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フォトまち便り「Hello Local」vol.31 下田写真部 ~波打ち際の漂着物と出会って私が学んだこと~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部メンバーが、週替わりに寄稿する連載「Hello Local」。今回は下田写真部、青木まゆりさんによるフォトエッセイです。私たちは「海」と想像したときに青い海と美しい白浜を連想させますが必ずしもそうではありません。どの海にも漂着物やゴミなど、人が作り出して流れ着く物、すなわち環境問題と関わっています。青木さんにこれまでのビーチクリーン活動を振り返っていただきながら、下田の海について紹介します。


私について

こんにちは、下田写真部の青木まゆりです。

西伊豆の町に生まれ東京の暮らしを経て下田に来て26年が経ちました。

下田では、最初、旅行情報誌の仕事を約18年。主に下田市の東側エリアを担当していたので、特に白浜の事なら隅から隅まで知るほど詳しくなり、宿泊施設や観光関係者に親しくさせていただきました。

写真については、旅行・観光情報の仕事柄、カメラマンの撮影に立ち合ったり、自分でも撮る機会が多く、フィルム時代からデジカメへと、白浜の海を撮り続け、写真も一つの趣味になっていました。撮りたくなるものは、やはり海や自然の風景。いつも天気や潮の満ち引きを気にするようになりました。

どこまでも続く遠浅の海、透明度抜群の白浜海岸は伊豆の代表的なビーチ

またの趣味は「ビーチコーミング」。今となってはその言葉も一般的になりましたが、子供のころから海辺で貝殻を集めたりする事が好きでした。

そして、現在、「ビーチクリーン」が私のライフワークのようになっています。写真を撮る事、ビーチコーミングとビーチクリーンが、海岸へ行く目的になっています。

 

きっかけは、2008年の初夏。

その年の自然現象によるものでしたが、砂が流出して、あの白い砂浜はゴロゴロとした石ころだらけになり、いつもの白い砂浜が真っ黒になったのです。その事が全国放送で連日報道され、夏を控えた下田の観光は大打撃を受け、誰もが悩みました。

何もしないではいられないという衝動にかられ、すぐに観光関係者数人で、視察やミーティングを重ね、6月末に「第1回白浜ビーチクリーンキャンペーン」を実施する事に。

市の協力もあり、地元区、一般の人、宿泊施設、観光関連、静岡県内外からも、およそ400人の参加がありました。何をやったかというと、ゴミ拾いというより、その浜一面の石を集めて、各自が持参したバケツで運んだ、というものでした。

実際に「バケツリレーをやった」という事がおもしろかったんだと思います。なんとも言えない一体感がありました。

この事には、批判的な意見もいただきましたが、情報社会において、人を集めて話題を作って発信する、という一心だったと思います。

翌年も、そのまた次の年も、ビーチクリーンをやろうという声が寄せられ、自然と私がそれの担当のようになって、年に一度のイベントのように実施してきました。毎年、約100人が集まってくれました。白浜の区長さんや駐車場のおじさんたちに、事前の打合せに行くと「あんたが来ると夏が来るみたいだよ!」と笑って接してくれるようにもなりました。

いつも背中を押してくれる友人の協力があり、「3人でも20人でもやろうか」と続けてきました。2019年の第12回目までは、順調に開催してきました。継続はチカラです。

自然環境に対する意識が変わった伊豆半島のジオガイド

その間に、生活パターンや仕事も変わり、2015年に伊豆半島ジオパークのジオガイド養成講座に通うチャンスがあり、地質地形の事をはじめ伊豆半島の成り立ちや歴史・文化、SDGsの事、地域の事をきちんと知る、という事も学び、無事、認定ジオガイドの資格を取る事ができました。

ジオガイドとは自然公園(ジオパーク)に訪れた人に地質・地形や地域の自然環境・生態系・歴史・文化などの側面から解説するガイドのことです。そのジオガイドになって、伊豆半島の観光名所や海と山の自然環境に対する意識も変わったのかもしれません。

ジオガイドの認定試験に向けて何度も実技の練習を重ねた龍宮窟。大人気の観光名所です。

時々スキルアップ研修もしています。知識豊富で楽しいジオガイドメンバー。

ビーチクリーンを本格的に取り組むきっかけとなった2019年10月の台風

海岸添いの遊歩道や岸壁が崖崩れなどの被害に見舞われ、浜はゴミや海藻の漂着で埋まりました。気になってはいましたが、10月末に行われる白浜神社例大祭を友人と見に行った時、あまりにもゴミが多くて、「この状態のこの浜で神事をやるの?」と思った時、自然と2人でゴミ拾いに取り掛かっていました。カメラマンたちが映す範囲だけでも、と。

伊豆で最古の宮「白浜神社」。島々の神へと祭の始まりと終わりを告げる儀式が執り行われます。

漂着物に関心を持ち、SNSで発信することに

それから休みの度に仲間とゴミ拾いに出かけるようになり、私もゴミ=漂着物に目を向けるようになりました。

その後、コロナ禍でビーチや駐車場が閉鎖されたりしましたが、何らかの方法を見つけて白浜だけではなく他の海岸にもゴミ拾いに行くようになっていました。

決して、ゴミ拾いが重労働だとは思っていません。貝殻があれば拾ったり、キレイな石を見たり、写真を撮ったり、海辺を楽しんでいるのです。

他の地域のビーチクリーンにも出かけます。

 

漂着ゴミに関心を持つようになってからはただゴミを集めるだけでなく、その場で分類して記録撮影し、SNSに投稿しています。他の人の投稿も見て、どこからどうやってたどり着いたのか、いつのものなのか、と情報交換したり考えるようになりました。

昭和のおもちゃなど懐かしい発見や、腐った飲み物か薬物の入ったペットボトルや謎の瓶、注射器など危険物、生き物の死骸、外洋で付着してきた貝類、大量の漁具、プラスチック類、ライター、ペットボトルの多さ、ストローのしぶとさなど、考えさせられる事がいっぱいです。

SNSを通して、全国、海外のビーチクリーン関係者ともつながりができ、団体でも個人でもみんなやっているんだな~と思ったり、知らなかった事を知ったり、学ぶこともたくさんあります。

(Facebook「白浜ビーチクリーン」、Instagram「shirahamabeachclean」で発信中)

今年の夏(夏前)は、みんなで15回目の白浜ビーチクリーンをしたいと考えています。

サーファーの多い白浜ビーチならではの漂着物でしょうか。


ライターやペットボトルもいっぱい見つけます。カラフルです。


たまに懐かしい人形たちにも出会います。

最近見つけた興味深いモノたち

海藻の中に埋もれていた金属製の細長いものを見つけました。まったく見当もつかずSNSに投稿してみたら、すぐに教えてくれる人がいました。

それはなんと、「南米のマテ茶を飲むためのフィルター付きストロー」と判明してびっくり。

ボンビージャ(Bombilla)という物だそうで、マテ茶の壺に入れて飲む道具らしい。筒の部分と、茶こし(逆茶こし?)部分はネジネジと取り外せてパッカーンと分解でき、洗浄便利になっている。少しのエンボス加工が施され、お洒落なものでしょうか。

まさかゴミ拾いで、遠く離れた知らない国の、伝統的な文化まで知る事になるとは!と思いました。これが南米から流れてきたと思うのは大げさかもしれないけど、まぁ外国から来たと思えなくもない。このように、深掘りしてみたくなるモノに出会ったりします。

これはほんの一例で、毎度のゴミ拾いで、外国語のラベルの容器はたくさん見ます。

SDGs-14番目の目標「海の豊かさを守ろう」

2030年までに、より良い社会を実現するために世界中で取り組む17の目標。ジオガイドとしても、学習旅行のお手伝いをする時はSDGsが必須項目になってきました。

個人的に、あるオンラインセミナーで見た事によると、中国の揚子江や東南アジアからのゴミが九州に来て日本海側と太平洋側の海流によって、北太平洋を渡り、数百日でアメリア西海岸へ到達。その後、ハワイのあたりへ流れていくというデータがあった。日本からのゴミがハワイへ行っているといっても過言ではないと。

ビーチクリーンをして他所の国のゴミが来ている事、町や山のゴミが海へ流出している事を実感します。

SDGsについて聞かれる事もありますが、私が17個の目標を全て理解しているわけでもなく、今の知識では身近な自然環境に関する「14、海の豊かさを守ろう」とか、陸の豊かさ、気候変動、作る責任使う責任、 の部分に関心を持っているだけ。SDGsという言葉が出来て、自分がやっていた事がそれの一部だったのかな、と思います。

日本初の開港地、伊豆下田。1854年、ペリー提督が乗ってきた黒船は、この遊覧船の倍以上の大きさでした。

現在、私は観光案内所に勤務していて、毎日大勢の方をご案内しています。ジオガイド・下田まち歩きガイドの身として下田が印象深い町になるよう、ちょっとした解説を交えてご案内をしています。下田に着いたら、まずお立ち寄りください!


下岡蓮杖の生誕地、伊豆下田で、写真好きな仲間が日々の暮らしを発信したり、高校生とのフォトツアーなどを開催しながら「写真のまち」を目指して活動中。現在、部員13名。
下田写真部公式Facebook https://www.facebook.com/shimoda.photo
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STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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まちスナ日和