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HOW TO / 作品制作のヒント

佐藤時啓・インベカヲリ★・テラウチマサトがフォトコンテストでその写真を選んだ理由は?講評をチェック!


「PHaT PHOTO」の人気コンテストPPC。
毎号異なる3名の写真関係者を審査員としてお招きし、審査を行い、座談会形式で3名の視点から講評します。
上位50作品は必ずコメントがつくフォトコンテストです。

本記事では、上位9作品に続いて、入選8作品をご紹介します。

審査員:佐藤時啓/インベカヲリ★/テラウチマサト

センスを感じる切りとり方

「タイトルなし」飯島萌

飯島さん作品
――ここからは入選作品です。自由応募で、飯島萌さんの作品。

テラウチ 赤色の虫かごがドアノブにかかった様子がおさめられています。この風景を見つけた時に、どこからどこまでを入れるか非常に考えられたと思うんですよね。

垂直、水平、様々な線が構成されている中で、いちばん手前に斜めの木を入れたところに、作者のセンスを感じました。落ち着いて撮影されているのがわかります。たくさんの線がもつ面白さをうまく1枚にまとめられていますね。

佐藤 テラウチさんが言われたように、建築部材の茶色い人工的な素材感の中に、自然の木を一部取り入れたことによって、虫かごとの関係をうまく演出することができていると思います。木からセミを連想させ、夏のある1日というテーマを成り立たせている。赤い虫かごが、落ち着いた風景の中でひときわ目立って、夏の終わりのような寂しさも感じました。

インベ 写っている虫かごが、よく思い浮かべるものと違っていました。家は割とよくある一般的な造りですが、虫かごだけが、イメージするものとは違っていたので、そこだけ強烈に違和感を抱いてしまいましたね。

佐藤 虫かごとしては確かに珍しいですよね。見慣れないデザインです。虫取り網が無造作にドアの前に置かれているので、立てかけたり、もう少し網とわかるように撮ってみると、また見え方が違ったかもしれません。

手を加えることでひと味違う作品に

「雨上がり」イトウエージ(千葉県)

い
――続いて、自由応募でイトウエージさんの作品「雨上がり」。

佐藤 水鏡が面白いですね。水面に浮かぶ頭の形が仏像のように見えて、東京タワーと仏像のコラボレーションなのかと思いました。反射した世界が美しい作品ですが、もう1歩なにか足りない感じがしましたね。

インベ 水溜まりの中にタワーと人と街並みがあり、タワーの上の丸も太陽のように感じたりする。この小さな水面にすべてが凝縮されているのは面白いと思ったんですが、佐藤さんと同じくもう一声欲しいなと思いました。

テラウチ このコンテストでも、映り込みの作品はよく見ます。でもその中で、作者は水のどこまでを入れて、どこを外すかというのをすごく考えて撮られている感じがしました。周囲のアスファルトがでこぼこした感じも、あまり見たことのない雰囲気だったので素敵です。でも、確かにお2人が言われたように惜しい感じはしましたね。

ここまで素直に撮らなくてもよかったかもしれません。右上のところが少し空いているので、僕水の中から出したりすると思います。水の中の世界と現実を面白く表現するためには、もう少し演出を加えてみてもよかったような気がします。

佐藤 タイミングが難しいと思いますが、カエルがいたりしても面白そうです。

インベ 確かに何か1つ加わるといいだろうなと想像しました。水面が揺れているだけでも大分印象は違うのではないでしょうか。そのまま撮るだけではなく、小さなことでも手を加えてみるということが大切ですね

タイトル通りの美しさ

「老木の青春」髙野良介(群馬県)

髙野さん作品
――次は、自由応募で髙野良介さんの作品「老木の青春」。

インベ これは木だったんですね。朽ちかけたような木から花が咲いているのは珍しくて、とても綺麗な光景だなと思いました。ただ、あまりそれ以上のものは感じとれなかったので、今回は選びませんでした。

佐藤 素敵な作品だと思いました。老木が池に浮く島のように見えて、その島には花が咲いている。雨の滴の跡が水面に残っていて、輝かしい、まさにタイトルにある青春のような美しさを捉えることができています。

テラウチ 現代の生け花のようで、本当に綺麗な光景です。こんな風に老木から花が咲くことがあるんだと驚きました。画面の右端に寄せた切りとり方も斬新で面白かったです。

構図や角度に気を配ることでレベルアップを

「タックル。」okirakuoki(東京都)

okirakuokiさん作品
――続いて、自由応募でokirakuokiさんの作品「タックル。」。

テラウチ ねこの世界もラグビーブームとのこと。面白いタイトルと目の付けどころです。僕は一見相撲をしているように見えたのですが、今の世の中の流行を取り入れて、見せ方を工夫されている。なかなか撮れないタイプの写真だと思いました。

インベ 私は猫が好きなので、この作品も好きでした。動きも人間っぽくて面白かったのですが、

猫の目が見えないのが少し残念でしたね。これで猫の表情が鬼気迫っていたり、険しい顔が見えていたら、よりラグビーのような強いタックルの雰囲気が伝わってきたかなと。

どの距離から撮ったのか、撮ったものをトリミングしたのかわからないですが、少しさらっとした感じの写真に見えたので、もう少し見せ方の工夫がほしかったです。

佐藤 いいタイミングで捉えられていますが、僕もインベさんが言われたように表情が見えないのが気になりました。目が少し写っているだけでも与えるイメージは違うと思うんですけどね。ラグビーに見立てる発想力は素晴らしいと思うので、構図や角度にも気を配ってもらえると、さらによい作品になると思います。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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