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【現地レポート】2日間の写真教育プロジェクト in 宮古島


2022年10月に宮古島で実施された写真教育プロジェクト。私たちはこの春、このプロジェクトの応援チーム、通称「宮古島ラバーズ」を立ち上げ、賛同者を募りました。その結果、100名の方々にご支援いただきプロジェクトを実施することができました。皆さまのご支援は、言葉では表せないほど私たちの励みとなり、無事実施できたことを大変嬉しく思います。改めまして、「宮古島ラバーズ」の皆様、ご支援いただき誠にありがとうございました。

今回は、そんな「宮古島ラバーズ」の一員であるSOLAさんに特別に協力をしてもらい、プロジェクトのレポーターとして現地に参加していただきました。どんな授業だったのか、どんな子どもたちが参加したのか。現地の様子を写真と文章でレポートしていただきます。ぜひ最後までお付き合いください。


目次


写真・文:SOLA

10月のとある日、宮古島の海には、まだまだ夏のような意気が残りつつも、穏やかな風が吹いていました。
ここで、地元の小学生を対象にした写真教育プロジェクト2日間のレッスンが始まろうとしています。

澄みわたる宮古ブルー

申し遅れましたが、私はこのプロジェクトの一賛同者として「宮古島ラバーズ」に参加させていただきました、SOLAと申します。
私自身、写真を長く続けていることや、子育て中の二児の母として、カメラを通じた遊びが子どもの育ちにいろんな意味で役立つと、常々感じてきました。

  • 自分のいる場所や、周りの魅力に、改めて気づくこと
  • それを人に伝える力
  • 自分とは違う誰かの感覚も理解し、認め合う経験

とても大切なことがこのプロジェクトにはいくつも詰まっていると感じ、心踊りやみませんでした。

「写真’を’教える」 ではなく、「写真’で’教える」

ーーそれは、一体どんなレッスンなのでしょうか。
宮古島の現場からレポートします。


現地レポート!2日間にわたるプロジェクトの様子

プロジェクトの舞台は、宮古島市にある「こどもみらい放課後児童クラブ ティダっ子学園」。

地域の複数の小学校から、1〜6年までの児童が集い、放課後を過ごす。

ボクシング、スケボー、室内では楽器にボードゲーム、子どもたちは元気いっぱい、思い思いの場所で好きな遊びに興じています。
驚いたのは、ひとたびレッスンが始まるとなると、あっという間に集まって、心一つに。
講師を見上げる子どもたちの表情に、この日を楽しみにしてくれていたことが伺えます。

最初のレッスン、テーマは「私の大好きな宮古島」

事前に子どもたちは、貸し出されたカメラで「私の大好きな宮古島」を撮影してきていました。
そこから自分で一枚を選び、何が写っているのか、なぜ好きなのかを、一人ひとり前に出て、言葉にしていきます。

たくさん撮ってきた中から、自分で一つをセレクトして、発表します。

窓辺に咲いた花。
これから食べる宮古そば。
海岸で見た夕陽。
笑ってる家族。

何気ない日常の風景だけど、押したシャッターの裏で、自分が何に惹かれていたのか。
そのことに気づくチャンスが、そっと仕掛けられているようでした。

友達の作品にも興味津々の子どもたち。
次は何が飛び出すのか、ワクワクして目を見開きます。

「あ!この景色知ってる!○○ちゃんちの2階から撮ってる!」なんていうコメントも飛び出し、「われらが宮古島」の魅力を、改めてみんなで分かち合っていく素敵な時間でした。

先生撮影会は大盛り上がり!

2時間目は、「先生を撮ってみよう」です。学園長の大熊先生にモデルになって頂き、ぐるり囲んでの撮影会。
ギターを抱えてノリよく決めてくれる先生に、ポーズ指示も飛び交いながら、前から・横から・寝そべって…、と思い思いにシャッターを切ります。 撮り方も、距離感も、撮る量も十人十色

撮った後は、みんなの写真をモニターに並べて、写真から受ける感じをシェアする時間。違いを楽しみます。
アングルはもちろん、シャッターを切る瞬間も違うので、どれも大熊先生だけど、一つとして同じ写真はありません。
「同じものを撮ってるようでも、みんな少しずつ違う角度で見てるんだ。」ということを、実感することができました。

「スピード感を感じるのはどの写真?」

視点を変えると

翌日、1時間目のレッスンは、「これはなに」
あらかじめスタッフが用意した、身近な風景のごく一部を「アップ」で切り取った写真を見せて、それが何かを当てるゲーム。

遠くから全貌を見るとごく当たり前の光景が、ぐっと近寄ることで、見たことのないような、不思議なものに見えます。
それでも、パッとお題写真が表示された途端、「あれだーっ!!」子どもたちはすぐさま当てる当てる!

なぞなぞゲームのようで、みんなワクワク。次は何?

テーブルの脚の一部、排水溝の穴、下駄箱の木目…。
見慣れないサイズ感に切り取られたものを、一瞬で色や質感の特徴を分析して、見覚えの引き出しの中からよく上手に結びつけるものだと感心します。

「観察力」って、一言で言うけれど、「みる」という漢字は、「見」「観」「診」「視」など、全部で18個もあるそうで。
同じ「ものを見る力」でも、「ものを見て判断する力」じゃなくて、
「ただありのままに認識する力」では、圧倒的に子どもの勝ちですね。
私たち大人は、経験や知識を元に、「思い込み」というショートカットで「あーこれはあれね」と概念化してしまうことのなんと多いことか。生きていく上で合理的ではあるのですが…。

目に写るものを、偏見なく隅々まで観察できる子どもの目が、ちょっと羨ましくもあります。

そんな子どもたちの観察力をより研ぎ澄まし、ものの見え方の違いも実感できる、とても面白いレッスンでした。

当たり〜!イエーイ!

「感情のかたち」写真で感情を表現する

レッスン最後の一コマは、友達とペアになって、感情、つまり
「うれしい」や「かなしい」を写真で表現してみます。
それも、「すごく」とか「すこし」といった度合いも表しながら。

モデル役は表情やしぐさで気持ちを表現し、撮り役はそれをわかりやすいように切り取る。

そしてまた、撮った写真をモニターに映してみんなでシェア。
「すごく」「うれしい」顔は、どっちだ?
…これが案外、当てるのが難しかったりします。
大人がやったらだいたい演技パターンの想像がつくけれど、子どもの表情は豊かすぎて、微妙な作品が続出!わかりにくいほどに、ディスカッションは白熱。

「悲しい風な顔をしてるけど、端っこにちょっとだけピースが見えてる」といった鋭い洞察も飛び出し、盛り上がりました。


最後に、プロジェクトに参加して私が感じたこと

写真を通じた経験は、子どもたちに何を投げかけるだろう。

言葉を学び、操るのと同じように、
カメラをもう一つのコミュニケーションツールにできたら、
彼らの未来の自由度が、少し上がるのではないか。

道ばたで出会った猫も、ただすれ違うのと、
それを一枚の写真にしようと自らの手足頭を動かすのとでは、
世の中の解像度がまるで違ってくるのではないか。

子どもたちに育んでほしい創造力の原点に、観察の力があると思っています。

ファインダーを通じて、猫の気持ちを慮(おもんばか)る想像力に始まり、
相手の視点や複数のアングルから見る力は、きっと大人になって
どんな仕事にも通ずる武器となるはず。

宮古島の子どもたちはその多くが、大きくなると一度は故郷を離れていくといいます。

「この島に生まれてきたということは、
みんなには何か、役割があるということ。」

優しく語りかけるテラウチさん(写真家でありプロジェクトの発起人)を、じっと見つめる子どもたち。
その瞳には、島人の誇りをたたえた確かな火が灯ったように感じました。


プロフィール

SOLA

立命館大学政策科学部卒業後、建築会社、出版・編集関係の会社員を経て、20代半ばから写真の道へ。
ビジュアルアーツ専門学校、スタジオ勤務の後、2010年に独立。商業フォトグラファーとして主に企業広告・出版・セスナ空撮・ライブ撮影などで活動。人物撮影は俳優、モデル、著名人から一般ファミリーまで幅広い。
2013年、富士山フォトアートコンテンツにて、グランプリを受賞。
他に御苗場レビュアー賞、Canon復興支援フォトコンテスト最優秀賞など。
2014年に山梨へ移住後は、2児の母として大自然×子育てを満喫しながら、撮影、講師、執筆などマイペースで活動している。Instagramでは、自然や旅の中で育つ子どもの表情や、写真ライフの楽しみ方をママ目線で発信中。Instagram @sola_pht

機材協力:カメラブ株式会社 camelove.co.jp

今回子どもたちが使ったカメラはカメラブ株式会社にご協力をいただきました。カメラブ様、ありがとうございました。
カメラブ株式会社では、「GOOPASS」という約1,500種類以上の撮影機材をレンタルし放題のサブスクリプションサービスを提供しています。goopass.jp
もっと写真を楽しみたい、撮影の幅を広げたい方はぜひ使ってみてくださいね。

宮古島ラバーズについて知りたい方は宮古島ラバーズ公式サイトをご覧ください。


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