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フォトまち便り「Hello Local」vol.12 郡山写真部 ~フォトフェスでの出会いが教えてくれたこと~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が連載する企画。フォトまち便り「Hello Local」vol.12は郡山写真部です。最近の活動で10月22日から3日間、福島県郡山市の温泉街である磐梯熱海駅前周辺で屋外写真展「こおりやま写真部フォトフェス~あったか、ばんだいあたみ!~」を開催しました。多くの来場者の方々との出会った3日間、彼らは何を感じたのでしょうか?「フォトフェスでの出会いが教えてくれたこと」をテーマに部員の坂井さん、小出さんが紹介します。


ふるさとの思い出~書き手 坂井俊之~

初日に来場されたご夫婦。アラフォーの私が、お父さん・お母さんとお呼びする位のお二人とお話する機会があった。

お母さんが、懐かしそうに写真を見ながら、

「これらは全部磐梯熱海?」

「いえ、郡山全域の写真です。東西南北と中央のエリアに分けて並べてます。」

「そうですか、懐かしいなぁ。実はね…」

今は関東にいるけど、お二人とも郡山で育ち、結婚後に郡山を離れたそう。お母さんは、本意ではない引っ越しだったようで、”ふるさとの今”を映す写真に目を向けながら、昔の思い出を話してくれた。

一枚一枚丁寧に写真を見つめるお母さん

「采女(うねめ)祭りってあったんだよ、今もあるの?」

「いつも同窓会をやっていた旅館が火事になってね、ショックだったね…」

など、当時の思い出は、楽しかったり、切なかったり。お母さんがタイムマシンに乗って、私を後ろに乗せてくれているような時間だった。

写真の向こう側にあるもの

「来て良かった。ありがとう」と、熱海の街中へ歩いて行ったご夫婦。

後ろ姿を見ていて、ふと思った。さっきまでお母さんは写真を見ていたけど、見えていたのは写真じゃない。ふるさとで過ごした、あの頃の日々や情景なんだな。自分がこだわりながら撮影した一枚を、「いい写真だね、素敵ですね」と言われたらすごく嬉しい。

だけど、写真を見た人が、特別な思い出を楽しめる一瞬を作れたらそれも嬉しい。

そういえば、昔好んで聞いていた曲を聴くと、当時を懐かしく思い出すことがあるけど、そんな感覚に似てる。

”写真の楽しみ方は人それぞれ”と教えてもらった気がした。

フォトフェスでの出会いが教えてくれたこと。

それは、「写真の向こう側に、その人にしか見えない情景もある」こと。


はじめましてからはじめよう~書き手 小出さおり~

二日目のフォトフェスで来場者の1人に目を引く雰囲気を持つ女性がいた。

フォトフェスでは、はじめての方と話をして新しい出会いがあったらいいなという目標があり、彼女を見つけてから声をかけるのにそう時間はかからなかった。

彼女の名前は『あぼちゃん』。現在大学生だ。一般の部の公募写真に応募し、その写真が掲示されたことがきっかけで来場いただいた。互いのこんにちは!のその先からは以前から知っているような、人懐こい性格という言葉そのままだった彼女。

フォトフェスで展示された、あぼちゃんの作品。藤田川の桜が美しい。

写真からも気になるアボカドのマスコットの名前は『ワカモレさん』。あぼちゃんの大切な癒しで、いつも一緒に出掛けて様々な景色やお店で写真を撮ることが好きだという。

何故アボカドなのかの問いにも、理由はなく”ただ可愛かった”から。持ち歩くものには大概意味があると思っていた私にとって新鮮な答えだ。

カメラを通して、人と出会い、人を知る

「ぬいぐるみは、当たり前のように一緒に暮らしている存在ぬいぐるみを持ち歩いても大丈夫な雰囲気がもっと広がるといいな」

目をキラキラと輝かせ、想いを語る彼女の”今”をおさめられる、カメラは最高である。

勉強に勤しみながらバンドのドラムとしても活動中のあぼちゃん。

「ありがとうございました!楽しかったです!」

充実感あふれる表情も、くるりと返った後ろ姿も、また一際目を引いていた。

フォトフェスでの出会いが教えてくれたこと。

それは、「はじめましての人との出会いは新しい感覚が上書きされる」こと。


達成感と次への期待~書き手 坂井俊之~

フォトフェスが終わり、ここ数ヶ月の記憶が巡る。

地元とはいえ知らなかった磐梯熱海の旅館や人と撮影会を通して接点を持てたこと。どうすれば人柄を感じられる写真を撮れるか試行錯誤したり、来場者が楽しめるよう意見を出し合ったりしたこと。これまで自分が撮影してきた写真から掲載候補を選ぶ時間も特別だった。

ただ写真が好きというだけでは、なかなかできない貴重な経験を仲間と一緒に開催できた達成感が心地いい。

そういえば、今回来場された方から言われた、印象的な言葉があった。

「こんなに良い写真ばかりだとは思わなかった。のれんも斬新で面白いアイディアだ。もっと多くの人に見てもらいたいね。」

見るだけでなく、感じる写真展を目指していたからこそ、面白いと言う言葉が嬉しかった。来場された方がくれた言葉の一つひとつが、Instagramのいいねとはまた違う高揚感を与えてくれる。この感覚は癖になりそうだ。次は郡山写真部でどんなことができるだろうかと、良い意味でのモヤモヤタイムを楽しんでいる。

自然に囲まれたロケーションでマルシェ風に並ぶ120点の写真。

垂れ下がるのれんに映る磐梯熱海の人が、来場者を迎える湯けむり緑地。

磐梯熱海駅から徒歩10秒の足湯エリアで、電車・湧き水・住民の会話など、普段気にも止めない磐梯熱海町の音と写真を浴びる。

来場いただいた参加者がフォトフェスの様子を投稿。嬉しい瞬間だった。

ミッションを達成するともらえるフォトフレーム。組み立てからデコレーションまで、世界で一つだけの作品を作れる場として賑わっていた。

わたしたち郡山写真部の面白さ

最後にもう一つ印象的だった来場者の言葉を紹介したい。

「私達も同じだよ。郡山の風景を撮って写真展をしているんだ。一緒に何か面白いことをしたいね。」

撮影した写真を仲間と一緒に地域の公民館などに展示しているという来場者からの言葉だ。嬉しくてワクワクする言葉だった。関わり合う人が増えれば、面白いことが生まれるかもしれない。

そもそもだけど、郡山写真部の面白さは何だろう。

メンバーそれぞれの答えがありそうだけど、私は「違い」だと思う。

カメラの撮影スキルに自信の無い人から写真展を開催している人まで、中学生から定年退職された方までメンバーは様々だ。撮りたい対象も写真の雰囲気も違う。

でも、その違いを誰も否定することなく楽しんでいる。

そんな写真部に入ってから、私は写真を撮ることに加え、人の写真を見ることも好きになった。

面白い写真を見つけては、何が面白いと感じたのか意識するようになった。

そんな私の作品を展示して、面白いと言ってもらえたフォトフェス。

来場された皆さん、撮影や開催にご協力いただいた磐梯熱海の皆さんに感謝。

フォトフェスでの出会いが教えてくれたこと。

それは、「違いを面白がると、人が集まり、もっと面白いことがしたくなる」こと。

 磐梯熱海に住む方が撮った写真も展示。ソーシャルディスタンス的な配置が今っぽい。

撮影に協力してくれたご本人も来場し、喜んでくれた瞬間。

photo:坂井 俊之、小出さおり、宗形 雅幸


坂井 俊之
1982年千葉県生まれ郡山育ち。2020年から郡山写真部に入部。コロナがきっかけで地元でいかに楽しむかを考えるようになる。ロードバイクに乗って近場でも知らなかった風景を写真に撮るのが趣味。3姉妹の父で、子どもに遊んでもらっている。

たじまさおり
1973年福島県会津若松市出身。2020年から郡山写真部に入部。子育て卒業を機に犬とカメラとミシンと仕事、4本の柱でバランスを保つ日々。様々な機会を見逃さないよう心掛けている。日日是好日なり。

郡山に住む写真好きの仲間が集まり、2018年から活動をしている「郡山写真部」。

郡山のまち、人の魅力を「写真」を通じて見つめ直し、「#郡山写真部」で発信しています。

郡山写真部が取材・記事を書いて作ったデジタルフォトマップ「郡山フォトスポットガイド」コチラ


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