身近な人を撮るときに試したい 写真家・テラウチマサトが教えるポートレイト撮影のコツ
「写真が趣味です!」と言うと、「じゃあ写真係ね!」と、友人や家族との旅行やイベント、また、会社のWebサイトの社員紹介用写真など、いろいろ頼まれた経験もあるのではないでしょうか。
モデルではない方のポートレイト撮影では、撮られる側も緊張したり、意識したりしてしまって、いつもの表情が出せず、撮影時に苦労した経験がある人もいるでしょう。
そんな時は、カメラマンの方で、撮られやすい雰囲気を作ってあげる必要があります。
いままで数々のモデルや著名人、経営者を撮影してきたテラウチマサトが、自身が代表を務める株式会社CMSのスタッフを、富士フイルムのミラーレスカメラ「X-H1」を使って撮影しました。
モデルでない方の撮影をするときのポイント6つ!どうぞお楽しみください。
本記事は、2018年7月開催「みんなのポートレイト展2018」のなかで開催されたトークイベントの内容を一部抜粋し、まとめたものです。
身近な人を撮るときに試したい「繰り返し」
会話することだけがコミュニケーションではない
領域を超えてポーズを見つける
大切なのは関係性をつくること
FUJIFILM 「X-H1」を選んだ理由
写真を撮ることで気づくこと
身近な人を撮るときに試したい「繰り返し」
―今回、テラウチさんには社員を撮影して頂きました。ふだん撮られることに慣れていないメンバーが多かったと思いますが、何かテクニックはあるのでしょうか?
テラウチ 友人や家族など、撮られ慣れていない人を撮るときに試してみて欲しいのは「繰り返し」の動作です。
モデルと違って、カメラを向けられると緊張してしまい、何かポーズをお願いしても、動きや表情がぎこちなくなってしまいます。自然な表情を撮りたいと思ったときは、動作を繰り返してみてもらうと緊張がほぐれることが多いです。
たとえば、この写真。彼女には電話を受ける動作を繰り返しやってもらいました。
ふだん業務でやっている動作なので、違和感なくやれるし、何度も同じことをしてもらうことで、動作に集中して、撮られていることへの意識が薄くなります。
あとはいちばんいいと思った表情のときにシャッターを押せばいいだけ。
このテクニックは、モデル撮影でも効果的です。たとえば、屈伸とかジャンプを何度も繰り返してもらって撮影してみると、決め顔ではない、新しい表情が撮れたりします。
会話することだけがコミュニケーションではない
―撮影中はどんな会話をされているんですか?
テラウチ 撮影中のコミュニケーションと言うと、会話で楽しませなければいけない、と思う人が多いと思うのですが、会話することだけがコミュニケーションではないと思っています。
たとえば、「楽しかった旅行のことを思い出してください」とか、お孫さんがいる人だったら、「お孫さんのこと考えてみてください」とか、その人が楽しい気持ちになるような問いかけをするだけでも十分なんですよ。
会話をしなくてもいかに愉快な環境をつくり出すかということを大切にしています。
領域を超えてポーズを見つける
―ポーズの指示はどういう風に出されたんですか?
テラウチ 会社のスタッフを撮影するとなるとポーズのバリエーションはあまりないのですが、腕を組んでもらうのは、役員や経営者の撮影をするときの定番のひとつです。
ただ、腕を組むポーズも腕の高さや組み方などいろいろなバリエーションがあります。
Webの画像検索でポーズの研究をしてみるといいかもしれません。海外の経営者を撮影した写真も参考になりますし、卒業アルバムも面白いです。
―海外の卒業アルバムの写真ですか?
テラウチ 日本の卒業アルバムはほとんどが定型のものですけれど、海外のものは、卒業後の自分というお題で、パイロットに扮して撮っているものとかがあったりします。
発想のユニークさがすごく大事なので、領域を超えて、違うところからアイディアを持ってくると面白いと思います。
写真集だけでなくて、自分とは世代が違う洋服のカタログとか、ふだん目にしないようなものを見てみると、いろいろなヒントが隠れていますよ。
大切なのは関係性をつくること
―テラウチさんが撮影のときに、特に大切にされていることはありますか?
テラウチ ポートレイト撮影のときに大切にしていることは関係性を築くことです。
以前、子供を撮影したときに、スタジオを走り回って全然じっとしてくれなかったんですよ。お子さんを撮るときって、なかなか思い通りに撮れないことが多いと思うんですけれど。
そのときは、その子にまずカメラマンになってもらって、私を撮影してもらいました。そのあと、今度は君がモデルだよと言って撮影したんですけれど、すごくお利口にモデルをしてくれました。
「こう撮りたい」という自分の気持ちを一方的に押し付けるのではなく、撮られやすい雰囲気や関係性をつくったうえで撮影していくことがポイントです。
こんな風に撮ってもらいたいという希望がモデル側にある場合は、まずはそのシチュエーションや表情で撮ってあげると安心してもらえます。それから自分が撮りたいように動いてもらうとスムーズですね。
FUJIFILM 「X-H1」を選んだ理由
―今回は最近、テラウチさんが購入したという、FUJIFILM 「X-H1」で撮影をして頂きました。このカメラを選んだ理由を教えてください。
テラウチ 「X-H1」を選んだ理由は、フィルムシミュレーションがあったり、重さがちょうどよかったりといろいろあるんですが、いちばんの決め手はレンズがよかったこと。
昔から富士フイルムのレンズはいいなと思って使っていたのですが、今回ミラーレスカメラの購入を検討するにあたって、ボケ具合や画づくりの面でレンズの良さが決め手になりましたね。絞り値を調整できる「絞りリング」がレンズに搭載されていて、アナログ感覚ですばやく絞りを調整できるという操作性も気になりました。
「X-H1」は友人や家族を撮るときに圧迫感を感じさせなかったり、旅にも持っていきやすいという点でも、とてもいいカメラだと思います。
写真を撮ることで気づくこと
テラウチ ポートレイト撮影は会話をしたり、空気をつくったり、コミュニケーションしながら撮っている時間がすごく楽しいものだと思うので、撮る行為自体を楽しんで欲しいと思います。
写真を撮るということは被写体を観察しているようなもので、「こんな顔をしてたんだ」とか「こんな表情もするんだ」と気づきがありますよね。
身近な人ほど、いつも会っているから明日も明後日も会えると思ってしまいますが、全てのことは一度きり、だからこそ写真は重要だし、撮るべきだと思っています。
いいカメラを選んで友人や家族、大切な人を撮って欲しいと思います。
FUJIFILM X-H1
Xシリーズ初となる「最大5.5段のボディ内5軸手ブレ補正機能」や動画の高画質を追求した新フィルムシミュレーション「ETERNA(エテルナ)」、インドアスポーツ撮影で威力を発揮する「フリッカー低減撮影機能」など、プロ写真家・映像作家からハイアマチュアまで、様々な撮影現場で極めて有用な機能を新開発の高剛性・高耐久ボディで実現。