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photo by 上村千恵子

関西御苗場2017 受賞作品③ レビュアー賞

Event, 御苗場


小林正明 選
(ゲッティイメージズ:シニア・アート・ディレクター)

 髙田綾夏

「アイスクリーム」

photo by 髙田綾夏
photo by 髙田綾夏
concept
私にとって白い空間は、完全な状態です。その中に立った時、不完全な存在である私が異質で、「ここにいるべきではない」と感じて気持ち悪くなります。だからこそ、白い空間が嫌いで、憧れています。完全で何も変わらない空間の中で、不完全で元に戻らない私を表現しました。

question

――この作品を撮影することになったきっかけは?
小・中学校の頃に性的虐待にあったことを、「レッテルを貼られるのが嫌」「拒絶されるのが怖い」と思って今まで隠していました。ですが、自分の過去も全て知った上で私のことを受け入れてくれる人ができてはじめて、一番怖がっていたことを他の誰かではなく、私自身が過去の私に対してしていたと気づきました。
だから、変わりたいと思いました。

自分を守るために分離させた過去の私を受け入れることで、もう一度、私の中に帰ってきてほしい。そうすることで、ずっと助けてほしいと叫んでいた過去の私を救うことができるんじゃないかと思いました。

この作品は私と過去の私が融合するための儀式です。作品を見た人に立会人になってもらいこの儀式を完成させるために制作しました。

――この作品で伝えたいことを教えてください。
何かを伝えたいわけではなく、前述した通り、儀式を行うことが目的です。

――作品を作る上で苦労したことはありますか?
蓋をしていた記憶を思い出し、追体験することが大変でした。

――今後目指していることなどあれば教えてください。
同じテーマで卒業作品を制作しているので、このシリーズを完成させて、儀式を終えることが一番の目標です。

《select》小林正明(ゲッティイメージズ:シニア・アート・ディレクター)
選考理由:

まずは、今回展示したすべての方の情熱、写真に対する愛に称賛を贈りたいと思います。広告写真のアートディレクターという立場で作品を拝見しましたが、髙田さんのブースの前に立ったとき、とてもシンプルな作品で、研ぎ澄まされた緊張感を感じました。髙田さん本人にお会いして話を訊きましたら、自分が思い出したくない過去、歪みがあったものを、とにかく絵に、写真にして描き出してみたかったと話されていました。具体的なものと抽象的なコンセプトを形にしていたんですね。ブックを観たときにも、バッと鳥肌が立ちました。賞というのは一期一会だと思っていますが、そのとき非常に自然な気持ちで、これは髙田さんだなと思いました。

髙田綾夏
1997年大阪府生まれ。大阪市立工芸高等学校映像デザイン科卒業。日本写真映像専門学校 写真コミュニーケーション学科写真表現コース在学中。「御苗場vol.19関西」レビュアー賞受賞。www.facebook.com/AyakaTakada.9769

STORY TELLER / 写真家達の物語 vol.37

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