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HOW TO / 作品制作のヒント

飯沢耕太郎・舞山秀一・テラウチマサトがフォトコンテストでその写真を選んだ理由は?講評をチェック!


ねらいと技術、表現の成果が結びついた作品

「ランナー」求磨川貞喜(岡山県)


――続いて、テーマ応募で求磨川貞喜さん「ランナー」。

飯沢 ねらいと技術、表現の成果がうまく結びついた、いい作品だと思います。最初は本当に走っている人のように見えたのですが、それにしてはシルエットがあまりにもくっきりとしていて違和感がある。これは銅像なんだとわかった時に、その種明かしが逆に面白かったです。空も木と銅像のシルエットも美しく、非常に的確に撮れている作品だと思いました。

舞山 背景の夕景がとてもきれいです。手前をストロボで浮き上がらせているところも、その不思議さが面白さになっていますね。手前の木が、もしストロボをたかずに真っ黒だったらどう見えていたんだろうと興味を持ちました。

テラウチ 写真自体とは関係ないですが、日々走っている人間から見ると、この銅像は疲れ切っている人の走り方です。腰が落ちていて、首も前に落ちている。もし、もっとやる気がみなぎった若い力という意味でこれを写したいと思ったのであれば、もう少し右側から撮った方がいいですね。

右に回ることによって、銅像の形もよくなると同時に、木と銅像の距離も縮まって、まとまりが出るかなと。すごく工夫して撮られていますが、もっと細かく見ていくと、さらに目を引く1枚になると思いました。

要素を絞り込む勇気

「空中散歩」根岸豊(東京都)


――次に、自由応募で根岸豊さんの作品「空中散歩」。

テラウチ ダム展望室の窓に映る室内と山を撮影されたとのこと。映り込みと中にいる人の組み合わせ方は面白いなと思いました。ただ、いまいち何を撮っているのかが分かりづらかったです。足の部分だけに寄って見せた方が、より面白さが伝わったような気がします。こういう場面を見つけられるセンスは素晴らしいので、切りとり方に工夫が欲しかったですね。

飯沢 要素を増やしすぎたので分かりづらくなってしまったんだと思います。映り込みはあまり色んなものを入れてしまうと、すっきりと目に届かない。2個か、せめて2・5個くらいに要素を絞った方がいいですね。

舞山 綺麗な作品で好きなのですが、お2人が言われたように画面構成にはもう少し気を遣ってほしかったです。立っている人に指示をしたり、誰かいい人が訪れてくれるまで待ってみる。写真は待つのが仕事です。気に入った絵があったのであれば、そこにねらいを定めたまま、さらにいい被写体やタイミングを捉えるために粘ってみてほしいですね。

勢いだけで撮らない大切さ

「吊り荷の下に入るな!」森田耕司(富山県)


――続いて、テーマ応募で森田耕司さん「吊り荷の下に入るな!」

飯沢 スカイツリーをクレーンで持ち上げているように見える位置で撮影されたとのこと。謎解きのような作品は、分かっても面白いものと、納得で終わってしまうものがあります。この作品は、もう少し何かが足りなかったかなという気がしますね。クレーンとスカイツリーの関係が、もっと角度を変えてうまい具合になりそうなところがある気がしました。

舞山 着眼点は面白いですが、そこに注目しすぎて、他の部分を見逃してしまっている感じがしました。右側の黒いシルエットになっている草木が、本当に作者が見せたいものを邪魔している。歩行者も、危険な場所に来たということが感じられるタイミングではないかなと。面白い場面を発見した時には、勢いで撮るのではなく、画面の整理の仕方や、ポジションにも気を遣ってみてほしいですね。

テラウチ お2人が言われた通りですね。通行人がオレンジの柱と重なってしまっている部分も気になるので、もう少し先にシャッターを押すか、作者が左側に動くかした方がよかったです。左側に動いても、クレーンがスカイツリーを吊っている見え方は変わらない。そういう小さく微妙な部分の重なりを意識されたら、もっと上位をねらえる作品になると思いました。

ねらいがしっかりあるなら、構図を詰めて仕上げを

「線と線」倉谷さち子(富山県)


――最後は、テーマ応募で倉谷さち子さんの作品「線と線」。

舞山 こういう場所を見つけられたのは面白いですね。ただ、もう少し構図で整理できたら意図が伝わるかなと思いました。線の中に面が入ってきてしまっているので、惜しかったなと。ねらいがはっきりしているのであれば、そのために構図を詰めていけばよりいい作品に仕上がると思います。

テラウチ 本来真っすぐであるはずの電柱がぐにゃっと曲がっていて驚きました。後ろの街灯もお洒落で、かつL字型になっている。目の付け所がいいですね。もしこの場所で撮るのであれば、もっと天気のよい日に試してみるといいと思います。電柱の隙間に光が射しこみ、光と影ができる。電柱も黒つぶれせずディティールが見えてきて、また違った印象になるかもしれません。逃げる被写体ではないので、ぜひもう1度ここでの撮影に挑戦してみてほしいですね。

飯沢 左右の建物をカットしてしまって、空と電柱と電線に絞り込んでもよかったような気がします。ただ、それだけだとただの造形写真になってしまうので、そこにプラスαの工夫が必要になる。実際この場所に行ったら簡単には削れないのかもしれません。

ただ、発見はもちろん大事ですが、同じくらい考えてほしいのは発見した後なんです。発見した風景を、どう捉えるか。場所をずらしてみる、角度を変えてみる。そうやってチャレンジすればするほど、写真1枚1枚の可能性は広がっていきます。それを手抜きせずに、面白いと思った部分を強く引き出していくためのひと工夫、ふた工夫を忘れないでほしいですね。


いかがでしたか?
次回は「もうちょっとで入選」20点の講評をご紹介します!


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まちスナ日和