1. HOME
  2. Magazine
  3. フォトまち便り「Hello Local」vol.46 郡山写真部~もし、ソール・ライターが郡山にいたら?視点を変えて見つけたもう一つの景色~
Magazine

フォトまち便り「Hello Local」vol.46 郡山写真部~もし、ソール・ライターが郡山にいたら?視点を変えて見つけたもう一つの景色~


地域写真部が綴っていく連載企画「Hello Local」。今回は郡山写真部のんさんが、郡山市立美術館で開催された企画展「ソールライター×郡山写真部」の内容をお届けします。もし、ソール・ライターが現代にいたら?彼はどこでどんな写真を撮るのでしょう。皆さんだったらどんな写真を撮りますか?


こんにちは。郡山写真部2期生のNon.(のん)です。

みなさんは秋といえば、何を思い浮かべますか?

美味しい食がたくさんの食欲の秋、

気持ちの良い気候の中、体を動かすスポーツの秋、

ゆっくり読書の秋など・・・

みなさんそれぞれにさまざまな秋を思い浮かべます。

私にとって秋といえば、芸術の秋。

紅葉が見頃になり、写真を撮りに行きたくなるのはもちろん、美術館でゆったり芸術鑑賞するのも楽しみです。

そんな芸術の秋に向けて私達郡山写真部は郡山市立美術館とある企画に参加しました。


郡山にソール・ライターがやってきた!

8月末、郡山写真部のSNSグループに郡山市役所の観光課担当の渡辺さんから投稿がありました。

「郡山市立美術館で3年ぶりに写真の展覧会を開催するのにあたり、美術館から『写真部の皆さんと一緒にイベントをしたい!』と提案がありました。」

なんと、郡山市立美術館からのオファー!これには部員も驚き!
郡山市立美術館で9/10~10/23まで開催される「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター展」。

展示鑑賞後、参加者が郡山市内を舞台に「もし、彼が現代の郡山にいたらどんな写真を撮影していたのだろうか?」と想定して郡山市内でソールライター的写真を撮影、美術館内で展示していただくという企画です。

実は既に2年前に私は東京で展示を鑑賞していましたが、今回郡山市立美術館での巡回が決まり、再度ソール・ライターの作品を観れることが嬉しく、何よりも郡山でソール・ライター的写真を撮影ってとてもおもしろそう!と感じ、すぐにこの企画に申し込みました。

爽やかによく晴れた9月の日曜日。
この日、展示鑑賞に招待された郡山写真部。私はとてもワクワクしながら美術館へ向かいました。
郡山市立美術館は郡山駅から車で約15分の緑豊かな丘にあり、今年で開館30周年を迎えます。

参加した部員は約13名。写真家ソール・ライターのことを知っている人もいれば、今回の展示で初めて知る人がおり、楽しみにして参加しました。

今回、郡山市立美術館学芸員の田中有沙子さんに展覧会の紹介、写真の歴史など丁寧に解説していただきました。

この連載の読者の中には、既にソール・ライターについて知っている方もいらっしゃるかと思いますが簡単に紹介します。

1923年アメリカで生まれたソール・ライター。1946年にアーティストを志してニューヨークへ移ります。
はじめは画家を志していましたが、抽象表現主義の画家リチャード・パウセット=ダートと出会い写真を勧められて35mmのライカでモノクロ写真を撮り、1948年には、カラー写真を撮り始めました。
当時、写真作品といえばモノクロと言われカラー写真に注目が少なかったのですが、彼はいち早くカラー写真を撮影し、カラー写真のパイオニアと呼ばれてます。
20年間ファッションカメラマンとして活躍、その後約50年間ニューヨークで移りゆく街や人々の変化をシャッターに収めてました。

さて、ソール・ライターを語る上で写真の歴史は外せません。

今回、学芸員の田中さんから写真の歴史をお聞きしながら郡山市立美術館にある機材を見せていただき学びました。
写真が出始めた頃の銀塩スライドの仕組み、フィルム写真の現像について解説をお聞きしました。
ソールライターはスライド写真、モノクロ写真、カラー写真、晩年はデジタルカメラも愛用して多くの作品を残しました。
普段私たち部員もカメラを常に持ち歩いて撮影していますが、詳しい写真の現像や歴史のお話には興味津々。じっくりと講義を聴きました。

様々な機材を見ながら解説をじっくり聞く部員達

作品を見よう。そしてみんなと話そう。

講義でソール・ライターの生い立ち、写真の歴史や技術について聞いたのち、続いて展示鑑賞へ。

初期のモノクロからカラーの作品、ファッション誌向けに撮影された写真やニューヨークの街並み、彼の家族など身近な人を撮影した作品。

また、壁にはソール・ライターの言葉が綴られています。

©︎Saul Leiter Foundation


ソール・ライターの言葉には撮影をする際の意識や人生観が感じられ「はっ」とさせられました。
「写真はしばしば重要な瞬間を切りとるものとして扱われたりするが、本当は終わることのない世界の小さな断片と思い出なのだ。」
「私はシンプルに世界を見ている。それは、尽きせぬ喜びの源だ。」

作品と共に壁に綴られている言葉がすっと心に入ります。

田中さんの解説を聴きながら作品を鑑賞する部員は真剣な眼差し。彼の沢山の作品をじっくりと鑑賞しました。

講義でコンタクトシートについて聞いたのちに実際にソール・ライターの作品を見て実感する部員。



その後、部員それぞれのお気に入りの作品を選び、実際にその作品の前でどんな点が気になったのか話しました。

「主役となる被写体が手前でボケているのにとても気になる写真」

「作品を見た時とタイトルを見た時の気づきがおもしろい」

「ガラスの写り込みに日々の街並みが感じられる」などさまざまな意見を交わしました。

部員の話を聞きながら頷いたり、視点のおもしろさを感じて改めてソール・ライターの作品のおもしろさを感じました。

お気に入りの作品を前に話す部員達


もしソール・ライターが現代の郡山にいたら・・・?

鑑賞を終えた私達は、展示の余韻に浸りつつ、10月1日から展示されるのに併せて各々ソール・ライターがもし郡山にいたらどんな写真を撮っていたのか考えながら作品作りをしました。

もし今、彼が生きていたらどんなところを撮りに行こうか。

一緒に撮影したら楽しそうだな、どんな話をしながら撮りに行くのだろう、とワクワクしながらカメラを手にして街に繰り出してみました。

日本大学工学部にて(撮影 宗形雅幸)

郡山駅のコンコース(撮影 yama)

郡山中央公民館(撮影 chihiro)

23時 夜の郡山駅(撮影 くさび)

そして10月1日から郡山市立美術館のロビーにて展示。私ももう一度美術館に足を運び観に行きました。


どの作品もこれはどうやって撮ったんだろう?これは郡山のどこかな?この視点はおもしろいなぁとじっくり鑑賞しました。
普段私たちが何気なく日常を過ごしている街中。視点を少し変えるだけで新たな景色が広がることを感じ取れました。

「雨の街角」(撮影 宗形雅幸) 雨が降る郡山駅前。ビッグアイの22階にある展望スペースから見下ろすと、傘を差す数人の方々が佇み会話している様な光景と、雨に濡れたタイルのモザイク模様の美しさに少し感動しました。

 

「dramatic」(撮影 chihiro) 桑野にある「カフェテラス四季」。入り口のドアの向こうに飾られる、誰かが撮ったであろうモノクロの写真を見た瞬間、私は自作のドラマをスタートしていた。想像妄想で胸が高鳴る。そしてシャッターをきっていた。日常とは美しく 日常とはドラマティックである。

「前後」(撮影 yama)ソールライターが今でも生きていて、スマホを持ってたらどんな風に写真を撮るだろう。と想像しながら、郡山の神社を撮影してみました。

 

「帰路」(撮影 くさび) 23時の郡山駅前にて。台風が近づいていたこともあり、わりと土砂降りな夜でした。雨の中傘を差して帰りを急ぐ人もいれば、雨宿りしながら迎えを待つ人も居て。賑やかな駅前を見慣れていたこともあり、いつもとは違う閑散とした夜の駅前にも色んなエピソードが見られて面白いなあと思いながら撮りました。普段ならカメラを持つには悪天候だなって思う夜も、なんだか視点を変えるといいなと思いました。

 

ちなみに今回企画に参加した私も作品を提出しました。
ソール・ライター的写真ってなんだろう・・・と撮影時とても悩みました。

悩みながら、夜の郡山を歩き、郡山駅前にある商業施設ビッグアイの22階展望ロビーへ。

ビッグアイは郡山市街地を一望でき、夜には郡山市街の夜景を望めます。
夜には展望台内に飾られているオブジェが輝き、展望台のガラスに反射しています。
その景色が小さな宇宙を作り出しました。暗闇の中、映し出すもう一つの景色が不思議な印象でした。

「universe」(撮影 Non.) 夜の郡山に広がる小さな宇宙

 

「神秘的なことは、馴染み深い場所で起こる。なにも、世界の裏側までいく必要がないのだ。」

©︎Saul Leiter Foundation

これはソールライターの言葉で私が気に入っている言葉の一つです。
写真撮影をしているととても素敵な風景や絶景など様々な場所に行ってみたくなります。
でも、私たちが日々過ごす暮らしに目を向けるとどうでしょうか。
少し視点を変えるだけで新たな景色が見えてきます。

もしソールライターが生きていたなら、私は夜のビッグアイの展望台に一緒に行きたい。
暗闇の中、あかりが灯るこの街に小さな宇宙があるよと伝えたい。

ソール・ライターが撮影した写真を通して、私たちは郡山の日常で見逃されている一瞬や絵を描くようにシャッターを収めた。
暮らしの日々の一瞬を切り取る。
その積み重ねと日々新鮮な目でこの街を見てシャッターに収め続けていきたい。


郡山市立美術館
https://www.city.koriyama.lg.jp/site/artmuseum/

〒963-0666 福島県郡山市安原町字大谷地 130-2
 開館時間:9時30分~17時00分(入館は16時30分まで)

 休館日 :月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始
      その他、休館日はホームページをご覧ください。

 電話番号:024-956-2200

Non.(のん)
1989年静岡県静岡市生まれ。

2019年結婚を機に福島県郡山市に引っ越し。

郡山を知りたい・写真仲間を作りたいという理由で同年、郡山写真部2期生として入部。

普段は会社員として勤める中、福島での日々の景色が新鮮で撮り続けている。

写真は社会人になってからずっと続けている趣味以上のライフワーク。

フィルムとデジタルで日々の暮らしを撮影している。

郡山に住む写真好きの仲間が集まり、2018年から活動をしている「郡山写真部」。

郡山のまち、人の魅力を「写真」を通じて見つめ直し、「#郡山写真部」で発信しています。

郡山写真部が取材・記事を書いて作ったデジタルフォトマップ「郡山フォトスポットガイド」はコチラ

郡山写真部のインスタグラムはコチラ


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和