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HOW TO / 作品制作のヒント

作品のエディションって何?|写真「販売」基礎知識 3/12


写真を売ってみたいけれど、何から始めていいかわからない。

急に「作品を売ってほしい」と言われたけれど、値段の付け方やサインの入れ方など知らなくて困った。

そもそも、写真って売れるの?

作品制作を行う写真家やアマチュアの方で、そんな経験をしたり、疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

いつか作品を売ってみたい写真家や、買ってみたいアートファンの方へ。

本記事は、作品販売を仕事にしているギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんに、写真販売の基礎知識について詳しくご紹介いただく連載です。

※本記事は、現在Tokyo Institute Of Photography(T.I.P)で開催されている、ギャラリーPOETIC SCAPEのディレクター柿島貴志さんによる人気講座の内容を一部抜粋してご紹介しています。講座は若干名のみ受付中(申し込み状況によって完売の可能性あります)

柿島貴志/Takashi Kakishima

大学卒業後に渡英。ロンドンBlake Collegeを経て、Kent Institute of Art and Design(現UCA)ビジュアルコミュニケーション・フォトメディア卒。ITやアート関連企業を経て、2007年にアートフォトレーベルphotta-lot、2011年にギャラリーPOETIC SCAPEを設立。現在はPOETIC SCAPEの経営・ディレクションのほか、写真作品の額装ディレクション、他ギャラリーでの展覧会・イベントディレクション、写真系企業へのビジネスコンサルティングなどを行う。

<今後の更新記事予定>
自分の作品の価値の付け方
写真のプレゼンテーションとルール
成約から納品、次の展示までのTIPS
写真販売シミュレーション
etc…

前回はアートマーケットや写真を販売する場所についてのお話をしました。今回は、写真の価格とエディションの仕組みについて、お話ししたいと思います。

写真の価格はどうやって決まるのか?

写真の価格へ影響を及ぼす要素とは、どういうものがあるのでしょうか。
影響が小さいものと大きいものに分けて説明していきましょう。

価格への影響が小さい要素

・制作コスト
撮影のための旅費や、モデルやメイク費、小道具などに何十万円かけても、それが理由で価格が大きく変動することはそれほどありません。

・プリント技法
いまはもう、どんな技法でもそれほど関係ありません。10年程前まではインクジェットプリントは若干安く値付けされていましたが、いまはゼラチンシルバープリントと比べても価格に差は感じられません。外国に比べて日本はまだこだわる方ですが、だんだんその差は縮まりつつあると思います。

・商品としてのクオリティ
技術的に数値化できるものと、アート作品の写真の価値はそこまでダイレクトに関係しないですね。

・労力
この1枚撮るのに3日かかり…、許可を撮るのに苦労して…、という要素はほとんど関係ありません。労力がかかったから何十万円ということにはなりません。勘違いしやすいところですが、これらはほとんど関係ありません。

価格への影響が大きい要素

・作家/作品の評価
作家がこれまでどんな活動をしてきたのか、作品がどう評価されてきたのかは、大きなファクターになります。

・海外展開
同じ作家でも、海外で展示をすると、値段がどうしても上がってしまいます。理由は、現地で展示をする場合は渡航費がかかったり、郵送費がかかる場合があって、物理的に金額を上げなければならないということも若干ありますが、なにより、日本国内より海外の方が写真作品の評価が高く、価格も高く売れます。

・サイズ
サイズが大きいと値段は高くなります。逆に言うと、国内、あるいは海外でどれくらいのサイズにすると売れやすいのか、というところから考えることもあります。もちろん、作品の内容に合う、合わないというのがいちばんではありますが、たとえば韓国では大きいサイズのものから売れていくと聞いたことがありますね。

・販売実績
過去に作品を販売していると、現在つける値段にも影響してきます。基本的には、同じシリーズの作品の値段を下げるということはありません。一度値段をつけると上げることはあっても、それ以降、下げられないので、値段付けは慎重に行います。

・制作年
「ビンテージ」という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、数十年前に作家が作品を撮影した当時にプリントしたものと、昔撮影したものだが、プリントは最近したものでは価値が全く変わってきます。最近はプリントの裏に制作年を書く人が増えてきました。

・希少性
次のエディションの話にダイレクトに関わることですが、数(エディション)が少ないものは高く、逆なら安くつけます。

エディションって何?

エディションの仕組み

エディションという言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。エディションは販売部数のことを言います。仕組みを理解しましょう。

エディションとは…
=限定部数の略
エディションナンバーに1/7 と書かれていれば、限定「7」しか制作しないとう意味

特殊エディションとは…
A.P.→artist’s proof 作家保管用
P.P.→printer’s proof プリンター保管用 等

エディションとは、本来は作品クオリティ管理のためにつけるものです。版画だと、何枚も刷った中で、作家がOKを出した10枚であることの証明です。この10枚は同等のクオリティであり、同じ価値があります。

版画はある程度刷ると版が痛みクオリティを保てないことがあり、クオリティを担保するためにもエディションをつくったという背景があります。なので、版画はエディションをつけることに整合性があります。

版画のエディションの仕組みを写真にも転用しているので、そういう意味では写真についてはクオリティよりもマーケット的な意味合いが大きいですね。

エディションのルール

・限定数を分母に、分子には作品ごとに番号をふります。

 例:限定数7の場合、1/7からスタート。7/7で完売という意味です。

・サイズが違えば別エディションとみなすことが多いですが、サイズ違いでも同一エディションとすることがあります。

・ステップアップエディションとは? 残りのエディションが少なくなるにつれて、価格も上昇する値段の付け方です。

 例:エディション(ed)1/7=30,000円、エディション(ed)5/7=50,000円

なぜこのようなことをするのでしょうか。小さいプリントだと最初は3万円くらいで買える作品もあります。実際の定価はもう少し高いので、エディションナンバーが低いときは、安く買えるというイメージです。勇気を出して買ってくれてありがとう、スペシャルプライスですよ、ということですね。最後の方のエディションは、みんなが買って評価されている作品なので、価値があるということです。

・エディションの分母が小さければ希少性は増し、作品の価格は高くなります。またその逆もしかり。安ければいいわけでもなく、エディション50で1万円にしても、売れるとは限りません。

 

いかがでしたか?

ギャラリーに訪れる際には、ぜひ作品の値段やエディションにも注目してみましょう。

次回は、具体的な作品の価値の付け方について解説していただきます!
講座は若干名のみ受付中!(申し込み状況によって完売の可能性あります)


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