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HOW TO / 作品制作のヒント

写真家を志す人へ テラウチマサトの写真の教科書 第9回 写真と言葉の関係


写真の学校を卒業したわけでもない、著名な写真家の弟子でもなかったテラウチマサトが、
約30年間も写真家として広告や雑誌、また作品発表をして、国内外で活動できているわけとは?

失敗から身に付けたサバイバル術や、これからのフォトグラファーに必要なこと、
日々の中で大切にしていることなど、アシスタントに伝えたい内容を、月2回の特別エッセイでお届けします。

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写真家には、文章が上手な人が多いような気がする。

それはもしかしたら、「よく観察する」ということが理由かもしれない。写真家は、撮るときに被写体をじっと観察する。たとえば、ボートを漕いでいるシーンを撮影するとしても、何も考えず適当にシャッターを押すわけではない。対象の動きを隅々まで目で追って、最適なタイミングがくるのを待つのだ。

シャッタースピードを遅くして画面をぶらすのか、流し撮りをするのか、あるいは高速シャッターで水しぶきが上がる瞬間をおさえるのか。
ボートのスピード感を表現する場合と、海の広さを表現する場合には、当然切りとるタイミングも違うだろう。

自分が表現したい写真を撮るには、観察が不可欠だ。そして、文章を書くということも同じ。
人物や風景をよく観察しなければ、それらを文章で描写することはできない。
観察し、情報を得ることで、言葉は厚みが出てくるのである。そういう意味で、写真と言葉は似ているように思う。

 

言葉が無ければ

僕は、自分の複雑な感情を写真に託したいと思って、いつも表現をしてきた。そして、曖昧な感情を撮ろうとするときに、度々やっぱり言葉がなければだめだと感じることがあった。

今回載せた写真は、11月のデンマーク。とても暗くて、寒そうな冬の景色。

しかし、ただ単純に寂しい冬を写したかったわけではない。人は、厳しい冬の中でもクリスマスを楽しんだり、新年を祝ったりしながら、やがて来る春を待ちわびて、その寒さを耐え忍ぶ。冬枯れの風景を前にして、僕はそんな暗さの中にあるかすかな光、希望を撮りたいと思っていた。

そして、そういう感覚は、言葉に置き換えないといけない。
漠然とした感情を、「切なさ」や「希望」という言葉にした瞬間に、自分が本当に撮りたいものが何なのか見えてくる。

自分がその景色に惹かれる理由を正しく言葉に置き換えられたとき、撮り方はもっとしっかりしてくるような気がするのだ。だから、写真を撮るという行為と、言葉で表現するということは、自分の中では強く強く結びついている。

 

タイトルの難しさ

1枚の写真が言葉によって広がりをもつように、同時に、言葉によって写真のイメージが限定されるということもあると思う。

たとえば、タイトル。コンテストで審査をしていても、写真が素晴らしいのにタイトルが惜しいと思う作品がよくある。たった数文字の言葉の重さ。タイトルとは、一体なんなのだろう。

人によってその解釈は違うだろうが、僕はタイトルは大きな範囲を示すナビのようなものだと思っている。東西南北、どの方角に向かっているのかを指し示す、幅広いナビ。

たとえば山へ向かう道の写真を写したとしたら、それを何県にある山の、何とかという山荘に向かって、と書いてしまうと、とても窮屈で、つまらないものになる。ナビは、見る側がどの方向を向けばいいのか、指差してくれるだけでいい。「あの山に向かって」などにしたら、それぞれ自分の中の山を思い浮かべることができるだろう。

だから、写真で自分がいちばん伝えたいことは、タイトルで書いてはいけないのだと思う。わざと明確性を落として、余白を残しておくような言葉の使い方も大切だ。
言いたかったことをあまりにもわかりやすく提示すると、写真は、深みのない薄っぺらいものになってしまうのではないだろうか。

 

オリジナルの言葉なんてない

今年、カレンダーをつくった。いままで長年撮ってきた富士山の写真から厳選した31点の富士山作品と、言葉を合わせた日めくりのもの。
その言葉の中には、著名人の言葉に影響を受けて、自分の思いを書いたものも多い。

僕は、言葉や想像力というものは、自分の中から生み出すものではなくて、外部の刺激と出合って生まれるものだと思っている。特に写真家は、外に出ていかなくてはいけない仕事だから、色んな人と出合い、色んな風景と出合い、色んなものを見て、そこから想像していく。

僕が語る言葉は、僕自身の中からつむぎ出されたオリジナルのものではないのだ。
誰かの言葉を聞き、音楽を聴き、それを何度も咀嚼することで、自分の言葉がつくられていく。
材料があって料理になっていくような感覚だ。

自分の中にはなにもない。でもだからこそ、僕は外部から刺激を受け、反応して、写真を撮り続け、言葉をつむぐ。写真と言葉、この切り離すことのできない2つについては、これからも考えていかなければいけないだろう。

 

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