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フォトまち便り「Hello Local」vol.13 紀南フィルム ~本州最南端の清流、古座川の魅力に引き寄せられて~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部による連載企画「Hello Local」。
vol.13は紀南フィルムの事務局を務める岩倉昂史 (いわくら・たかし)さんが寄稿します。京都から、紀南へと移住してきた岩倉さんが見つけた暮らしの風景、まちをつくる人たちの魅力に触れるフォトエッセイです。


紀南フィルムの岩倉です。僕は7年前に和歌山県古座川町に移住してきました。
ここは本州最南端の清流と言われ、紀南の真ん中辺りを流れている古座川を有するまちです。上流、支流、下流と、所々で美しい景色を見せてくれる土地であり、森林の面積が多く紀南で1番人口の少ない秘境の地でもあります。

その地ならではの暮らしや文化、時々によって変わる自然の織りなす風景、それに、人と人との繋がりで生きるようなこのまちに惹かれ移住してきました。

住むまでに調べたり足を運んでいたころの古座川よりも、さらに豊かな時間を過ごせていると今、日々の中で感じています。

家の前の風景


別角度での家の近所の風景

今回は、そんな古座川で僕が出会い、古座川の暮らしを豊かにしてくれている方々をご紹介させて下さい。

古座川のおばあちゃん
田舎料理を提供する「たなみや」という民泊を営む東さん。東さんはこの土地の昔からの暮らしや食のことをよく知っていて、この地域の文化や知恵を共有してくれる偉大な存在です。

畑で育てた野菜や山で摘んできた山菜、ご主人が釣ってきた鮎などを使って、ご飯を作ってくれます。また、お客さんだけでなく、地域の若い人たちにも、七草粥を食べる会やお餅つきなどを企画してくれることもあります。

うちの子どものお食い初めの料理も作って頂きました。子どもや妻のこともとても歓迎して下さり、移住当時から豊かな時間をたくさん頂いています。

東さんが出してくださる料理は、鮎の押し寿司といった、ここで初めて食べるようなものや猪鍋などの地域の食べものなど、魅力的なものばかりです。この方に会えば古座川、日本の原風景を体感できます。この体験はこれからの社会を生きる上でも、大切にしておきたい何かを伝えてくれている気がします。

本物の味を教えてくれる古座川

僕はブルーベリーと言えば、ブルーベリー風味のお菓子や、冷凍のブルーベリーの味しか記憶になかったのですが、古座川にきてからその本当の美味しさを知りました。坂本さんご夫婦がつくるブルーベリーは、まるまると大きく、みずみずしい実。農薬を使わずに手間ひまかけて栽培しており、収穫した実から作るジャムも、原材料にこだわって丁寧に作られています。

収穫の時期になると地域の保育園と小学校の子どもたちが農園に遊びに来ます

ブルーベリーの傍ら、金柑のジャム作りやお茶摘み、自分たちが食べる分の野菜も畑でつくり、自然と共に生きている暮らしを見せてくれます。写真が好きな旦那さんとは、古座川や紀南の撮影スポットでばったり会うこともありました。

神、人間、の迫力を感じる古座川

獅子舞に携わる方々、みなさんに良くして頂き、前夜祭への参加や当日の撮影等をさせてもらっています。古座川では集落で受け継がれてきた獅子舞や笛、太鼓にはそれぞれの特徴があります。今回紹介させてもらうのは、僕が暮らす三尾川地域の獅子舞、古座川下流の高池下部です。

三尾川の八幡神社の敷地内で、高々とまっすぐのびる杉の木からの木漏れ日が、拝殿の前のスペースを照らしています。その光の中で舞う獅子舞は神様が乗り移ったかのような舞を見せてくれました。

高池下部では、獅子舞を回しながら夜の町を練り歩き、古座川の辺りまでくると、船に乗り換え、火薬を炊きながら船を漕ぎます。カメラを持ったまま船に乗せてもらったことがあるのですが、その迫力は言葉では言い難いほど。「生きる」「祭り」「男」「力」「陽気」の5つのワードで脳みそを殴られたような体験でした。カメラを水の中に落としてしまう覚悟がいることは船に乗ってから知りました。あの心臓がドキドキ、ワクワクする感じの緊張感と高揚感は、昨日のことのように思い出せます。

古座川を愛する男

古座川の名所一枚岩。約1500万年前~1400万年前に「古座川弧状岩脈」の流紋岩質火砕岩で出来たらしいです。超簡単にいうとマグマがあふれて固まった岩になります。

この絶景の前にある道の駅は、紀南フィルムメンバーの1人、田堀さんが運営しています。店内の席から眺める一枚岩は地球の力強さを感じさせてくれます。田堀さんは古座川をもっといい町にしたい、元気な古座川であってほしい、と一枚岩の道の駅の経営やイベントの企画などをしています。

大地を見上げる映画祭という企画では、一枚岩を巨大スクリーンにして、動画を投影しました。今後は一枚岩の前を流れる古座川でテントサウナやカヌー、SUPなどのアクティビティも行っていくようです。夏はキャンパーであふれる一枚岩、これからもたくさんの人が楽しめる古座川をつくっていってくれるでしょう。

古座川町には他にも紹介したい方々がたくさんいます。それに、ジビエや柚子といった美味しい食材、滝の拝や植魚の滝といった、大好きなスポット。まだまだあります。古座川の豊かさは底しれません。

これを読む皆さんの住む町からは、かなり遠いかもしれない紀南、熊野の地。その中でも秘境の古座川だからこそ、感じるものがあると思います。ぜひ生で見て、体感しに来て下さい。

僕の古座川での暮らしは年を重ねるごとにおもしろさが増していきました。そして繋がりが広がり、いつしか「古座川暮らし」は「紀南の暮らし」という捉え方になっていました。次の機会には「紀南の暮らし」もご紹介させてください。それではまた。

text・photo:岩倉昂史(いわくら たかし)


『あそぶ。わらう。手をつなぐ。ファインダー越しに見つめる。好きな紀南を撮る。私たちのまちが誰かに届きますように。暮らしをキリトル。紀南フィルム。』というコンセプトのもと、和歌山県紀南地域と写真が好きな11名が集ったチーム。地域で暮らし、地域と地域を写真でつなぐことを目指し活動しています。

岩倉昂史 (いわくら・たかし)
株式会社ヒトノハ代表取締役 
クリエイティブディレクター/デザイナー 紀南フィルム事務局
大阪狭山市生まれ、京都市から2015年2月に和歌山県古座川町に移住し結婚、2児の父。古座川のカヌーのインストラクターと出会ったことをきっかけに、町の人たちと繋げて頂き、知り合いのいなかった古座川町に移住。


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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まちスナ日和