「写真の構図」を読み解く 1/2
アーヴィング・ペンの名作に大和田良が挑む


魅力的な写真には、隠れた構図の秘密がある。その秘密を読み解くには、写真をじっくり見るだけでなく、「模写」という手段があります。撮影をしながら、名作の構図に隠されたテクニックを発見できるかもしれません。
今回はアーヴィング・ペンの「After Dinner Games, New York, 1947」に写真家・大和田良さんが挑戦!撮影の様子と作品をご紹介します。

Irving Penn/アーヴィング・ペン
1917年アメリカのニュージャージー生まれ。グラフィック・アーティストを経て、1943年より「ヴォーグ」誌で活動する。ファッション、ファッション・ポートレイト、静物写真などさまざまな被写体を手掛けた。20世紀後半を代表する写真家のひとり。

アーヴィング・ペン 写真集「Still Life」より「After Dinner Games, New York, 1947」

「After Dinner Games」と名付けられたこの作品は、さまざまなゲームのコマやチップが配置された遊び心にあふれた作品です。一見無造作に置かれたようにも見える小物類ですが、よく見ると絶妙なバランスを保っていることがわかります。ペンはどんなふうに撮影したのでしょうか?――早速、大和田さんの撮影の様子を見ていきましょう。

[1]2・8・16 ...?こんなサイコロ見たことない!と調べるとバックギャモンと判明。チェスにポーカー、チェッカー、オセロと様々なゲームのツールが登場。

[2]撮影風景。大和田さんの自宅の窓際のテーブル。午前中の光がだんだん伸びてきて、11時半をすぎるとタイムリミット。時間との戦いでもあります。

まずは窓際のテーブルに白いバック紙を敷き、奥の壁には大きなレフ板をたてます。最初に場をつくるため、白い紙の上をお香の灰を塗ってお手本作品のテーブルのようなニュアンスを出していきました。小物の設置はサイズの大きなものから。さらに作品の奥行き感を決定していきます。

[3]テーブルを演出するため、お香の灰で白のバ ック紙にニュアンスをつけたあと、コーヒーを浸し たティッシュで細かくしみをつくります。

[4]トランプやサイコロは練り消しで固定。正面からだと見えませんが、横から見るとこうなっています。おそらくペンもこうしていた?

場の広さがどのくらい必要か、また奥行きがどれくらいかを掴むのは、なかなか難しそう。しかしいちばん大和田さんが悩んだのは、さまざまな小物が入り組む構図でした。

[5]たくさん使われている小物の微調整。ニコンD800Eを三脚に立ててモニターのグリッドを見ながら厳密に。

[6]写真集で作品と見比べながら調整。ほんのちょっとの位置や方向ちがいで、作品の印象はガラッと変わります。

「全く同じアイテムを集めることは難しく、モノの大きさひとつひとつが違うので、厳密に同じ構図で撮影することは不可能。でも、どういう風に構図が成り立っているのか、どうしたらまとまるのかを考えて調整していきました。
当初はペンのように4×5など大きいフォーマットのカメラで撮影しようと思いましたが、微調整が命なので、ライブビューがないと難しい。ニコンのD800Eに持ち替え、グリッドを見ながら撮影しました。ファインダーだけで調整するのはキツいですね。
雑然としているけど均整の取れたプロポーション。そのまとまり感を崩さないように心がけて撮りました」(大和田さん)

試行錯誤の上、出来上がった模写作品はこちら!

photo:Ryo Ohwada

ペンの作品と並べてみると...

(左)photo:Ryo Ohwada , (右)アーヴィング・ペン 写真集「Still Life」より「After Dinner Games, New York, 1947」

いかがでしょうか?
大和田さんも言うように、全く同じアイテムを集めることは困難なので、完全再現は難しい...ですが、厳密に調整された小物の配置やアングル、コーヒーでつけたしみなどが雰囲気を出して、見事に模写されていますね。

OTHER CUTも公開!

小物違い

アングル&小物のディティール違い

光の強さの違い

魅力的な作品に隠された構図の秘密やテクニック、光の捉え方など...名作の模写から学ぶことは多いはず。
今回はアーヴィング・ペンのスティルライフの作品からお手本作品をセレクト。小物の準備などは必要ですが、屋内でじっくり撮影できるジャンルでもあるので、模写のはじめの一歩として挑戦してみるのはいかがですか?
写真家・大和田良
1978年宮城県仙台市生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科修了。 2005年、スイス・エリゼ美術館 「reGeneration.50 Photographers of Tomorrow」展に選出され以降、国内外で作品を発表。2007年、初の写真集『prism』を青幻舎より刊行。フォトエッセイ集「ノーツ オン フォトグラフィー』(リブロアルテ)、写真集『FORM』(深水社)など著書多数。東京工芸大学芸術学部写真学科非常勤講師。
名作の模写に挑戦したくなったら!PHaT PHOTO写真教室「文化祭 2018」をチェック!
5/23~6/3で開催する文化祭の展示テーマは「Reference (参照する)」。お気に入りの写真を真似てみたり、オマージュ作品を作ってみたり...「完コピ&参照作品」をテーマにした「PHaT PHOTO」写真教室生徒の作品展が開催されます。応募は教室生徒限定ですが、会期中はイベントも多数開催予定なので、ぜひ足をお運びください!<PHaT PHOTO写真教室 文化祭2018 詳細はこちら

名作構図の秘密をもっと知りたい!と思った方へ

今回の記事は「PHaT PHOTO 78号」の特集「巨匠から学ぶ構図学」の一部をご紹介したものです。
プレミアム読者になると「読み放題」のなかの1冊、PHaT PHOTO 78号では、「良い構図、魅力的な構図って?そもそも構図って何だ?」という疑問を解消する構図論のお話や「植田正治×ロベール・ドアノーの構図 徹底解説」などをご覧いただけます。
作品もたくさん掲載していますので、名作構図の秘密をもっと知りたい!という方は、ぜひプレミアム読者になって、バックナンバーをご覧ください。