オススメ展覧会「写真と絵画 -セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」(アーティゾン美術館)
2022年7月10日(日)まで、東京・京橋にあるアーティゾン美術館にて「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」が開催されています。
ジャム・セッションは、現代美術家の作品とアーティゾン美術館の所蔵作品のセッションにより新たな視点を生み出すというシリーズ企画。日本の美術館の中でもトップクラスのコレクションを有するアーティゾン美術館だからこそ実現可能な企画に編集部も足を運んできました。本展のテーマは「写真と絵画との関係」。すでに各方面から好評を博している本企画について、見どころをご紹介します。
写真と絵画
本展は、写真というメディアを扱う柴田敏雄と鈴木理策という二人の現代作家の作品を中心に、セザンヌやモネ、クールベといった西洋絵画の巨匠たちの作品が展示される企画展になります。
展覧会は6つのセクションから構成されています。上述した二人の作家が、テーマも自身で設定したセクションをそれぞれ2つずつ受け持ち、それとは別にアーティゾン美術館の学芸員が提示したセザンヌと雪舟をテーマに二人の作家が自らの作品を選んだセクションが。
セザンヌ(=現代絵画の父)が写真というメディアを扱う二人の作家の起点になっていることや、そこに中世画家の雪舟という存在が加わることで、西洋美術の流れを中心に置きつつも、日本的な文脈を接続させ、絵画と写真の造形精神を同一の地平線上に見ていくという企画展と言えると思います。同展のサイトによると展示作品数は合計約280点。二名の作家による新作・未発表作品約130点を含む約240点と、石橋財団コレクションより約40点が出品。贅沢な空間を体験できます。
写真と絵画、そして彫刻まで
「写真と絵画の関係」と聞いて思い出すのが、ニューヨーク近代美術館(MoMA)でピーター・ガラシがキュレーションを手掛けた『Before Photography』(1981年)です。同展の開催目的が、美術を勉強している人ならば目/耳にしたことがあるかもしれない「写真が科学によって芸術の門前に置かれた私生児ではなく、西洋絵画の伝統の正統な嫡出子であることを示すため」に開かれた、というフレーズは有名ですね。
本展において興味深いのは、出展作家自らがアーティゾン美術館のコレクションから作品をセレクトしているセクションです。キュレーターの解釈による作品の紹介というよりも、作家自らが、その作品の持つ系譜というものを明らかにしていく、あるいは再解釈していく、という要素があるように思います。
例えば柴田敏雄さんは「ディメンション、フォルムとイマジネーション」のセクションにおいて、円空の木彫りの仏像を自身の作品と並べて展示しています。彫刻のフォルムと柴田さんの作品が会場でエコーする姿を見て、思わずうっとりしてしまったのは私だけではないはず。
鈴木理策さんのセクション「絵画を生きたものにすること / 交わらない視線」では、ジャコメッティの彫刻が。奥にあるのは鏡?と思いきや、実は写真作品。そして、上の写真からはフレームアウトしていますが、彫刻の正面には本物の鏡が設置されていて、実物、写真、鏡という3つ組み合わせからなっています。「視る」という行為を問い続けてきた作家の眼差しを、そんな構成からも感じられる空間になっています。あぁ、眼福。
見ごたえたっぷりの展示は7月10日(日)まで
今回紹介したのは展示のうち、ほんの一部。アーティゾン美術館だからこそ実現できる本展覧会は、是非会場でこそ見て欲しいものです。もしかしたら既に知っている作品があったとしても、そこに新たな発見を見つけられるかもしれません。
展覧会名:ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策
会期:2022年4月29日[金] – 7月10日[日]
会場:アーティゾン美術館 6階展示室
開館時間:10:00ー18:00(4月29日を除く金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
入場料:1200円(ウェブ予約)/ 1500円(当日窓口)
ウェブ:https://www.artizon.museum/exhibition/detail/539
同時開催:Transformation 越境から生まれるアート(5階展示室)/ 石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 ピカソとミロの版画 —教育普及企画—(4階展示室)