自信に繋がる一台。
勝倉崚太さんによるカラーマネジメントモニターBenQ SW271Cレビュー
国内外で作品を発表しつづけ、現在は東京工芸大学芸術学部写真学科准教授として活動している写真家・勝倉崚太さんに、カラーマネージメントモニターBenQ SW271Cを使用していただき、レビューしていただきました。
text:勝倉崚太
圧倒的な解像度の高さと正確な色再現
写真の最終アウトプットはプリントであると考える私にとってモニターは極めて重要な機材です。今回、カラーマネジメントモニターBenQ SW271Cを使ってみて、とても使い勝手が良い、使いやすいという印象を持ちました。使い勝手が良いとは少し乱暴な言い方ですがモニターはカメラよりも、ほぼ毎日使う機材なのでストレスを感じることなく使えるのは大切なポイントです。
BenQ SW271Cで写真を開いてみると、その解像力の高さに驚きました。普段使用しているモニターも購入時はそこそこハイスペックなものでしたが、4K UHD(3840×2160)の解像度と比べるとこんなにも違うものかと実感しました。明るいところから暗いところまで、そのデータが持っている階調を余すところなくしっかりと確認できている感覚になりました。これはとても大事なポイントで、自信を持って色調整などのデータ処理を終わらせる、完成させることに繋がります。
そして透過光であるモニターと反射光で見るプリントは異なるものです。だからこそ常に一定に見ることができるモニターが必要になります。
まず、今までにないコーティング方法を採用したARTパネルで、反射が最小限まで抑えられているため、そもそもモニターで見るデータとプリントしたものの差異が少ないと感じました。そしてハードウェアキャリブレーションに対応していて、ハードウェアキャリブレーションソフト「Palette Master Element」が無料提供されています。このソフトには簡易モードと詳細モードがあり、どちらも試してみましたが、詳細モードでも10分も掛からず設定できました。また他社のソフトより、手順や手作業で合わせていく項目が少ないところも好印象です。手軽に常に一定で正確な色や濃度で表示することができます。測定するパッチセットサイズが大、中、小とあり、サイズが大きいほど細かく測定するため、より正確ですが時間は掛かります。こちらも全てのサイズを試してみました。結果、私の目にはどのサイズでもほとんど差を感じなかったので、今後は中で測定したいと思います。中だと6分弱と、とても短い時間で測定できます。キャリブレーションはおおよそ月に1回は行ったほうがよいと言われていますが、面倒臭がり屋な私はついつい間が空いてしまいます。しかし6分弱なら毎月できるように思います。
私は、作品制作は必ずフィルムを使用して、仕事の撮影の場合はデジタルカメラを使用します。デジタルカメラでは撮影する時から色空間をAdobe RGBに設定しています。レタッチ作業ももちろんAdobe RGBで行なっているので、Adobe RGBを99%カバーしてる点も安心できます。冒頭にて最終アウトプットはプリントと述べましたが、仕事の撮影では、私の場合は、色見本を渡さず、データのみを納品することも多くあります。また近年、海外でのフォトフェスティバルやイベントにて作品を発表する機会があったのですが、COVID−19の影響もあり、私自身は渡航できず、データを送り、現地でプリントと額装を行なってもらうこともありました。どちらの場合も正確な色再現ができるモニターにて的確な色調整が必要になります。
作業効率を上げてくれる機能が充実
仕事の場合には、納品したデータは最終的には印刷会社さんによってCMYKに変換されて、何らかの印刷物になりますが、印刷された色を確認する色校正用の初校を見て、思い通りの色になっていないこともあります。そこで付属されているホットキーパックG2(OSDコントローラー)がとても有効であると思いました。コントローラーキー1、2、3にはデフォルトではAdobe RGB、sRGB、モノクロの3種類のカラーモードが登録されていてワンタッチで瞬時にモードを変更してプレビューできます。そしてこのカラーモードをデフォルト設定から変更することが可能です。少し難易度が高いようですが、私なら①Adobe RGB②Paper Color Sync③カスタム(カスタムにてCMYKを手動設定)に設定してみたいです。データで入稿する場合は、Adobe RGBで色合わせしたデータをボタン③を押しCMYKで確認することができ、自らプリントを行う際には②のPaper Color Syncを押して、プリントする際の色を事前に確認できます。今回はカスタムの設定を行なっていませんが、ホットキーパックG2によって瞬時に確認ができ、納得そして安心できるデータ調整が行えます。
異なる色空間のデータを左右に並べて同時に表示できるGamutDuo機能も非常に魅力的です。1台のPCからも、2台の異なるPCからも、同時に表示比較することも可能です。27インチの大きな画面いっぱいに並べて比較できるのでとても見やすく、作業効率も上がります。また大きな画面ですが、全体を数十個の区域に分け、高精度な装置を使用する繊細な処理を施して、色と明るさを細部まで微調節するムラ補正技術によって、スクリーンの隅々まで正確な色が表現されているので問題なく比較して判断できます。
作品制作においてカラーフィルムを使った場合はFlextight スキャナーにてフィルムスキャンを行なっています。Flextight スキャナーの3fデータは、以前のバージョンのPhotoShopだと直接ホコリなどのゴミをコピースタンプツールなどで消すことが可能です。この場合は60W充電可能USB Type-C端子が便利です。変換アダプターを用いて3F対応のPhotoShopが入っている古いノートPCを繋いでの作業になり、ペンタブ、プリンターなど繋ぐコードが多くなってしまいます。そこでUSB Type-Cのコード1本でモニターとPCを繋げることができ、さらには同時に充電も可能なので、PCの電源コードも繋がなくてもよく、机の上をすっきりと作業できるのも嬉しいところです。長時間、作業をしているといつの間にか机の上が資料やメモやプリントで埋まり、作業空間がなくなってしまうので1本でもコードが減るのはとても助かります。
そしてスタジオは特に、撮影の現場ではPCとカメラを繋いでキャプチャー撮影を行うことがほとんどです。レタッチャーさんが現場で参考に処理することもあります。これらの場合には、複数の人がひとつのモニターに映る写真を同時に見ることになります。座って見る人、立って見る人、右から左からと様々なポジションから見ます。ノートPCを筆頭に視野角が狭いモニターだと、見る位置や角度によって、見え方が大きく異なってしまいます。BenQ SW271Cは視野角が左右上下ともに178°と広く、自信を持って写真を見せることができます。
遮光フードが標準装備されているのも嬉しいところです。同じくらいの性能の遮光フードを購入すると数万円は掛かってしまいます。キャリブレショーン用に上面にフタ付きの窓があり、測定器を簡単に入れることができる点もしっかりと考えられています。故障した時には、修理期間中に代替機を貸し出ししてくれるサポートがあるのもありがたいです。カメラなどの機材には代替機サポートはありますが、モニターは毎日のように使うのにサポートがないので、これは本当に助かります。
今回、BenQ SW271Cを使ってみて、モニター自体にこれだけの機能が搭載されているものは他にはないというのが実感です。写真を処理するアプリケーションではできることもありますが、モニター自体に機能があり、またコントローラーを使用することで、ワンタッチで行えるのはとても便利で珍しいと思いました。写真を正確に高解像度で表示するのはもちろんデータ調整を円滑に進めることができる機能が搭載されています。これらの機能に対してコストパフォーマンスもかなり高いです。今、使用しているモニターは22インチだし、解像度の違いは圧倒的だし、、、素直に欲しくなりました!
BenQ SW271C
主な仕様
●Adobe RGB99%対応写真・映像編集向けカラーマネージメントモニター
●27インチ4K UHD(3840×2160)の解像度のIPSパネル採用
●正確な色再現を可能にする「AQCOLOR」技術採用
●Adobe RGB99%、sRGB/Rec.709 100%、DCI-P3/Display P3色域 90%までカバー
●スムーズなカラーグラデーションを可能にする10bit色深度
●ムラ補正技術により、均一なユニフォミティを実現
●ハードウェアキャリブレーション対応
●キャリブレーションソフトPalette Master Element(付属)が利用可能
●カラー写真をモノクロでプレビューできる3段階のモノクロモード
●異なる色空間の映像を左右に並べて同時に表示できる「Gamut Duo」機能
●Pantone認証、CalMAN認証を取得
●HDR10(PQ方式)・HLG方式対応
●60W給電可能なUSB Type-C搭載
●モニター(遮光)フード標準搭載
●3年間保証/修理期間中に代替機貸出できる「センドバックサポート」対象製品
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勝倉崚太
1978年、東京生まれ。2003年より雑誌を中心に活動する。作品制作としては個人的なものと歴史や時代という公的なものを結びつけることをテーマにしている。フランス、オーストリア、インドネシアなど国内外にて作品を発表している。
主な展覧会に「名もなき話」(個展、nap gallery、東京)「ニッポン小唄」(個展、PGI、東京)「BANDUNG PHOTO SHOWCASE 」(グループ展、SOEMARDJA GALLERY、インドネシア)「Wie im Märchen」(グループ展、Kunsthaus Horn、オーストリア)など多数。現在、東京工芸大学芸術学部写真学科准教授