
第55回ヴェネチア・ビエンナーレ 出展作家 リチャード・モス ロングインタビュー!
―――ヴェネチア・ビエンナーレでも展示される次のプロジェクト「The Enclave」について教えてもらえますか?
「The Enclave」は2012年に北キヴ州と南キヴ州の間で悪化していた紛争を描いた作品。難民収容施設、茂みに横たわる死体を発見したことを表現する子どもの子守歌、予言者からもらった銃弾で撃たれても死ななくなる薬で守られる反乱兵士たち、道に横たわる腐った死体、子どもたちが炎の輪を飛び越える反乱プロパガンダの集会、迫撃砲が飛び交う中、実際の紛争をおさめた映像、梅雨の季節に輝く風景、燃えるように輝く不快なピンク色。これらが今回の作品の被写体で、スタイルと犯罪の結晶化を通して表現されているんだ。
―――プロジェクトを通してオーディエンスに一番伝えたいことは?
このプロジェクトは、答えを示すというよりは質問を投げかけるモノ。でも作品の鮮明な色はパソコン画面ですごく良く映っているし、ブロガーやタンブラー上でいろいろと出まわっている。インターネット上でたまたま見つけてくれた人に魅力的に思われたらこのプロジェクトも成功したことになるんだと思う。ショッキングな色で驚いてもらって、1分でもいいから東コンゴの悲惨な惨劇について少しだけ学んでもらえたら良いね。
さらなるゴールは、観客を挑戦的で邪悪な世界に夢中にさせること。人間が多大な苦痛を味わっている状況における美的価値を探求しながら。僕の作品の根本的なところには、両極端の世界を衝突させることにある。物語が言語を超えて存在できるぐらい耐えがたく表現できるアートの可能性と、具体的な惨劇を記録して世界へと発信できる写真の可能性を衝突させたいんだ。
interview & translation : Ihiro Hayam
リチャード・モス
1980 年アイルランド・キルケニー州生まれ。2013年ヴェネチア・ビエンナーレで、アイルランドを代表する「アイリッシュ・パビリオン」内にて、新作『The Enclave』を展示。大きな暗室内に6つのスクリーンが用意され、16 ミリのコダック・エアクロームを使って撮影した40 分の映像が投影される。スクリーンは両サイドから見ることができ、観客は作品の音と映像に応じて彫刻的な迷路を移動しながら能動的に作品を体感できる。www.richardmosse.com