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HOW TO / 作品制作のヒント

写真家を志す人へ テラウチマサトの写真の教科書 第13回 忘れられない1枚


写真の学校を卒業したわけでもない、著名な写真家の弟子でもなかったテラウチマサトが、
約30年間も写真家として広告や雑誌、また作品発表をして、国内外で活動できているわけとは?

失敗から身に付けたサバイバル術や、これからのフォトグラファーに必要なこと、
日々の中で大切にしていることなど、アシスタントに伝えたい内容をお届けします。

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自分の中に、記憶に残る写真はいくつもある。

写真家をはじめてから、任された仕事の数だけ忘れられない写真はあって、思い出しはじめれば、いくつもはっきりと思い浮かんでくる。

たとえば何度も訪れている屋久島の写真。1999年に伊勢丹の新宿店で行なった「癒しの島」写真展のポスターに使った、朝に光射す屋久島の森と川の写真は、いまでも会社に飾るくらいだ。
あるいは、カルティエの時計を撮影したもの。その写真が採用されたときの気持ちは、いまでも瑞々しく覚えている。

でも、数多くの写真の中から忘れられない1枚を選ぶとしたら、それはNYの写真に違いない。

これは、1999年に57丁目の6番街の横断歩道を渡りながら撮影したもの。
2016年に出版した『Eternity』という写真集の中に収録されている。

この作品に特に思い入れが強いのは、この写真を見た人たちが「とても良い写真だ」と言ってくれたからだ。安直な理由だと思われるかもしれない。
でも、信用していたデザイナーや経営者の言葉は、僕に自信をくれた。

僕は当時、世界の飛行機雲を集めた写真集を出したいと思っていて、飛行機雲ばかり撮っていた。パリやロンドン、NYなどいたるところで。
先の写真も、飛行機雲が現れていることに気づいて、瞬間的にシャッターを切ったものだ。

信号を横切る紳士と、オレンジの曖昧な色を伴う明け方の空。
遠くまで続くように見える飛行機雲。
反射的に撮影したものではあったが、自分の中ではNYのいまを切りとったという実感があった。
そして、それが自己満足だけではなくて、多くの人が評価してくれたことが何より嬉しかった。何人かの方からは、それが縁でありがたいことに実際に仕事を頼まれることもあった。

 

この写真は、自分が1人で写真で生きていけると思わせてくれた1枚だ。
それはもしかしたら勝手な勘違いだったかもしれない。
しかし、撮影したときから随分日が経ち、写真家として活動しているいまでも、このNYの風景は折に触れて僕の頭に浮かんでくる。そしてその度に、写真家として活動し始めた最初の頃の気持ちを思い出す。自分の作品を評価される嬉しさや、感覚を共有できる喜び。
忘れてしまいそうな感覚を何度も思い出しながら、いまの仕事に真剣に挑む。

記憶に残る1枚の写真のおかげで、僕は次の1枚を撮ることができる。

 

テラウチマサト写真集『NY 夢の距離』

忘れられない1枚の舞台であるNYで、
テラウチマサトが撮影したスナップ写真をまとめた写真集です。

ランナーでもあるテラウチが、NYを走りながら出会った人との不思議なエッセイや、
撮影地マップ&ガイドもついています。

■テラウチマサト写真集「NY 夢の距離」(T.I.P BOOKS)
■定価:税込3,800円 ※税抜3,519円(+税)
■ページ数:90ページ
■仕様:上製本/ヨコ210×タテ260ミリ(A4サイズ)/角背

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