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HOW TO / 作品制作のヒント

飯沢耕太郎・舞山秀一・テラウチマサトがフォトコンテストでその写真を選んだ理由は?講評をチェック!


「PHaT PHOTO」の人気コンテストPPC。
毎号異なる3名の写真関係者を審査員としてお招きし、審査を行い、座談会形式で3名の視点から講評します。
上位50作品は必ずコメントがつくフォトコンテストです。

本記事では、上位8作品に続いて、入選9作品をご紹介します。
評価ポイントに加えて審査員からのアドバイスも。審査員たちのさまざまな視点から、あなたの写真がレベルアップするヒントが見つかるかもしれません。

審査員:飯沢耕太郎/舞山秀一/テラウチマサト

ねらいを超えた何かを撮るためには?

「大岩壁の秋」髙野良介(群馬県)


――ここからは入選作品です。最初は、自由応募で髙野良介さんの作品「大岩壁の秋」。

飯沢 日が当たった岩肌と、赤くなった紅葉との対比が美しく、作者のねらいがうまくいっていますね。こういった作品は、意図通りに撮るというところまではうまくいきますが、ねらいを超えた何かを撮るまでにいくのは、なかなか難しい。そこには運や粘りの問題もあるでしょう。ここにどのようなものを呼び寄せられるか。それが1歩進むための鍵ですね。

舞山 すごく綺麗な風景なのですが、山の向こうの青い色味が若干崩れているのが残念です。岩肌の光と影や紅葉の美しさは写真として十分な強さがあるので、その青の不自然さだけが気になりました。

テラウチ ダイナミックな切りとり方で、谷川岳をこんな風に表現したかという驚きがあったのですが、やはり上1/3の青さが惜しかったです。構図や着眼点は素晴らしいので、もう少しプリントする時に、色味にも気を遣われた方がよかったと思います。

もっと冒険をしてみよう

「5月/扉」にたばる(滋賀県)


――続いて、テーマ応募でにたばるさんの作品「5月/扉」。

舞山 色味はすごく好きなのですが、もう少し意味付けがあればいいかなと。茶色いトーンの中に、真っ白い女性の帽子が映えるので、ドアの上の白い部分は余計だったかもしれません。どこかもの足りなさを感じました。

テラウチ 主役のドアも帽子も素敵ですよね。ただ、僕も舞山さんが言われたようにドアの上部は切った方がよかったと思います。

飯沢 この方は撮るのが上手なんでしょうね。うまい撮り方を知っている人は、「いい作品だけどもう1歩」と言われることが多い。完璧な1枚をつくろうとせずに、もっと冒険したほうがいいです。まとまりを求めず少し壊してしまった方が、今の場所からあと1歩進むことができると思います。

テラウチ インパクトが欠ける部分もあるのかもしれませんね。ドアの前に誰かが通るのを待っていたと思うのですが、帽子ほど被写体の洋服はフォトジェニックではない。だからむしろ、もっと近寄ってもよかったんじゃないかなと思いました。そうすると、白い帽子も、茶色の重厚なドアの良さも効いてきますよね。

小さなことを変えると、異なる表現方法が見えてくる

「危険地帯」みつのぶひでたか(群馬県)


――次に、自由応募でみつのぶひでたかさんの作品「危険地帯」。

テラウチ 台風の後の増水した川の跡を撮影したとのこと。ねらいは感じとれたのですが、そこまで自然の驚異が写っている感じはしませんでした。報道などでもっとすごいものを見てしまっているから見慣れている部分はあるのかもしれませんが、インパクトとしては弱く、もう少し撮るポジションにも工夫が欲しかったですね。

舞山 向こうに川が見えていて、恐らく手前は全部グラウンドだったと思うんですよ。それが壊滅的に水面被害に遭っているので、作者の方は見慣れている風景としては強烈なものを感じたのだろうと思います。

ただ、
その凄味を具体的にドキュメンタリーで伝えるというところにはまだ至っていない感じがしました。恐怖感を煽る構図はもっとあったと思います。演出するという意味ではなく、リアルをどこまで撮り切れるかという問題です。難しいことだと思いますが、意図を表現するための工夫をもっと磨いていってほしいです。

飯沢 じわじわと怖さは伝わりますけどね。センセーショナルに伝えるのではなく、淡々と静かに訴えかけるというのも、考え方としてはあります。ただ、少し中途半端だったかなと。下に降りたり、橋の入れ方を工夫してみたり、風景との距離感や撮影ポジションを変えてみると、もっと違う表現の仕方が見えてくると思います。

意図を伝えるための工夫を

「for you」岡本和宏(富山県)


――続いて、自由応募で岡本和宏さんの作品「for you」。

テラウチ コンサートでお客さんの間から演奏者の手だけをとらえている。繊細な演奏をする指に惹かれたのでしょうか。撮影する視点は面白いですが、何を伝えたいのかが少しわかりづらかったです。

飯沢 指の持つ形にも感動したのでしょうね。ねらいの絞り込み方は悪くないのですが、前の観客の在り方にはもっと配慮がないといけないかなと思いました。観客の方たちはみんなモノクロの服と髪の毛なので、色味もそっけない感じがします。目は演奏者の手の表情にいくので、ねらいとしては成功していますがもう少し色気が欲しい気はしました。

舞山 撮影意図に「想いを贈るということを表現した」とありました。その意図は確かにわかりますが、演奏者だけが目立ってしまっているように感じます。フレームインフレームにした観客を活かしきれていないところがありますね。

また、ちょうど弓がいききったところを捉えているので、演奏する手が止まって見えて、音が聴こえてくる感じもしませんでした。ねらって写真を撮っていくのは素晴らしいことなので、その意図をわかってもらうためにはどのタイミングやポジションがいいのか、もう少し考えてみるとより良い作品になると思います。

日常の珍風景の面白さ

「ここへは絶対に停めさせません」宮崎智恵(東京都)


――次は、テーマ応募で宮崎智恵さんの作品「ここへは絶対に停めさせません」。

舞山 日常の珍風景ですよね。素直に撮れていますし、その面白さだけで十分魅力的だと思います。このような珍風景ねらいで集めたら目を引く作品群になりそうです。

テラウチ 同じものが1ヶ所に集まっている光景は珍しいですし、それが駐車禁止の看板ということで面白い場所を見つけられたなと思いました。ただ、下の部分の役割がわかりづらかったですね。

たとえばツクシにトンボや蝶が止まっていたら、車は禁止だけど昆虫は停まってもいいんだと思ったりする。実際それは難しいのかもしれませんが、あえて入れたのであれば、何かその空間を活かす工夫があればよかったかなと思います。

飯沢 手前のツクシは少し余計だったような気もしますね。手前を入れずに、道路標識を中心に寄って撮ってしまった方が面白さが際立ったかもしれません。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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