開催)でレビュアー賞を受賞。また、事前審査が難関と言われるレビューサンタフェ(※)の審査も通過するなど、精力的に活動されています。さらに、自身の語学力を活かして、国際写真祭でポートフォリオレビューの通訳としても活躍するなど、数々のレビューの現場を見てきた村山さんに、「ポートフォリオレビューの準備や心構え」そして「レビューサンタフェ」へ向けての作品づくりについていろいろお話し頂きました。

(※)レビューサンタフェとは:ポートフォリオレビューは作品(ポートフォリオ)に対し、レビュアーから直接、個別に講評を受けられる機会。ギャラリストやキュレーター、編集者など、写真に関するプロがレビュアーを務める。「レビューサンタフェ」はアメリカで開催される国際的ポートフォリオレビュー。事前審査が設けられ、世界中の写真作家の中から選出された100名が参加する。

作品はどう準備するべきか?

鈴木 村山さんはポートフォリオレビューで通訳をしたり、ご自身も国内外のポートフォリオレビューに参加されたり、いろいろなレビューの現場を見ていると思いますが、これからポートフォリオレビューを受けてみようと思っている方にアドバイスを頂けたらと思って。たとえば、レビューに持っていく作品はどう選ぶべきですか?

村山 これが正解というやり方はなくて、作品が良ければ何でも良いという印象はありますが、見せるかどうかに関わらず複数のシリーズを持っていくと、いろいろな話ができると思います。

鈴木 持っていく時の形式はどうしていますか?

村山 クリアファイルのブック形式やボックスにプリントを入れて持ってきている人が多いです。好みによるとは思いますが、ボックスよりブックの方が見やすいというレビュアーもいます。

T.L.G.B.©yasunori murayama

僕のこの作品だと、クリアファイルに入れると光が反射して見えにくいので、プリントそのままか、ボックスに入れて持っていくと思います。そのあたりは作品に合わせて工夫して、自分で良いと思うことをやるしかないと思います。

鈴木  作品の枚数はどうですか?枚数が少ないと、追加の写真をレビュアーに求められることはありますか?

村山 そういうこともあります。ただ、「タイトセレクション」という言葉もよく聞きます。ひとつのシリーズとして持ってきた作品でも、レビュアーが見ると3つくらいのシリーズに分けられることがあります。枚数を増やすことで、本当は入るべきではない写真が混ざる可能性が高いです。数が必要なのではなく、意味のあるセレクトができていることが重要だと思います。

海外のレビュアーに見てもらうときの通訳

鈴木 村山さんが通訳している時は、どのくらい訳されていますか?

村山 ちゃんと通訳していますよ(笑)。細かいテクニックも使っていて、たとえば、話した時間と訳す時間が合うようにしています。レビュアーが英語で10秒かけて話したことを、日本人のレビューイ(レビューを受ける人)に伝える時に、簡潔な日本語に訳して2秒で伝えてしまうと、本当に訳しているのかな?と思われてしまいますよね。その場合は、10秒話したら10秒くらいで伝えるように、言葉を繰り返して調整しています。

あと、レビューが始まる前にレビューイと話して、できるだけ自分も作品を理解してから通訳するように心がけています。ただ単に英語と日本語が話せる人だと、作品のコンセプトまで踏み込んで訳すことが難しいみたいですね。コンセプトをうまく汲み取って訳したことに対して、レビューイからお礼を言われたこともあります。

鈴木 写真やアートなどの言葉以外のバックグラウンドがない人だと、直訳してしまう場合がある、ということですね。

村山 はい。コンセプチュアルな作品だと特に、写真やアートの知識がないと理解するのが難しいですよね。もしみなさんが通訳を介してレビューを受ける時は、ご自身の作品について打ち合わせできるような時間があった方がいいと思います。こんな質問が来たら、こう答えようと思っています、とか。持ち時間は限られているので、擦り合わせできるとより伝わると思います。

言い訳は無意味?レビューを受ける姿勢とは

鈴木 「言い訳は無意味」とも言っていましたね。

村山 言い訳は通訳し辛いですね・・・というかしないです。たとえば、レビュアーが「この作品はもう少し大きいプリントの方がいいね」とコメントした時に、「私は遠方なので大きいものは持って来ることができませんでした」と言い訳されても、「じゃあ、1.5倍の大きさだと思ってレビューするね」とはならないですよね。つい言い訳したくなるのは僕も同じなのですが、やっぱり大きいプリントがいいなと思うのであれば、持ってくるべきだと思います。

鈴木 そういう時の通訳は、10秒言い訳していたら10秒何を話しているんですか(笑)?

村山 困りますよね。印象が悪くならないように、できるだけカットして、言い訳に聞こえないようなことを言うようにしています。

鈴木 レビューを受ける時は受け身ではない方が当然いいと思いますが、大事な姿勢はありますか?

村山 いろんな所で言われていることではありますが、日本人は受け身の方が多いというのは思います。次に繋がる機会であるにも関わらず、「私の作品にアドバイス頂戴」という姿勢の人もいますね。一度通訳をしたことがあるスコットランドの女性作家さんは、質問全てに対して答えていました。その場で考えたこともあったかもしれないですけれど、自分の作品を隅から隅まで語れることは必要だなと思いました。

鈴木 そういうスキルを磨く為にするべきことは何だと思いますか?たとえば、「PHaT PHOTO」写真教室の講評の時間は初歩の初歩として役立っているかもしれないですね。

村山 そうですね、作品を言葉で説明する訓練が必要だと思います。

ステートメントを書くときに意識していること

鈴木 レビューサンタフェを受けるためには、事前審査がありますよね。作品と一緒にステートメントの提出が必要だと思いますが、村山さんが書く時に意識していることはありますか?

村山 サンタフェの応募時のステートメントは確か300ワード程度の文字数制限がありました。自分としてはコンセプチュアルな作品を撮っているつもりなので、ステートメントをしっかり書かないと伝わらないと考えています。ただ、サンタフェには何百人もの応募があるので、審査側は長文を読んでいられないですよね。結局200ワードくらいで提出をしました。何が正解なのかはわからないのですが、できるだけ簡単な言葉で、的確に書くように意識しています。

「レビューサンタフェ」へ向けての作品づくり

鈴木 村山さんはポートフォリオレビューを受けながら、どんな風に作品づくりをされていますか?

村山 以前、飯沢耕太郎さんのワークショップを受けたことがあり、知識がとても豊富で客観的に写真を観てくださる方だと思ったので、その後も写真集食堂「めぐたま」で開催されているポートフォリオレビューに時々参加して、自分の立ち位置の確認をしています。

T.L.G.B.©yasunori murayama

このシリーズの初期の作品も飯沢さんにレビューしてもらいました。フィリップ=ロルカ・ディコルシアと春木麻衣子さんという方の作風に似ているかもしれない、と思いながら見てもらったのですが、飯沢さんに2人の写真家の名前を言い当てられました。そこで、やっぱり似ているんだって確信して。ビジュアル的に似てしまうと、そこで観る人が止まってしまうので、少し形を変えて進めていきました。

サンタフェの審査はこの作品で通過しましたが、もうひとつシリーズを持っていこうと思って、ここ2ヶ月くらいでまとめている作品もあります。

月の出てない月夜の晩に©yasunori Murayama

 

まだタイトルさえ決まっていない状態で飯沢さんに見せに行って、面白いって言ってもらえました。面白いって言ってもらえなくても、結局はやると思うんですけれど。定期的にレビューを受けて、作品を深めていくというのもありだと思います。

鈴木 サンタフェはアーティストとギャラリストやパブリッシャーのマッチング要素が強い印象です。アレック・ソスもいまやドキュメンタリー映画ができているくらい有名な写真家ですが、最初はサンタフェで有名になった写真家ですよね。

村山 そういうチャンスもあり得るし、収穫無しで帰ってくることもあると思うんですけれど、機会を逃さずに、作品をPRしていきたいと思います。

鈴木 レビューは11月ですよね。せっかく審査を通過されたので、何かしら掴んでくれると嬉しいです。サンタフェ以外にもフランスのアルル国際フォトフェスティバルでのポートフォリオレビューは有名です。日本でも、TOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHYや六甲山国際写真祭で開催しています。

村山 日本にいながら海外のすごいレビュアーに会えることもありますよね。

鈴木 村山さんの話を聞いて、ポートフォリオレビューを受けながら作家活動している人がいるということが伝わったらいいなと思います。みなさん自身がレビューを受けてみるのもいいですし、周りにチャンスを探している人がいたらぜひ受けるように勧めてあげてください。

さて、今回はポートフォリオレビューの経験や作品づくりについていろいろとお話し頂きましたが、レビューサンタフェに合わせて制作されたシリーズが、なんと銀座ニコンサロンで展示されることが決まったそう!ぜひ村山さんの作品を観に足をお運びください。

 村山 康則 写真展 月の出てない月夜の晩に

銀座ニコンサロン 2018年2月14日(水) 〜 2018年2月20日(火)
大阪ニコンサロン 2018年3月15日(木) 〜 2018年3月21日(水)
ともに10:30~18:30(最終日は15:00まで)※日曜休館

月の出てない月夜の晩に©yasunori Murayama

 

現在、PHaT PHOTOでは新たに始まったコンテスト「PPC道場」への応募を受付中。ポートフォリオレビューへの応募を考えている方、ちょっと興味を持たれた方、腕試しに「5枚」から応募できる「PPC道場」に応募してみませんか?年間優秀者の1名の方には、写真のプロに「見てもらえる機会」とTOKYO INSTITUTE of PHOTOGRAPHY内のギャラリー「ブルーウォール」での無料展示の権利が与えられます。

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