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HOW TO / 作品制作のヒント

【NiSi Filters Japan × みんなのポートレイト展】 「Allure Soft」「ブラックミスト」2種のフィルターを使い分け、 あなたの写真表現の幅を広げる実践講座・レポート


「みんなのポートレート展」(みんポー)はポートレート写真というジャンルに特化することでその文化を広げ、新しい価値を参加者とともに作り出し、発信していくことを目的に2018年に始まりました。

 4回目となる今回も写真展、トークショーに加えてワークショップを開催。

 テーマは「フィルターを使ってポートレート表現の幅を広げる」こと。NiSiフィルターの協力のもと、その独特な描画の空気感からポートレート愛好家の間で密かな話題となっているソフトフィルター、Allure SoftとBlack Mistを使って実際に撮り比べてみることで、ポートレート写真の面白さを体感するための実践型ワークショップです。
 この記事では、プロカメラマンの清水純一さんを講師に迎えたワークショップの様子を、写真とともにレポートします。


講師プロフィール

 
清水純一(しみず・じゅんいち)

1978年東京生まれ。日本映画学校卒業。フォトグファーのアシスタントを経て大手テーマパークのコマーシャルフォト部門に所属。テーマパーク、商業施設、ホテル等の広告を中心に撮影。フリーランスとして独立後、広告、雑誌を中心に幅広く活動中。

https://www.junichishimizu.com/

 


製品紹介

●使用するフィルター

①NiSi Allure Soft 
フィルター径:67mm、72mm、77mm、82mm
価格:6,380円~7,810円(税込)

製品紹介は こちら 


②NiSi Black Mist
フィルター濃度:1/2、1/4、1/8
フィルター径:67mm、72mm、77mm、82mm
価格:6,600円~10,230円(税込)

製品紹介は こちら 

 

目次

1:Allure Soft、Black Mist〜それぞれのフィルターの特徴を知る
2:2つのセットでフィルターの個性を活かした写真を撮る
3:参加者の作品・フィルターを使用した感想
4:フィルターを使うメリットを清水先生に訊いてみた
5 :おわりに

 

Allure SoftとBlack Mist~それぞれのフィルターの特徴を知る

ワークショップの開始。スケジュールの説明を経て、まずは座学から。清水純一先生にAllure Soft、Black Mistそれぞれのフィルターの特徴について教えていただきました。


清水:Allure Softの特徴は2つあります。1つはシャープネスとコントラストをやわらげながらも被写体のピント面はクリアに写ること。もう1つはグロー効果です。

Allure Softはソフトフィルターの一種ですが、従来のソフトフィルターでは画面全体に光が拡散するために全面がぼやけたような画になってしまい、どこにピントが合っているのかわからないような写真になりがちです。
一方で、Allure Softの場合はピントが来ている所は細部までしっかりと立ち上がり、その周囲からフワッとしたやわらかい描画になるので、たとえばモデルさんを撮るような場合に適していると思います。

グロー効果の「グロー」とは「輝き」「よい色つや」を意味するのですが、Allure Softは光の拡散によって光源の周辺に生じるハレーションをアクセントに加えることで光を強調することができます。一般のソフトフィルターの場合は全体に光が回るために、光そのものをきわ立たせることが難しいのですが、Allure Softではこの特徴を活かして、光を主役にした絵作りをすることができるのです。

清水:Black MistはAllure Softと同様のソフト系フィルターですが、高い解像感を保ちつつコントラストやシャープネスを控えめに描写してくれるため、映画やオールドレンズで撮影したような雰囲気の写真を撮ることができます。先ほど説明したように、従来のソフトフィルターでは光が写真が全体的に白っぽくなりがちです。一方で、Black Mistはハイライトを抑えてシャドウ部分を持ち上げることでバランスのいい明暗さの写真に仕上げてくれます。
Allure SoftとBlack Mistを比べると、Allure Softは光源の強さに応じてその効果にかなりの変化があることが特徴です。ライトの光った輝度部だけに効果が現れ、ハレーションのおよばないシャドウ部は黒の締まった印象になります。
逆に、Black Mistはコントラストが全体的に抑えられたソフトな画質になります。コントラストが抑えられることによって全体の色調は多少レトロ調に変化。加えて、シャドウ部が持ち上がることでハイライトも抑えられます。

 

2つのセットでフィルターの個性を活かした写真を撮る

レクチャーで、Allure SoftとBlack Mistの特徴を把握したうえで、それぞれのフィルターを使っての撮り比べに。
  今回はPhaT PHOTO写真教室のスタジオ内に2種類のセッティングを用意。それぞれのフィルターの個性を活かしたポートレートを実際に撮影していきます。参加者の撮影の前に、清水先生の作例を教材に、セッティングの意図、撮影の目的を理解します。

スタジオセッティング①:自然光のようなストロボ光を作る


セットの中央にモデルを配置。白レフで周囲を囲い、右斜め後ろからストロボ光を当てる。傘やディフューザーを使わずに直接射光する。


清水:デジタルカメラでストロボライティングをするとかなりシャープな画になってしまい、やわらかい描写を作るのに苦労します。そこで、Allure Softを使って、あたかも自然光で撮ったような光を演出してみましょう。

左:フィルターなし  /  右:Allure Soft使用

清水:モデルさんの後方の右上から光を当てているのですが、フィルターありとなしの場合で光の当たった部分の印象が変わりますね。フィルターなしのほうは夏の光が直接当たっているような硬い感じに、Allure Softを使った場合は光の当たった部分から拡散するために春や秋のやわらかい光のようなフワッとしたイメージになっています。

 

スタジオセッティング②:ランプの光を活かしてレトロ調を演出する


モデルの左横にランプを配置し、その左後ろにストロボを設置して壁側に射光する。

清水:コントラストを抑えながらシャドウ部を持ち上げて黒を締める、というBlack Mistの一番の特徴を活かすためのセッティングです。

フィルターなし

Black Mist(1/4)を使用

清水:フィルターなしの場合はランプそのものがはっきり写って目立ってしまうのですが、Black Mistを付けると光がフワッとしていい雰囲気を醸し出してくれます。フィルターのソフト効果によってモデルさんの肌のトーンが柔らかくなり、艶っぽく写るようになります。まずはランプの光のみで、その後にストロボ光を加えて撮影してみようと思います。

セッティングの内容とその意図の説明を受けたのちに、いよいよ参加者の撮影タイム。まずは清水先生が撮影したお手本となる写真を参加者全員でチェックします。

清水:フィルターを付けた場合と付けない場合では写真が変わるでしょう? Allure Softを付けたものは自然光で撮ったようになっていますね。Black Mistの場合は1/2から1/8まで数値が大きいほど強く効果が現れます。今回は1/4を使っていますから、ちょうど中間くらい。全体はソフトになるけれど、ピントの合った部分はくっきりと立ち上がっていますね。フィルターの効果をさりげなく感じられることが今回の撮影に1/4を選んだ理由です。それでは実際に撮影してみましょう。

 

参加者のみなさんは、最初は清水先生のお手本を参考に撮り始めたものの、次第に前へ後ろへ、上から下からと撮影位置や角度を変えて、それぞれのベストカットを模索しながらシャッターを切り始めました。

参加者の作品発表・フィルターを使用した感想

座学を含めておよそ2時間のワークショップで、参加者のみなさんが撮影した写真がこちら。どれも、それぞれのフィルターの効果を活かした作品になっているのではないでしょうか?

Allure Soft

・S.Mさん

左:フィルターなし  /  右:Allure Soft使用

「自然光みたいにやわらかい光になるところが気に入りました」


●Black Mist

・H.Nさん

「なにげないスナップにもニュアンスを与えてくれますね」


・A.Hさん

「しっかりと暗部が残るところがいいと思いました」

 

フィルターを使うメリットを清水先生に訊いてみた

ワークショップの終了後、フィルターを使った作品制作について清水先生に質問をしてみました。

−デジタル写真の場合、レタッチソフトを使うことでフィルターと同様のエフェクトをかけることは可能だと思うのですが、あえて光学フィルターを使うメリットはどこにあるのでしょうか?

清水:撮影後にレタッチソフトで肌のトーンを多少やわらかくしたりすることは可能です。でも、撮影時の光の入りかた、拡散の状態を変えることはできません。パソコン上で処理する場合と光学フィルターを使う場合では写真の雰囲気が変わってしまう。それが絶対的な違いです。それと、自分の好きな調子にコントロール可能なフィルターをあらかじめ使うことで、レタッチなど撮影後の処理の効率をアップすることができることもメリットと言えます。

−なるほど。考えてみれば、レンズにおけるメーカーや型番ごとの違いと同じなのかも。たとえば同じ50mmレンズでもキヤノン製品とニコン製品では撮った写真の雰囲気が異なります。

清水:そうですね。フィルムカメラで撮影する場合でもフィルムの種類を変えれば撮影した写真の空気感は変わりますよね。それと同じです。

−今回は屋内のスタジオを使った撮影でしたが、ほかにAllure SoftとBlack Mistそれぞれの特徴を活かして撮影するならどのようなシーン、シチュエーションがおもしろいと思いますか?

清水:どちらも逆光での撮影が効果が現れやすいので、屋外で使ってみるとおもしろいと思います。特に、Allure Softの特徴は自然光で撮影したような写真が撮れることなので、曇りのような光が少ない状況でストロボを使って逆光のような状況を作って撮影してみたいと思っています。

−デジタルカメラが主流になるいっぽうでアナログカメラとカラーネガで撮った写真が人気です。解像感が高く高精細ゆえにパキッとした硬い印象のイメージになりがちな最新型のレンズとAllure SoftやBlack Mistのようなフィルターの組み合わせは、フィルム写真派のユーザーにもフィットするような気がします。

清水:従来のソフトフィルターを使うと全体的にフワッとした写真になってしまいますが、Allure SoftやBlack Mistはソフトフィルターとしてのやわらかな描写特性を持ちつつも、ピント面のコントラストはしっかりと残り、被写体がキリッと立ち上がります。さながら、高性能な最新型レンズの冴えた描画とやわらかく味わいのあるフィルム写真のいいとこ取りをしているようですよね。

 

おわりに

 Allure SoftとBlack Mist、2種類のソフトフィルターを使ったワークショップのレポート、いかがだったでしょうか? 参加者のみなさんそれぞれにフィルターワークの効果や楽しさを感じていただけたと思います。

 最高の1カットを追い求めるなかで、フォトグラファーは撮影方法、機材の選択など、さまざまなトライを繰り返していきます。もし、この記事を読んで制作のヒント、新たな作品が生まれる予兆を感じることができた方は一度、これらのフィルターを使ってみてはいかがでしょうか?

 

今回使用したフィルター

①NiSi Allure Soft

Allure Soft

 

②NiSi Black Mist

ブラックミスト

 

 

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