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フォトまちだより「Hello Local」vol.32 紀南フィルム ~改めて気づく、紀南の”美味しい”魅力~

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紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部メンバーが、(ほぼ)週替わりに寄稿する連載「Hello Local」。今回は紀南フィルムの、田戸あゆ香さんによる「食」を通じてみた街の魅力。23歳のときオープンしたカフェ。そこに訪れるお客さんの声で気づかされた、都市では「ありえない」魅力とは?



私が運営するカフェ「榛(はしばみ)」。
他県からお仕事や観光で来られる方々とそこで交流していると、共通して話題になることがあります。それは「どこで食べても、どれも美味しくて、レベルが高い」ということ。気にしてみれば確かに、と思う節があります

とにかく”もらう”ことが多い

お店を始めてから、(名前も知らない)常連のお客さんから畑で採れた野菜や、たくさん釣れたからと釣りたてのお魚、今年は良く実ったからと柚子の差し入れをいただくことがあります。旦那さんの実家からは、季節ごとに変わる食材、例えば毎年庭で採れる梅、畑にある大きな栗の木からなる栗、竹林からは毎年立派なタケノコをいただきます。

それから、みかん。みかんは買ったことがありません。沢山もらったからお裾分け!と貰ったものが集まって、さらにそれをお裾分けします(笑)。紀南で暮らすみんなの共通認識は「みかんは貰うもの」、です。

いちごは、スーパーで買うと高いですが、農家さんから直接買うと、安くて鮮度もいい。直売所の近くまで行ったからと、こちらもお土産でいただきます。

そうそう柿も。私自身は渋柿にあたってから柿があまり好きじゃない(それでも美味しいのは食べる)のですが、知り合いの大将から教えてもらった新芽の柿の葉の天ぷらは、もちもちとしててほんとに美味しい。毎年新芽の時期が楽しみなくらい、おすすめです。

温暖な気候で農作物が育ちやすい紀南では、食材そのものが美味しいうえに、とにかく「もらう」ことが多いのです。私自身も、いつも何を作ろうかうきうき考えています。そんな環境にいると食文化のレベルが高くなるのも頷ける気がしませんか?紀南の料理人の味覚の鋭さやセンスは、日常の中で育まれたのかもしれません。

そういえば書きながら思い出したことがあります。たしか小学校低学年のころ、母と一緒にスーパーで買った野菜でカレーを作ったことがありました。私は小さい頃から、おじいちゃんの作る無農薬の野菜しか食べてこなかったのですが、この時食べた人参があまりにも不味くて吐き出した記憶があります。考えてみると、この地域の子どもたちは小さい頃から味覚が研ぎ澄まされているのかも。

飲食店だけじゃない
どこの家庭のご飯も美味しい

他県の方から言われたことで、改めて目をむけてみたのが「家庭の味」です。

紀南には「めはり寿司」という郷土料理があります。高菜の漬物でおにぎりを巻くだけというシンプルな料理。作り方は殆ど一緒なのに味がその家ごとに違って面白いんです。

違いの1つはもしかするとお醤油にあるのかもしれません。めはり寿司には欠かせない醤油ですが、和歌山県は醸造所が多く、各家庭使っている醤油が違ったりします。

例えば私が育った新宮市には千穂醤油さん、那智勝浦町には藤野醤油さん、ちょっと離れたとこでは湯浅町の湯浅醤油さんも。我が家は私の好みで藤野さんの醤油を使ってます。甘みがあってお刺身にも合うので、めはり寿司はもちろん、普段の料理に何にでも使っています。

梅干しも同じ。塩っ辛いのもあれば紫蘇で鮮やかに色付いたもの、蜂蜜につけたものと、様々。梅酒や梅シロップに梅酢と、手間ひまかかる梅作業ですがなぜか夢中になってしまうし、大変とわかってても毎年楽しみにしてしまいます。


自分のお店を持ってから食材に触れる機会が格段に増えました。でも、まだまだ知らないことばかり。

この街には海、山、川にそれぞれの幸があって、語り尽くせないくらいの食物語があるんだろうなと、思います。

まだ見ぬ紀南の”美味しい”を、これからも貪欲に求めていきたいです。

田戸あゆ香
和歌山県新宮市出身、三重県南牟婁郡在住。結婚を機に紀宝町へ移住、店舗兼住宅でお店を構え、2022年春にオープン予定。山の上の小さなカフェで猫と田舎暮らし

 


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