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内藤由樹の海外武者修行ログ vol.10 それほど怖くなかった。かと思いきや少し怖かった話

Magazine, レポート


2012年関西で行われた日本最大級の写真イベント「御苗場」でレビュアー賞を受賞した注目若手作家・内藤由樹。
現在世界各地を旅しながら写真を撮影している。
http://yuki-naito.tumblr.com

グアテマラの首都は、国民でも銃強盗にあうくらい治安悪いから本当に気をつけてね。と
いろんな人にびびらされて、ペルーからのフライトは気が気ではなかったのですが、到着してみると
空港の人たちもとてもフレンドリーで両替の女の子はとても可愛かったし、
や、これは夜中にエチオピアの空港に着いたときより全然怖くないぞ。となりました。

空港から目的地であるアンティグアにはタクシーやバスが出ています。
基本的には空港内から出発するのですが、
空港を出て100m程歩いたところから出ているシャトルバスは、5$くらい安いのです。
5$というものは、NYや東京では地下鉄2回乗るのにも足りないような金額ですが、
グアテマラでは1日の食費です。
レストランには行けないけど、市場では3食プラスおやつくらい食べられます。
なのでわたしは、シャトルバスに乗っていくことにしました。
ああどんどん金銭感覚が変わっていく。

そのバス、というかミニバンは、3人集まったら出発するということなのですが
運転手もできるだけ人を集めていきたいので、なかなか出発してくれません。
アメリカ人のおじさん2人が乗ってきて、3人になったのに
もっと人集めるから後10分待ってくれ。と、バス乗り場でドア全開のまま放置されました。
全財産の入ったバックパックが丸見えなのが気持ち悪いなあ、と開けっ放しのドアを見ていました。

そしたら。
上着のポケットに手を突っ込んだ若い男が、すごい形相でこっちに向かって走ってきました。
反射的に立ち上がって、思いっきりドアを閉めて鍵をかけました。
ぎりぎりのところで計画?が失敗したその男は、ドアを殴ってそのままどこかへ行きました。
3秒くらいの出来事。
おじさん達は寝ていたのですが、ドアを閉める音でびっくりして起き、驚いていたので説明しました。
何でドアをずっと見てたのと聞かれ、わたしは誰も信用してないから。と答えると
へえ、そうなんだ…と引かれてしまいました。

せっかくこのバンの平和を守ったのに、何で変な目で見られないといけないんだ。
あんたたちもここは外国なんだからちゃんとしっかり気をつけなさいよ!と、
まるで夜ホステルでビール飲みながら絡んでくる
熟年バックパッカーおやじの説教みたいなことを言ってしまい、
いやあ他に客捕まらなかったよ~とヘラヘラ戻ってきたドライバーに
ドア開けっ放しで放置すんじゃねーよ!と怒り、
微妙な空気のままアンティグアまでの道のり1時間を耐えました。

わたしはあんまり治安の良くないところにも行くけれど、すごいビビリなので
いつもどこにいても、いきなり後ろから首閉められるかもしれない。と
脳内でシュミレーションしながらビクビク町を歩いていて、それが初めて役に立った。

到着した宿には
数日前に町中で交通事故にあって胴体にギブスを装着し、あんまり動けない旅行者がいて
ああやっぱりグアテマラ危険なんだ、どうしよう…なんで来ちゃったんだろう…もう、帰りたい…と
心地悪い安宿のドミトリーのベッドで落ち込みながらも
疲れてすぐに眠りました。

※写真は泊まっていたホステル

内藤由樹 / ないとうゆき
1987 年大阪府生まれ。2013年 キヤノン写真新世紀 佐内正史選・佳作/第2回御苗場夢の先プロジェクトグランプリ/キヤノンフォトグラファーズセッション ファイナリスト/2012 年 御苗場vol.11 関西 レビュアー賞/写真集に「being」(2013年・TIP BOOKS)がある。

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