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夏の楽しみがまたひとつ! 長野県御代田町×アマナが手がける浅間国際フォトフェスティバルがスタート

Event, 写真展情報


東川町国際写真フェスティバルや、KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭、また新しいものではT3 PHOTO FESTIVAL TOKYOがあるものの、全国各地で開催されているアートフェスティバルに比べれば、まだまだ少ない日本のフォトフェスティバル

そんななか、8月11日(土)~9月30日(日)まで長野県の御代田町にて、「浅間国際フォトフェスティバル」の第1回が開催されることに!

エキシビションのコンテンツなどを担当するのは、広告写真を手掛け、アートフォト専門誌「IMA」の発行やアートフォトのプロジェクトを行うアマナ。展示作家は、IMA GALLERY所属の若手作家から、世界的に著名な写真家まで、幅広いラインナップです。

「御代田プロジェクト」マネジメントのアマナの速水桃子さんと、「IMA」エディトリアルディレクターであり、フォトフェスティバルのエキシビションディレクターを務める太田睦子さんに、フェスティバル開催のきっかけや、見どころをお伺いしました。

なぜ御代田でフォトフェスティバルを?

――御代田町がどんな町か、教えていただけますか?

速水 御代田町は、軽井沢と小諸の間にある、自然にあふれた人口15,000人ほどの小さな町です。かつてシチズン時計の工場があり、「ミヨタムーブメント」というパーツが有名なので、時計好きの方はもしかしたらご存知かもしれませんね。
6月カリン通りから見た浅間山  撮影:小山一成

――なぜこの町でフォトフェスティバルを?

速水 御代田町にある旧メルシャン軽井沢美術館をアマナが将来的に写真美術館にしようと計画している中で、御代田町と共同でフォトフェスティバルを開催することになりました。多くの方に写真を楽しんでいただける場として、さらに、多くの人に御代田町に訪れてもらう機会になればと考えています。
旧メルシャン軽井沢美術館跡地

太田 アマナは広告写真を中心としたビジュアルコミュニケーションの会社ですが、8年前ほどからアート写真に取り組んでまいりました。カメラやレンズの企業のほとんどが日本にあり、世界の写真業界に貢献してきた歴史がありますが、写真を撮る人はすごく多くても、アーティストの写真作品を見るという文化がなかなか根付いていません。

写真を撮ったら見せる場所があり、見る人がいて買う人がいる、という循環をつくりたいという思いでプラチナプリントの工房アマナサルトをつくり、森山大道さんや杉本博司さんなど世界のトップ写真家の作品を制作して販売する取り組みを行ったり、若手を中心にアマナフォトコレクションをはじめて収蔵作品は今年で800点くらいとなりました。日本の戦後写真を俯瞰できるようなコレクションにしていこうと、いまも継続しているところです。

2012年にはメディアプロジェクトとして『IMA』がスタートして、雑誌、ウェブ、ギャラリー運営、写真集や作品販売など、アート写真を見ていただく楽しみの接点をつくる試みを行ってきましたが、今回はその活動におけるさらに大型の新しい展開となります。

世界のフォトフェスティバルは約200も!

太田 瀬戸内国際芸術祭や、新潟の越後妻有で開催されている大地の芸術祭など、日本ではアートフェスティバルが増えていますが、フォトフェスティバルというとまだ数は多くありません。一方で、海外のフォトフェスティバルは、大小あわせて約200以上もあると言われています。屋外展示が多く、自然の中を散策しながら展示を見て、風景が変わっていく中で写真鑑賞を体験できるような、非日常の空間を創出するものが多いんです。

フランスのラ・ガシイという小さな村で開かれているフェスティバルは4カ月間ほど展示が続くのですが、人口2000人の町に約40万人の人が訪れるんです。本当に本当に小さな村で、緑がいっぱいなんですけど、林の中を散策しながら写真を発見し、出会っていくような体験ができるんです。

フランスのラ・ガシイで毎年開催されている「LA GACILLY PHOTO」

スイスのヴヴェイで開催されているヴィエンナーレ「Images Vevey」

太田 お客さんも、家族や友人同士、カップルなどさまざま。浅間国際フォトフェスティバルも、ふだん美術館やギャラリーを訪れる方々とはまたちがった幅広い層に、楽しんでいただけるような場をつくっていこう、と考えています。

今年のテーマは、「Return to Camera(写真に帰れ)」。カメラ大国・日本らしいテーマで、古典技法から、最新の技術を駆使したARやVRなどの作品まで、あらゆる写真表現に触れていただける場にしたいと考えています。

――会場はどのくらいの広さですか?

太田 敷地は5300坪ほどあります。4棟の建物の中と屋外の展示があり、展示方法もいろんな形を考えています。今年はまだプレイベントの位置づけなので美術館の敷地内だけの展示なのですが、将来的には、町中にも飛び出していけたらと考えています。

初期段階の会場の模型

――模型を眺めるだけで楽しそうな雰囲気が伝わってきますね!

太田 屋外の展示は、巨大なプリントがあったり、支持体になるものが様々な形やだったりするのですが、今回は体験型、参加型―というのもひとつの目玉にしていて、フェスティバルという名前にふさわしいように、楽しんでいただくということを入口にしています。たとえば、広場には、4メートル近いネコが写真を撮ってくれるオブジェもあるんですよ。

鈴木理策さんの作品は、ターポリンのような生地にプリントをして、その下で休めるようなタープ(テント)をつくる予定です。建物の2階から見おろすと、写真を見ていただくことができます。

ヴェネチアで活動している小池健輔さんは、ふだん古いポストカードを切り抜いて小さな立体作品を制作している作家ですが、今回はそれを大きくして、80cmくらいの鉄板にプリントを貼ってくり抜いたオブジェを空間にたくさん展示します。

ギャラリーや美術館はホワイトキューブの空間でオリジナルプリントを静かに見るという環境ですが、今回のフェスティバルでは、ホットドック片手に家族や友達などでワイワイ楽しみながら、写真が見られるような場にしたいと考えています。

豪華ラインナップを、見たことのない展示方法で

――作家は31名参加、200点以上が展示されるとか。若手から大御所まで、幅広いラインナップですね。

太田 はい。ユニークなところでは、谷尻誠さん、元木大輔さんという建築家のお2人に参加していただいています。写真はいろんなジャンルと繋がれるメディアだと思うのですが、建築と写真が組み合わさったらどんな表現ができるのかなど、さまざまなジャンルと写真家がコラボしながらの展開も考えています。

うつゆみこさんは御代田の特産物のレタスで新たに制作していただいた作品を、顔はめパネルとして展示予定です。
©うつゆみこ,家族,2018

©Charlotte Dumas,Nanae,2016

©Roger Ballen,The Theatre of Apparitions,2016

©水谷吉法,HDR_nature,2016-2018

©清水はるみ,Open Fruit is God,2014-2018

©川内倫子,Let’s sing a song our bodies know,2015-2018

――さらに、アマナグループ所属のフォトグラファー、小山一成さんが昨年1年かけて記録した、御代田町の四季折々の景色の写真も展示されます。

撮影:小山一成

速水 メイン展示はアートフォトファンの方にとって満足のいく展示になると思うのですが、やはり太田も言うように、カップルや友人同士、ご家族、おひとりでも、みんなに開かれたフェスティバルにしたい。それを実現するために、関連するいろんなイベントやフードトラックなどを用意しています。軽井沢に本社をもつ、ヤッホーブルーイングのクラフトビールをビールサーバーから提供したり、IMA Cafeなどもやってきます。

また、『顔たち、ところどころ』という映画がこの秋日本で公開されますが、その試写会を近隣のエコールみよたで開催します。この映画は女性映画監督のアニエス・ヴェルダとアーティストのジェイ・アールがフランスの小さな村々を旅しながら、村の人と一緒に作品をつくって残していくお話。

フォトフェスの会場には、セルフィーでポートレイトが撮影できてポスター印刷できるトラックもやってくるのですが、そこで撮影された写真は会場の壁面に貼られて新しい作品がつくられていくんです。まるで映画の中のような体験が御代田でできるんですよ。

「顔たち、ところどころ」配給:アップリンク

速水 写真が媒体となって、新しい体験をしていただく、また複合的な仕掛けで皆さんに楽しんでいただけるようなイベントにしたいと考えています。

とにかく、御代田は軽井沢より湿度が低くて過ごしやすい。最高の気候をお約束します! 夏の避暑に、ぜひ多くの方に来ていただきたいですね。

見どころたくさん! の浅間国際フォトフェスティバルの会場までは、東京から電車で2時間ほど。写真を撮りがてら、みんなで世界的アーティストの写真を見に行く。写真ファンの楽しみが今年からまたひとつ増えそうです。

■浅間国際フォトフェスティバル

参加作家:アニエス・ヴェルダ+ジェイ・アール、うつゆみこ、ダミアン・プーラン、鈴木理策、マッシモ・ヴィットーリ×谷尻誠(建築家)、水谷吉法、清水はるみ、藤原聡志、小池健輔、ホンマタカシ、小林健太、小山泰介、石橋英之、ジェシカ・イートン、ルーカス・ブレイロック、チャーリー・エングマン、金村修、ルーク・ステファンソン×元木大輔(建築家)、伊丹豪、エド・ファン・デア・エルスケン、川内倫子、鷹野隆大、横田大輔、シャーロット・デュマ、森山大道、チャド・ムーア、モーテン・ラング×元木大輔(建築家)、ロジャー・バレン

住所:長野県北佐久郡御代田町馬瀬口1974‐1(旧メルシャン軽井沢美術館)

アクセス:東京駅より北陸新幹線「軽井沢駅」にて、しなの鉄道に乗り換え。しなの鉄道「御代田駅」下車、会場まで徒歩10分。

入場:無料

詳しくは浅間国際フォトフェスティバル公式Webサイトにて

■ワークショップ(一部)

「星空写真教室 ~浅間の夏空を写そう~」
日時:8月11日(土)17:30~20:40
参加費:2,500円
定員:30名

「うつゆみこの不思議なアート写真創作教室」
日時:8月18日(土)10:30~12:30
参加費:2,000円
定員:20名

■トークイベント(一部)
川内倫子「写真、インスタレーション、映像から紡がれる視覚体験」
日時:8月26日(日)15:00~
参加費:1,500円
定員:50名

鈴木理策「視覚と時間ーー写真で何を写すか」
日時:9月8日(土)15:00~
参加費:1,500円
定員:50名

■申し込み
浅間国際フォトフェスティバル実行委員会
住所:〒389‐0292 長野県北佐久郡御代田町大学馬瀬口1794‐6
TEL:0267‐32‐3112(御代田町 企画財政課 地域振興係 平日8:30~17:00)
E-mail:info@asamaphotofes.jp

■同時開催
「顔たち、ところどころ」特別試写会
日時:8月18日(土)、8月19日(日)14:00~
参加費:無料
会場:あつもりホール(エコールみよた内)
定員:50名

メイン会場近隣にあるエコールみよた内のあつもりホールでは、この秋日本で公開される「顔たち、ところどころ」の特別試写会を開催。本映画は、フランス人アーティストJR(ジェイアール)と、2015年にカンヌ国際映画祭で史上6人目となるパルムドール名誉賞を受賞した女性映画監督アニエス・ヴェルダがフランスの田舎を旅しながら、村の人たちと作品を一緒につくるロード・ムービー。

特別試写に合わせて、JRのポートレイト撮影用のフォトブースと、ポスターを印刷するプリンターを装備したトラックが8月11日(土)~19日(日)に期間限定でフェス会場に登場。ここで撮影したポートレイトが会場の外壁に展示されます。来場者もフェスティバルの展示作品の一部になれる!

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