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御苗場vol.28 受賞作品&選出理由を発表

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2021年5月20日(木)~23日(日)に開催された写真展イベント「UnUsual Photo Fest! 御苗場 vol.28」。昨年は無観客開催でしたが、本年は新型コロナウイルス感染予防対策を実施しての一般来場が可能に。
約80名の写真家・写真愛好家によるブース展示や、プロジェクターを使ったムービー・スライド作品を上映し、今回は写真だけでなく様々なジャンルのプロたちがレビュアーとして参加。この記事では、受賞作品と選出理由、ノミネート作品を発表します。

CAPA選出

W04 小野寺宏友 作家ページを見る

選出理由は以下です。

印象的だった点が二点あります。ひとつは、定点で撮られた比較作品の、圧倒的な変化。土田ヒロミさんの「砂を数える」から、一気に中野正貴さんの「東京ノーバディ」に激変する街。緊急事態宣言で一変した街と人の行動が、これほどまでに鮮やかに変化する様子は異様です。街が成長発展してビルが建て替わったり増えたりするのとは違う、「街の異様な変化」を、鮮やかに捉えた視点が素晴らしいです。

そして二点目は群衆の描き方です。密度を出すのに通常は望遠レンズの圧縮効果を利用しますが、小野寺さんはその対極の手法で挑戦しています。超広角の12ミリレンズを使って、隅々までパンフォーカスで緻密に描く。ボケているところが一切なく、人もカチッと静止している。現実を撮っていながら現実感がない。それは、このシーンを肉眼では捉えることが出来ないからです。1枚に数百人の人が写っていることの圧倒感、そして、その一人ひとりのポーズや表情まで克明に描いています。高精細な写真ならではの表現です。

しかも不思議なのは、これらの作品に、撮影者と被写体大勢との関係性が希薄であること。大勢がカメラを意識していない。ハイアングルで視点を上げていますが、それだけでここまでカメラの存在感がなくなるものなのかと不思議に感じます。

今回の「東京群集」は、東京を認識するための、「記録を超えた表現」です。そして東京は、まだ変化を続けています。これからもその変わっていく人と風景を、小野寺さんの視点で撮り取り続けていってほしいです。今しか撮れないのですから。

webカメラマン選出

W08 鈴木 和幸 作家ページを見る


選出理由は以下です。

パッと見でガーンとくる写真が好きなので、この歌舞伎町コラージュの作品を選出させてもらいました。このコラージュ、アナログの切り貼りなんですが、よく見ると、ものすごく丁寧な仕事をしているんですよ。これならフォトショップ使ったって同じくらいに。
この辺がなんと申しますか、表計算ソフトのサマリーを使いこなせず、いちいち電卓を取り出している自分とカブッてシンパシーを覚えました。

ソトコト選出

W40 Miki Yamashita 作家ページを見る


選出理由

身の回りにあるものに目を向けたり考えたりすることが多かった一年、
そしてこれからも続く、それが日常になっていくかなと感じている中で、
今回の御苗場でもコロナ前、コロナ後という考え方をした作品が多かったなという印象を受けました。

「ソトコト」は地域を見つめる雑誌として、ノミネートも受賞作品も、すべて自分自身、そしてその周り、そしてコミュニティを見つめる新しい視点を作ってきたという作品を今回は基準として選ばせていただきました。
その中で、Miki Yamashitaさんの作品は、悲観することもなく、その日常の時間を何か大切なものに使えないかという希望を感じる作品だったこと、
そして、これから少しずつ、かつて日常と言われていた世界の、身の回りの解像度をあげていきたいという意思を感じたこともあり、
これからお子さんとご家族、そしてそれを超えた世界の日常の写真が撮られていくことに期待したいと思いまして、選ばせていただきました。
この度は受賞おめでとうございます。

森岡 督行(森岡書店・店主)選出

W33 Nana Brown 作家ページを見る


選出理由

森岡書店は一冊の本を売る書店ということで、一週間に一冊本を取り上げて、それにまつわる展覧会をしています。
年に一冊か2冊くらいは写真集の出版も行っています。

日々どういうことで、写真集を出したり、展覧会をしたりしているかと言いますと、世の中は二つで一つだと思っているんです。
人間の認識はふたつでひとつだなと。たとえば、美醜、善悪、上下、左右、東西とか、
人の認識はそのような構造になっているんじゃないかなと思っているのですが、
そうであるならば、いつも明るい面とか、良い面、希望とか可能性とかを選択したいなと思っています。

実は今回、そんなことを考えずに、会場を拝見させていただいたんですけれども、
NANA Brownさんの写真を見たときに、そのことを改めて気づいたというか、こういうことだったよなと思いました。

NANA Brownさんの作品は、コロナ禍であっても世界の美しい面に目を向けていようという姿勢があり、それにすごく共感しました。
綺麗なものを素直に写真として撮る、そしてそれを多くの人に見てもらおうという素直な気持ちが感じられました。
これは単純なことのようですが、実は難しいんではないかなと思います。

また、NANA Brownさんの写真のステートメントを読んで、さらに共感しました。
これはもしかしたら誤読しているかもしれないのですが、スポーツ写真の延長線上にあるように見えたんです。
つまり、植物や土の動き、そのものをスポーツとしてとらえている。
私の誤読かもしれないんですけど、そのよう誤読できたことも素晴らしいなと思いました。
好きなものを撮っていて、それが独自性をもっている。これが、私がNANA Brownさんの写真を選ばせていただいたもっとも大きな理由となります。おめでとうございます。

きりとりめでる(写真研究 / 執筆 / 企画)選出

W15 Haruco_ 作家ページを見る


選出理由

Haruco_さんの作品は、自閉症スペクトラムの息子をもつ世界的な写真家のティモシー・アーチバルドという方の個人的なプロジェクトとして撮影された写真集「Echolilia」のシミュレーション作品になります。
元々Instagramで公開されていて、今回、またもう一つ前の展覧会でも、プリントと写真集の形式で展示されたとのことです。

セルフポートレートを通して、自閉症自体、そして、それを撮影する父親というものを理解する手段として撮影をおこなっている点が、非常に興味深かったです。
シミュレーションやアプロプリエーションという、元々あるものを利用して作品を明確に作るという行為は、基本的にカウンターカルチャーで、
持たざる者が持てる者の文脈を簒奪してその意味を転倒させるという手法ですが、
今回のHaruco_さんのように「理解」のためにも行われます。
この作品を作り始めたのも何かを理解したいという気持ちが先立っていたんではないかなと思うのですが、
そこと、プリントと写真集という展示形式が結びついた状態ではまだないのかなと感じました。
この作品の落としどころ、今後どうしていきたいのかというところとも向き合ってくださることを期待し選ばせていただきました。
本当に素晴らしい作品だと思います。おめでとうございます。

小林 美香(写真研究者)選出

SS15 MARICO OGAWA 作家ページを見る

選出理由

今回、プリント作品とスライド作品いろいろと見て迷ったのですが、
今こういった状況で、展覧会を開催することが難しくなる中で、
映像やスライドという形で作品をまとめていくことに可能性があるなと感じたのもこの作品を選んだ理由です。
3分間という短い時間にまとめられていますが、いろんなソースと言いますか、いろんなところから素材を集められています。
その選び方がとても繊細で、些細な日常音であったりとか、記憶の中の音であったりとか、
過去の記憶に結びついたところをすごく丁寧にすくい上げているということをまずひとつ思いました。

そしてこの一年間、コロナ禍でいろんな経験をする機会を失われたりだとか、
時間の感覚が歪んでしまったり狂ってしまうというか、おかしくなるようなことを多く人が経験していると思うのですが、
そういったことと結びついて、見る人がこの一年間の経験と照らし合わせていろんなことを感じることができる作品じゃないかなと思いました。

また、このオンラインでの授賞式もそうですが、スクリーン越しで人に対面するということがとても多くなっていて、
この作品の中でPCのスクリーン画面、表示されている画面を入れ込んでいるというその編集方法もすごく面白いと感じました。
とても今的な映像の作り方とまとめ方であり、複合的に組み合わせながらも、あまり気が散らないと言いますか、
ランダムに表示されているようで考えられている、アイディアというところにすごく忠実と言いますか、
丁寧に選んでいるところが作品として面白いと思いましたし、
これからの作品の作り方においても楽しみなところがあるなと感じて選ばせていただきました。

和佐野 有紀(アートコミュニケーター/医師)選出

W08  鈴木 和幸 作家ページを見る


選出理由

作品を発表することの意味は、『自分以外の誰かに強烈で切実な何かを伝える』というところにあると考えています。
写真映像での表現における伝え方は、直接的に被写体を通して、もしくはキャプション越しに、またはその合わせ技であってもよいと思うのですが、
鈴木和幸さんのTOKYO MAN`S RUINにおけるそれは、被写体、構成、キャプション、タイトルそのすべてを駆使しつつ、それでいて未だ余りある『伝えたい何か』の存在を感じさせるものであったので、my bestを進呈させていただきます。
欲望をもつということ、欲望を再構成するということは、直截的に野性を意味すると感じ、
それはまさに現代社会を生きる我々から失われつつある非常に大切な”生”の要素であると考えています。
数々の分断や留まるところを知らぬ同質化へのプレッシャーは、本来の野性からは生まれえないover-humanismでもあると感じるのですが、
それらが可視化されるコロナ禍に、この作品が発表されたことには大きな意味があると感じています。少し羨ましくなる野性。
おめでとうございます!

AUXOUT(Photographer / Videographer)選出

W29 Mark fujita 作家ページを見る


選出理由

毎年この季節は妻が風呂場にカビが繁殖せぬよう奮闘しています。作品のカビも研究用として無価値であると聞きました。
全国のカビと奮闘している方々には申し訳ないのですが、僕はシャーレの中の小さな宇宙に魅せられて、自身の創作活動へのインスピレーションを頂いたので本作品を選ばせて頂きました。
受賞おめでとうございます。

Takakura Daisuke(Filmmaker / Producer / Director)選出

SS05 よういっちゃん 作家ページを見る

選出理由

今回は作者の人間性や趣向、気持ちが強く感じられるかどうかをベースに選びました。
よういっちゃんさんの作品には愛犬に対する溢れる愛情を感じることができ、作品を見るにつれて私自身笑顔になってしまいました。
その愛情が切り取られた一瞬が積み重なっていることが最大の選考理由になります。
是非今後は、その気持ちを表現する方法として動画撮影にもチャレンジして欲しいなと思います。冒頭から「下手くそでごめんな」からの何気ない写真たちは、日頃からの愛犬との距離感をとても感じました。
今回は本当に素敵な作品をありがとうございます。
今後の活躍を陰ながら応援しています。

遠藤 恵司(株式会社ビームス 取締役副社長)選出

ST01 fumio 作家ページを見る


選出理由

今日は沢山のアーティストのエネルギーに触れることができていろんな刺激を受けましたし、元気をもらいましたし、考えさせられました。
これがアートの力だと思います。
皆さん一生懸命レンズの中に思いをこめて被写体を取り込む作業をした痕跡があって感動しました。その中で一つ選ぶのは辛かったですが選びました。
今の世の中、コロナを切り離しては考えられない状況が続いています。
私の会社も痛めつけられていますが、
今回の写真の中にもコロナがテーマ、背景になっているのがかなりあって、そのような状況なんだなと改めて感じました。
そんな中、1点選ぶとしたら、コロナを感じさせるものを、シンボリックに選ぼうと思いました。

その中で、このfumioさんの作品は
コロナの状況の中での、入学式などのセレモニーを
リモートや席を離したりしてでも開催しながら、
それでもあの中に出ている若者たちの表情や笑顔が、
こういう状況でもいきいきと可視化されている。
逆にそういう制約のある状況だからこそ
人間らしい表情が浮かび上がってきている点が良いなと思いました。

他にも好みのものはたくさんあって迷いましたが、
今、人類全体が闘っているコロナというものをなしには考えられないという思いと、
その中でも人間本来が失ってはいけないものを写し出しているfumioさんの作品を選んだ理由です。

大西 洋(株式会社shashasha/株式会社case 代表取締役)選出

SS15 MARICO OGAWA 作家ページを見る

選出理由

アートブックの出版社Caseと写真集のオンラインショップshashasha代表の大西 洋です。
MARICO OGAWAさんを選出させていただきました。

MARICO OGAWAさんがどの時代を生きていらっしゃるかはわかりませんが、私同様、作品としての写真と映像が交わる場所、交わるべきなのか?など様々なことを考えながら制作をされたことが感じられました。制作をしている現場、作品の意図が伝わってくる良い作品だと思います。

今までの多くの現代美術家がアウトプットとしての写真や映像を使用してきました。ただ、写真家として映像で表現をしていくことや、作品を作るというのは、特に日本の写真会では少し難しい時期が長かったのかもしれません。

私がCaseとして2019年のベネチアビエンナーレの日本館の公式カタログを作成させていただいたのですが、その時は動画と音楽と言葉と建築に構成された作品を1冊の本にしました。私としては、写真から映像に、映像から紙に、これからの写真、写真集、映像のことを色々と考えさせられる活動になりました。

いつか作品を一緒に作れることを楽しみにしております。

立川志の輔(落語家)選出

W29 Mark fujita 作家ページを見る


選出理由

カビは何をたくらんでいるかわからない。
カビが良いモノか悪いものかもわからないし、
美味しいものにカビが生えていたら嫌だし。
でもMark Fujita さんの作品はカビが美しいものだという
発想でそれを表現していることはわかります。
今回は面白いカビの世界を表現したMark Fujitaさんの作品を選びました。

テラウチマサト(写真家/御苗場プロデューサー)選出

SS13  ナカニシ ヒロアキ 作家ページを見る

選出理由

今回本当に良い作品がいっぱいあって、迷ったなかで中西さんを選ばせていただいたのは、まず、バーチャルというテーマに、僕は仮想とか本物ではないというイメージを感じていましたが、中西さんの作品には、バーチャルというのはもう一つの真実という意味が書いてあって、今まで気づかなかったものを気づかせてくれたという点で、いいなと思いました。また、それを大変美しい写真技術、表現で撮っていらっしゃいました。ライティングの技術、特殊な水を吸い上げさせて光に反応させる撮影テクニック、コンセプトと表現力が非常にマッチして充実していた作品だと思い、選ばせていただきました。

御苗場プロデューサーテラウチマサトより総評

まずは選ばれた皆さんおめでとうございます。
そして、今日ここに来ていただいた方、オンラインで繋がっていただいた方、参加してくださった方に感謝を申し上げます。
写真が大好きな皆さんに、そして自分たちに向けて、エールになればいいなと思って喋らせていただきます。

今回の御苗場は本当に楽しかったです。
撮ってこられた方の楽しさが伝わり、見ている気持ちの良さが伝わり、
普段何気なく見ているもの、もしかするとチェックさえしていなかったものを、皆さんがしっかりと見て取り上げてこられたこと、
そしてそれを見た瞬間、「そうだよね、確かに」と思えることが、写真の楽しさだと思います。
僕は写真というのは、「クエスチョン」「問いかけ」であるべきじゃないかなと思っています。
今回の御苗場では、みんなが良いと言うものだけでなくて、ご自身が面白いと思っているものをしっかり表現されていたことが、大変心に残りました。

そしてもっと言えば、一見マイナスだと思っていたことをプラスにされていたこと。
表現というものの力、役割とはなんだろうと考えたときに、マイナスをプラスにすることだなと感じました。
そこで、僕の今回の基準は、今までマイナスだと思っていたことをプラスにしてくれた表現を評価したいなと思いました。

「みんなそう思っているけど、こうじゃない?」という問いかけが、僕にとってすごくエールになりましたし、皆さんの写真を見ていて楽しかった理由です。
アートって何かな、表現って何かなと考えたとき、僕はこの御苗場をきっかけに、「マイナスのものをプラスにする力」だと感じました。
皆さんがそれを教えてくれた、素晴らしい作品の写真展だったと思います。

御苗場に関して言えば、続けていかないといけないなと思いますし、続けていくことの大変さも感じています。
みんなで力を合わせることによって、ポストコロナ、コロナの中での新しい写真展示の形を模索していきたいなと思います。
いろんなことをやっているので笑われることもありますが、笑うことは簡単、やることのほうが大変だと思っています。

いくつか新しい試みをしました。その中で、スライドショーのコーナーに立ったとき、僕は都合3時間くらい椅子に座ってじーっと見ていましたが、
海外の例えばNYのMoMAとかの美術館にいるような気持ちになったことが新鮮でした。
新しい写真展の形はスライドショーの中にもあるんじゃないかなと思いました。
それから、オークション。今回たくさんの応募をいただき、東日本大震災への寄付と作家支援ということで、皆さんのおかげで形にできました。
オークション作品の展示を見ていて、写真もいいし額装もいいなと思ったのですが、
作品を撮った人とそれを見る人との対話がオークションというものじゃないかなと感じました。
なかなか写真作品に値段をつけるのはどうかなという意見もあることは承知の上なんですが、この作品いいな、このくらいの支持をしたいというリアルな
対話をしていたんじゃないかなと感じ、これから日本における写真のオークションというものを拡げていきたいなと思いました。

本当に皆さんのおかげです。感謝申し上げます。
続けていくことの大変さと、続けていくことの喜びというものがあるのですが、これは自分へのエールと思って最後締めの挨拶とさせていただきます。
僕は生まれてきたからには役割があると思っていて、それは多分どんな人にも役割があって、その役割に気づけたら幸せだろうと思うし励みにもなります。
その中で、御苗場の役割とは何なのか、もう一回しっかり認識し直し、そして皆さんの作品や来場者の皆さんから教えていただいたいろんな気づき、
それを活かして御苗場の本当の役割というのをこれからも追求していきたいと思います。
そのことを気づかせていただいた28回目の御苗場でした。
皆さんに感謝するとともに、皆さんと想いを共有したい、気持ちをひとつにしたいと思いました。本当にありがとうございました。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和