フォトコンテストで上位に選ばれた理由は?PPC vol.115の講評をチェック!
「PHaT PHOTO」の人気コンテストPPC。
毎号異なる3名の写真関係者を審査員としてお招きし、審査を行い、座談会形式で3名の視点から講評します。
上位50作品は必ずコメントがつくフォトコンテストです。
本記事では、上位入選9作品を一挙ご紹介。
1位に選ばれた作品の良さは?評価の分かれ目ってなに?審査員たちのさまざまな視点から、あなたの写真がレベルアップするヒントが見つかるかもしれません。
審査員:佐藤時啓/インベカヲリ★/テラウチマサト
いい場所、いい視点で、作者だからこそ撮れた1枚
1位「壁に目あり」畠山雄一郎(宮城県)
――今回の1位は、2作品あります。まずは、自由応募で畠山雄一郎さん「壁に目あり」。インベさんが1位、佐藤さんが3位に選ばれました。
インベ 写真を見てすぐに、“ 目”に気づきました。壁の穴自体が不思議な形をしていますが、色も怪しくて、作者がこの場面の奇妙さを感じながら、それをどのように伝えようか考えて切りとられたことがわかります。
ここだけ独特な、まるで映画の一場面のようですね。多分少しずれただけでは目のようには見えないでしょうし、ベストな位置で撮られていると思います。いい場所、いい視点で、この方だからこそ撮ることができた作品だと感じました。
佐藤 遠くから見た時に、この1枚が最初から目立っていました。後ろの窓ガラスが光っていて、ハイライトのように感じられ、より目の印象を強めていて面白かったです。ただ、僕はプリントが気になりました。微妙な色だったのでもう少し綺麗に色が出ているとよかったですね。
テラウチ 右上の家の壁についている丸も目に見えたり、他の穴が鼻にも見えたりして、そういうものも含んで切りとっているんでしょうね。ただ、僕も佐藤さんが言われたように色が惜しかったなと。発見と切りとり方の面白さで十分に成立していたので、ここまで色をつけなくてもよかったかもしれませんね。
花火の終わりの寂しさが凝縮されている
1位「星降る夜に」森田耕司(富山県)
――同じく1位は、自由応募で森田耕司さんの作品「星降る夜に」。佐藤さんが1位、インベさんが3位に選ばれました。
佐藤 地元の花火を撮られたとのこと。最初、これは雨がフラッシュで光っているのかと思いました。これは花火が落ちてくる破片なんですね。こんなに寂しい花火の写真は見たことがありませんでした。花火の終わりの寂しさのようなものがこの1枚に凝縮されています。漁船と花火の組み合わせからも様々な物語を想像することができて、すごく雰囲気のある1枚だと思いました。
インベ 花火を打ち上げた瞬間ではなく、落ちてくる時を捉える。そういう部分を切りとったのかという驚きがありました。
ただ、
作者の説明に「たくさんいた人が入らないようにフレーミングした」とあったのですが、私はあえて入れて撮った方が面白かったような気がしました。落ちてくる花火を人が見ている場面は花火大会で確かにあるはずだけど、そこを切りとる人はなかなかいない。新鮮な作者の視点が、より強調されたかなと思います。
テラウチ 僕もインベさんと同じく人を入れた風景を見てみたかったですね。でも、他の人とは違う花火の見せ方は魅力的でした。まるでゴッホが描く星月夜のようであり、美しい光の写真です
無駄のない完成度の高いスナップ
3位「Pineapple Shop」Arki(茨城県)
――続いて3位は、自由応募でArkiさんの作品「Pineapple shop」です。テラウチさんが1位に選ばれました。
テラウチ バングラデシュのマーケットで撮影されたとのこと。広告写真のようにどこかセットアップされた感じがして、スナップにしては出来過ぎていると思ったくらい完成度の高い1枚です。少し高い位置から撮られたのでしょうか。
まったく無駄なものがなくて、画面に一体感がありました。この場所を、この構図で捉えた作者のねらいは成功していると思います。積みあがったパイナップル、人々、奥に続く店。すべてバランスがよくて、これがスナップだとしたらすごいの一言です。
佐藤 情報量が多くて、写真の醍醐味を感じさせてくれる作品ですね。後で写真の細部を眺めてみることで、撮影した時には気づかないようなものが見えてくる。アジアの街の盛り上がり、独特な雰囲気を感じました。
インベ テラウチさんが言われたように、コマーシャルのようですね。とても安定した1枚ですが、今回は他に選びたいものがあったので、あえて票は入れませんでした。また、恐らくこの場所に行ったら、写真で見るよりすごいんだろうなとも思ってしまいました。バングラデシュという場所が持つ力が強かったですね。
割れたたぬきを捉える新鮮な切り口
4位「守り神?」西端久(大阪府)
――次に4位は、自由応募で西端久さんの作品「守り神?」。佐藤さんが2位、テラウチさんが特別賞に選ばれました。
佐藤 商売繁盛の縁起物であるたぬきの置物が壊れた様子とのこと。とても即物的な写真ですが、作者の解説を読むまでは、何か別の生きものように見えて、たぬきだとはわかりませんでした。
壊れたたぬきを再構成して、さらに別の不気味なものをつくっている。その物と行為自体が面白いなと思ったのと、それを写真に撮ろうとした作者の姿勢もいいなと思いました。楽しめる写真ですね。
テラウチ ここまで割れてしまったら廃棄するんでしょうが、それをまた別のものにつくり替えるというところが面白かったです。壊れたたぬきを、こんな風につくり直した方にもセンスがありますよね。
緑色の背景の中に竹のようなものが立てかけてあって、その場所に置いてあったものも活かしている。ついついこのアップだけで撮ってしまいそうになるところを、冷静に切りとることができていると思いました。
インベ たぬきの置物は確かに割れ物だから、割れることもあるんですよね。今まで見たことがなかったので新鮮でした。口の部分は原型を留めているので、ぱっと見てすぐ、たぬきの置物が割れたのだとわかるような撮り方があったらさらに良かったのかなと思いました。
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と評された、5位~8位の講評をチェック!