1. HOME
  2. Magazine
  3. フォトまち便り「Hello Local」vol.34 下田写真部~老舗カフェの娘が語る、吉佐美大浜の魅力~
Magazine

フォトまち便り「Hello Local」vol.34 下田写真部~老舗カフェの娘が語る、吉佐美大浜の魅力~


紀南、富山、郡山、下田の4つの地域写真部メンバーが、週替わりに寄稿する連載「Hello Local」。今回は下田写真部、濱口梨絵さんによるフォトエッセイ。下田の人気ビーチのひとつ、「吉佐美大浜」は若い人々や外国人観光客に親しまれています。そのビーチから目の前にある老舗カフェ「サニーサイド」の娘として生まれ育った濱口さんは一時は下田を離れるもUターン後に吉佐美大浜と関わる人の魅力に気付かされます。いまUターンや移住者で盛り上がる吉佐美大浜の魅力をご紹介します。


カメラを始めて気付いた下田の魅力

初めまして。下田写真部3年目の濱口梨絵です。

下田写真部に入部するまでカメラを触ったことがなかった私。写真部メンバーにお誘い頂き、仕事で役立つかな~と思い入部を決意しました。

「F値って何?」「ミラーレスって?!」と写真部と名乗って良いのかという程、本当に何もわからないまま入部。3年経って、やっとカメラでの撮影に慣れてきました。

元々スマホで写真を撮るのは好きでしたが、カメラは本当に難しく、はじめはなかなか思い通りに撮れない日々。

「もっとこの角度で撮ればよかった」「もっと近くで撮ればよかった」など、色々と四苦八苦し、毎回反省していました。

こう言うと苦痛のように聞こえるかもしれませんが、(実際上手く撮れなくて苦痛な時もありました・・・。)

この3年で明らかに変わったのが「写真を撮る事が前よりもっと好きになった事。そして、元々知ってた景色の見る目が変わった事」。

同じビーチで撮影していても、その日によって海の色や空の色で風景が変わり、落ちている流木、貝殻・・・。

今まで気にも留めていなかった物が目新しいもののように映り、夢中でシャッターを押してしまいます。下田って、こんなに様々な、美しい景色が沢山あったんだなぁ、と実感しています。

サーフィンを楽しむ人達

吉佐美大浜ビーチに打ち上げられた「イソメ」

移りゆく空と海の色

そして、下田のお店や風景の写真を撮り、下田写真部のSNSで発信する事によって、少なからず「行ってみたい」と言って頂いたり、実際に写真を見てお越し頂くお客様がいらっしゃって、下田に少しでも貢献できているのかな?と、喜びを感じています。とはいえ技術もまだまだなカメラビギナー。皆様の写真を参考にしながら沢山の方が「下田って楽しそう、こんなきれいな景色を見てみたい」と思って頂けるような、「伝わる写真」を撮っていきたいと思っています。

吉佐美大浜海水浴場の魅力

そんな私は、吉佐美大浜海水浴場というビーチの目の前、創業44年の老舗カフェ「サニーサイド」の娘として生まれ育ちました。

吉佐美大浜海水浴場は、伊豆急下田駅から車で10分程、南へ下った場所にあります。

この吉佐美大浜海水浴場がある吉佐美エリアは多々戸浜、入田浜、舞磯浜、吉佐美大浜、田牛というビーチが5つあり、夏は多くの海水浴のお客様で賑わうエリアです。

下田の海のきれいさは、他の下田写真部部員の紹介もありましたが、今回私が紹介したいのは子供の頃から慣れ親しんできた吉佐美大浜。真っ白な砂浜が770mも雄大に広がっており、水質は毎年AAランクで透明度抜群!!(極めて水質の良好な海水浴場)

初めて訪れた方は、「海外みたい!」「こんなにきれいなビーチがあったなんて!!」と驚かれます。沖縄やハワイに行かれた方でも感動するレベルですので、ぜひ一度来て頂きたいです。

夏の海水浴シーズンになると、多くの海水浴のお客様や、サーファーが訪れます。

また、オフシーズンは、TVのCMや、映画の撮影、ウェディングフォトなど、様々な撮影にも多く使われています。

そして、この吉佐美大浜、なんといっても外国人がとても多いこと。初めて来られた方は、「なぜこんなに外国人が多いの?」と驚かれます。

この時も外国人しかいませんでした

ビーチに居ると、時期によっては日本人が自分達しかいなくて、ほぼ外国人だったという事も。テレビ東京の番組、「Youは何しに日本へ?!」の取材も2度程来ました。

下田の町中で外国人が多いエリアを聞いたところ、皆が口を揃えて「吉佐美大浜」と答えたとの事。

なぜこんなに外国人が多いかというと、その昔、東京都内で働く外国人たちが、吉佐美大浜に遊びに来はじめ、在日外国人の間でビーチの美しさの口コミが広がって外国人が増えたそう。そして今でも、そういった外国人の方々が多くいらっしゃいます。

彼らはこの吉佐美大浜の近くに家を借りたり、別荘を買って、週末や長い休みになると、度々やってきて休暇を楽しんでいます。

外国人は本当にビーチが好きで、一日中ビーチにいます。ビーチバレーを楽しんだり、ビーチチェアに寝転びながら、読書を楽しんだり。

何日も滞在して毎日ビーチで遊ぶ、そんな休暇の過ごし方は、あまり日本人にはない感覚なのかな?と思い、少し羨ましく感じます。(下田に住んでいるとビーチに行く事さえ少ないので・・・)

そんな外国人に囲まれた美しいビーチで過ごしていると、海外に居るような、不思議な感覚になります。

サニーサイドについて

そんな美しいビーチの目の前にあるサニーサイドカフェ。

1977年、今の倍くらいの砂浜が広がる、かなり広大なビーチだった吉佐美大浜。

この先にある、田牛という集落につながる道が整備されはじめた頃に父がこのお店をはじめました。

サニーサイドカフェ

当時はインベーダーゲームや、バッグギャモンといったゲームが流行っていて、お店も深夜まで営業していたので、皆夜遅くまでお酒を飲みながら楽しんでいたそう。

また、外国人が多いビーチなだけあって、当店も外国人のお客様が多く、昔の写真を見ると外国人のパーティの写真が沢山出てきます。

そして、そういったパーティで交流が生まれ、また新たなお客様がどんどんと増えていったそう。

今思うと、私自身も子供の頃、外国人のお客様の子どもと遊んだりしていました。英語は分かりませんでしたが、子供は意外と言葉は通じなくても遊べます。

そのまま英語は話せるようにならずに今まできてしまいましたが、この何とかなる精神は子供の頃にこういった環境で育ったからかな?と思います。

昔の写真を見ると、外国人のお客様がたくさん。

観光地のカフェなので、観光客がほとんどというわけではありません。

夏はビーチに来て、遊びついでに寄ってくださる方が多いですが、オフシーズンは、テラスで海をみながらのんびりと過ごしに来られる方、サニーサイドのメニューが気に入って来られる方、そしてマスターである父と、話をする為に来られる方などがいらっしゃいます。

マスターがお客様と座って話し込んでいる、というスタイルが果たしていかがなものか、と思った時もありますが、(もちろんあまりお客様がいらっしゃらない時ですが)

移住相談から人生相談まで、様々なお客様の話を聴いている父をみると、ただ良い景色を観ながら美味しいものを提供するだけでは、サニーサイドはここまで続けてこれていないんだろうな、と今はつくづく感じています。

つい先日、30年前の大学生時代にアルバイトをしていたというグループが遊びに来てくれました。

大学の夏休みに下田へきて、何日も車中泊しながら海で遊んでいた所、父が当店でアルバイトをしないか?と声をかけたそう。

当時はものすごく忙かったけれど、そんな中でも休憩になれば目の前の海へサーフィンへ行ったり、アルバイト中に店内でナンパした、という強者も。その後の大学生の夏休みは、毎年サニーサイドでのアルバイトだったそうです。

還暦のおじさん達のだいぶ弾けていた昔話は聞いていてとても楽しく、当時の光景が見える様でした。

30年経った今でも時々遊びに来てくれる事がとても有難く、この方達の青春時代の思い出の一部になっていると思うと感慨深いです。

吉佐美の魅力、働く人と移り住む人。

吉佐美大浜周辺には、昔に比べておしゃれなカフェやお店、ペンションが増えました。

そういったお店を経営している方の多くは移住者やUターンで戻ってきた人達。

彼らはお店が休みになると海へ行ってサーフィンを楽しんだり、散歩したり、思いっきり海の近くの生活を楽しんでいます。そしてそんな環境にいるからか、皆穏やかで同業でもお互いにお互いのお店を勧め合い、皆で吉佐美大浜地区を盛り上げていこうという雰囲気があります。

サーファー夫婦が営むオシャレなゲストハウス&カフェ「OliOli guest house & cafe」。いつも明るく、笑顔で迎えてくれる素敵なご夫婦。

Organic cafe  「wabi-sabi」。森の中に佇む、異国情緒溢れるオシャレなcafeは、穏やかで静かな時間を過ごすことができます。

Uターンで戻ってきた一人、needuの板橋君。元々吉佐美出身でオーストラリアや東京での経験を経て、吉佐美大浜にコーヒーと自然食品のお店「needu」を立ち上げました。添加物などを使用していない、自然そのままの商品を扱う事を大切にされていて、地元で作られた無農薬みかんのドライフルーツや、地元で作られているところてんなどを販売されています。

「needu」の板橋君。

自然食品とコーヒーのお店「needu」。地元で獲れた明日葉をソースに。

野菜で着色されたバンズを使ったハンバーガーや、素材の味を楽しめるジェラートなど、見た目もカラフルでかわいく、体に優しいメニュー。

若い2人のお店ですが天然素材で出来た雑貨の販売や、自然素材を生かしたメニュ―など、今の時代に合ったサスティナブルなお店。海の近くで自然に囲まれて育った彼らの自然を大切にしたい想いが感じられました。

元々は古い海の家でラーメンや焼きそばなど提供していた場所でしたが、お店の外観自体は変わらないのに全く違う場所のような雰囲気に。

新たな試みにInstagramなどで情報を知ったお客様が沢山訪れ、吉佐美大浜もとても賑わいをみせていました。

最後にご紹介したいのは移住してきた方の1人、ヨガインストラクターの小松あやのさん。

はじめは私と同じで、買い物する所も無いし、スタバも無い~!と寂しい気持ちになっていたようですが、自然豊かな場所でヨガをしていくうちに、この環境で過ごせることに喜びを感じ、今は移住ライフを楽しんでいます。今ではビーチヨガやオンラインヨガ、そして移住相談なども行われています。

都会育ちの彼女ですが、自然に触れていくうちに彼女も環境保護への意識が高まり、洗剤を環境に優しいものに変えたりと、見習うべき所が沢山あります。

彼女が活動するビーチヨガも3年目。連休や夏のシーズンには沢山のお客様を連れて吉佐美大浜のビーチでヨガをされています。波の音や鳥のさえずりを聴きながらのヨガを楽しみ、リフレッシュして帰って行かれます。

このように、吉佐美大浜のビーチの風景は変わらないけれど、人の流れが変わりつつある吉佐美大浜。

移住者やUターンして帰ってきた人達が、また新たな吉佐美大浜を造り上げています。

私自身も、吉佐美大浜の魅力をもっと多くの方に伝えていきたいですし、沢山のお客様がこのきれいな海に癒され、オシャレなカフェでほっと一息つき、またリフレッシュして帰って頂けたら嬉しいです。


濱口梨絵

下田生まれ下田育ち。大学を機に上京。埼玉、東京、名古屋での生活を経てUターンし、

今は子育てをしながらSunny Side Cottageの管理・運営とSunny Side Caféで働いている。

下岡蓮杖の生誕地、伊豆下田で、写真好きな仲間が日々の暮らしを発信したり、高校生とのフォトツアーなどを開催しながら「写真のまち」を目指して活動中。現在、部員13名。
下田写真部公式Facebook https://www.facebook.com/shimoda.photo
下田写真部公式Instagram https://www.instagram.com/shimoda_photoclub


STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

フォトディレクターの推し写真集

まちスナ日和