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フォトまち便り「Hello Local」vol.45 下田写真部~てくてくぶらぶら ペリーロード~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部が綴っていく連載企画「フォトまち便りHello Local」。PHaT PHOTO編集部のある東京は街中のイチョウがすこしずつ色づき始めた頃ですが、皆さんの住まいの地域の景色はどうですか?
さて、今回のフォトまち便りは、下田写真部の西川力さんによるフォトエッセイです。毎日のように通る道でも、カメラのファインダーを通して見ると普段とは違う新発見があるといいます。
西川さんの切り取る下田の街並みはどんな景色でしょうか。ぜひ最後までお楽しみください。


てくてくぶらぶら
ペリーロード

休日、気分が良いときにはカメラを持って散歩します。昨年購入したNikonのZfcはその古風なフォルムのおかげで、首にぶら下げているだけでも気分を上げてくれる、魔法のようなカメラです。

散歩のコースはだいたい決まっていて、ペリーロードから港沿いをじっくり巡ります。

ペリーロードは何百、いや何千と撮っているので、飽きてしまうのではないか、と思いますが、ファインダー越しに覗くたびに、新発見がたくさんあります。

つい先日は、もう秋も終わりだというのに、ペリーロード沿いの紫陽花がまだ綺麗な紫色に色づいていました。

毎日のように通る道でも、意識をかたむけるか、かたむけないかというちょっとした違いで、見える景色が変わるものだと実感しました。

 

2012年の4月、下田市役所の広報担当に配属され、真剣にカメラと向き合うようになってから、早いもので10年になります。

黒船祭やあじさい祭、水仙祭りなどのイベントと違って、ペリーロードはいつでも撮りに行けます。だからこその甘えのようなものがあって、最初のころはベストと思えるようなペリーロードは撮れませんでした。

今日は暇だからペリーロードでも撮りに行くかと思い立ってみれば曇りだったり、平日で人もまばらなときに行ったりして、寂しい絵にしかならなかったり。

気分はこんな感じでした

散々な思い出しかなかったのですが、いざ、別の部署に配属となって撮影しなければという呪縛から解き放たれて心に余裕が出てくると、面白いもので、晴れた日の午前中に、ペリーロード沿いの民家に太陽が良い角度で射し込むタイミングを見計らって出かけたり、観光客の皆様が大勢いらっしゃる瞬間を楽しんで撮影できるようになりました。

自分の環境が変わり、そのことによって撮影に対する意識が変わったことで、撮影の楽しみ方も見えてくる景色も自然と変化していたんです。

実は、ペリーロードはペリー提督来航時の町並みをそのまま保存、復元しているわけではなく、平成7年に現在の形に整備されました。ガス灯や石畳もあくまで開国の町、という発想から生まれたものです。

しかし、整備から30年近くが経過して、人々の生活に馴染み、下田にはなくてはならない景観になっていると思います。

水をまく住人

ペリーロードは民家も多く、その方々の生活自体も良い雰囲気を醸し出しています。上の写真は、夏、強い日差しの中、涼を取るために、住人の方が玄関で水を撒いています。そして下の写真は、近所の商店で買い物をしたのでしょうか、御婦人が買い物袋を担いで歩く姿も味のあるのが不思議です。

買い物帰りの御婦人

地元の中学生がゲームをしている

つい先日、散歩をしていたら、中学生の甥とばったり。友達と楽しくゲームをやっているようだったので、邪魔しないように遠目でパチリ。とはいえ相手も僕がいたのを分かっていたようで、後から母親経由で連絡がありました。ペリーロードは地元の子ども達にも癒しの場になっているんですね。

 

 僕のペリーロードでの癒しポイントは、鴨さんたちです。鴨が川面をスイスイ泳いでいたり、疲れたのか川岸に座り込んでいたりするのをずっと眺めているだけでも楽しいです。

みなさんもペリーロードにお越しの際は、ぜひ鴨さんたちを見つけてあげてください。

 

 さて、そもそもペリーロードという名前の由来は、下田湾に停泊したペリー提督一行が上陸した地点から会談の場所である了仙寺まで歩いたとされる故事からきています。

ペリー上陸記念公園にあるペリー艦隊来航記念碑

日米和親条約を締結した了仙寺

下田のまちなみは当時と大きく変わった部分がありますが、ペリー一行が下田を訪れ、下田を楽しんだことは間違いなく、ウエルカムな下田の人々の心根はしっかりと受け継がれています。

 

 ぜひ、下田にお越しの際は、ペリーロード周辺のまちあるきをして、開国のまちならではの空気を味わってください。そして、もしかしたらぶらぶら歩いている僕にばったり出くわすこともあるかもしれませんので、そのときは写真を撮らせていただければ嬉しいです。


西川 力(にしかわ つとむ)

1979年静岡県下田市生まれ。下田写真部結成当初からのメンバー。2003年下田市役所に入庁し、現在コロナ感染症対策係配属。広報担当のとき、写真が生み出す人と人とのつながりに魅力を感じ、現在もまち歩きをしながら写真を撮り続ける。

下岡蓮杖の生誕地、伊豆下田で、写真好きな仲間が日々の暮らしを発信したり、高校生とのフォトツアーなどを開催しながら「写真のまち」を目指して活動中。現在、部員13名。
下田写真部公式Facebook https://www.facebook.com/shimoda.photo
下田写真部公式Instagram https://www.instagram.com/shimoda_photoclub


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