関西御苗場2017 受賞作品③ レビュアー賞
テラウチマサト 選 (写真家・御苗場総合プロデューサー)
マリコ
「かつて / ここに / ある」
私が見ていた、その時が、写真として「ここに」「あり」ます。その「かつて」は、たった10〜30秒の間にこんなにも自由に呼吸をし、写真の中ではその「かつて」が永遠にループします。現実で体感する時間の流れと、写真に感じる時間の流れはもはや別物で、それゆえに、どこが始点でどこが終着点か、何人と何匹か、意識と無意識、寝てか覚めてか、夢か現か、本物か偽物か、だんだんとわからなくなってきます。写真は時間を写すことが可能だけれど、それは写真として1枚になった時点でその写真独特の時間の流れで幻のような感覚を生み出すのかもしれません。でも確かに言えることは、私の感じた「かつて」の時間が今「ここに」「ある」ということなのです。
■question
――この作品で伝えたいことは何ですか?
私たちのすぐそばで、こんな世界が流れているという感覚。
――撮影のきっかけを教えてください。
インドに行く機会があり、私はスナップが苦手なので、それなら三脚を据えて自然を撮ってみようと思ったからです。
――作品を作る上で苦労したことはありますか?
カメラのセンサーゴミがすごいことになりました。
――今後目指していることなどあれば教えてください。
よりたくさんの人に、自分の撮った写真を見てもらいたいです。
選考理由:
「かつて/ここに/ある」という哲学的であり、考えさせられてしまうタイトルのもと、スローシャッターで撮ったインドの風景写真が3点、「御苗場」会場で目に飛び込んできた。写真とは一瞬を切りとるものであるが、この作品を観たときに感じたことは“インドに流れている永久(とわ)の時間”が写し撮られていることだった。そこに驚き好感を持った。アングルやシャッタースピードの選定など写真技術としての稚拙さは感じたが、黄みがかったプリントの味わいや困難さを伴ったであろう。(牛の写真など)撮影対象の被写体にもカメラを向けているチャレンジさも素晴らしいと感じた。
1993年広島県生まれ。日本写真映像専門学校卒。大学3回生の時、同じ大学の友人が一眼レフで写真を撮っていて楽しそうだと思ったのがきっかけでカメラを購入。現在はフリーターとして、誇張するでもなく、格好つけるわけでもなく、変に悲観的になるでもなく、ありのままの自分で写真と向き合う時を楽しんでいる。