内藤由樹の海外武者修行ログ
vol.0 酔った勢いで航空券を買った話


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

いきなり旅の話として始められてもなんのことだか…となるので、
まずは日本を出た理由を説明しようと思います。
この連載を始めるにあたり、読んでくれる人にそこは説明すべきだろう。

ということで思い出しているのですが、正直あまり覚えていません。
これを書いている今は2014年5月頭。飛行機のチケットをとった9ヶ月も後です。
できるだけ正確に思い出して書きます。

あれは2013年の夏のことでした。
少しづつ写真業界?の知り合いが増えていって、
君はこれから何がしたいの?と聞かれる度に答えに困っていました。
いつもその時につくれる精いっぱいのものをつくって、
それが妥当に評価されて、人様に見てもらえる機会があればいいなあ。
そしてその精いっぱいがどんどん良くなっていって、
それなりに生活できたらいいなあと思っていました。
展示とか、本とか、ギャラリーに所属するとか、
かっこいいっぽい言葉はよく耳にするけど、それがつまりどういうことなのかわからなかったので
それらのこともピンと来ませんでした。

誰々みたいになりたい!とかいうのもなかったので、
目標、というか、志しがなかった。
日本人の写真家の先輩方で、素敵な、尊敬する人はたくさんいます。
けれど、そこだけ見ていても、そこには辿り着けないような気がしていました。
今の自分が憧れているような場所にいる人たちは、もっと先を見て動いていると考えていたからです。

しかし、何をどう見たらいいのかもわかりませんでした。
写真に関してあまりにも勉強不足で無知でした。
インターネットのあるこの時代、日本にいても、
情報は入るし、勉強だってできるはずだけど、自分はできませんでした。
ならば。経験しようと。
わたしはこれまでも体験から学ぶことが多かったので、
実際にそこに居てみて、そこで何か得てやろうと思いました。
見えていないところは志すこともできない。
ということで、最初は最も写真っぽい”パリフォト”を見に行くべく、パリまでのチケットを買いました。
そして最もアートっぽいNY行きのチケットも。
そこから先は、そこで見えてきた縁みたいなものに従おう。
と。

真面目に書くとこんな感じです。
でも日本を出る時にこのように考えていたかはわかりません。
日本からパリまでの往復チケットがあってパリまで行けばいつでも帰れるのに、銀行の残金もどんどん少なくなってきているのに、日本食が恋しいのに、旅行にも飽きているのに、それでもなんで帰らないんだろうと、その都度考えて見えてきました。

実際のところは、なんだかその時日本に居ちゃいけない気がしつつなかなかどうしたらいいかわからなくて、ある夏の暑い日、住んでいた瀬戸内海で友達と呑みにいってすっごく酔っ払って、夜の港でiPhoneに入れたももクロのライブの映像を見て(その友達もわたしもももクロファン)勇気がでて、次の日判断能力の鈍った二日酔いの勢いでパリフォト行っちゃえ!とチケット取ったのがきっかけです。
友達には「それ自分探しじゃん!」と言われました。
ちょっと違うけど、わざわざ否定するほど違和感も感じませんでした。
まあ、きっかけなんかはどうでもいいです。

酔った勢いでもなんでも、今自分はいろいろなものを見て、いろいろ考えて、撮って、作品もつくって、(Macがあればどこでもできるなんていい時代)出てきて良かったなあと思っています。
いろんなびっくりするようなことがあるので、
それを、共有できたらおもしろいなあとこの連載を書いています。

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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vol.1 おかっぱにした話
vol.2 はじめて英語で本気の喧嘩をしようとしてできなかった話
vol.3 学校見学とNYの人情に触れた話

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