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写真家の履歴書 vol.1まるやゆういち《前編》


商業カメラマンとして働く人から、作家として作品を作り続けている人まで。
さまざまな写真家がどうやって写真家として独り立ちするようになったのか。
写真家の経歴を紐解く不定期連載です。

初回にお話をお伺いしたのは、フォトグラファーのまるやゆういちさん。「PHaT PHOTO」写真教室に入り、2004年にシー・エム・エス入社後、2011年に独立。現在はフォトグラファーと撮影講師の2つの肩書きで精力的に活動されています。9月からはじまる「PHaT PHOTO」写真教室のプロ養成講座の講師も務めるまるやさんに、ぜひ聞いてみたかったフォトグラファーになった頃のこと、プロになるためのヒントなど、いろいろ教えていただきました。前編、後編の2本立てでお届けします。

まるやゆういち

1974年 青森県に生まれる。2000年 タヒチの美しさに惹かれ写真を始める。2003年 「PHaT PHOTO」写真教室ビギナークラスの自己紹介でプロになります宣言をし、同年プロ養成講座2期生となる。2004年 写真家テラウチマサトのアシスタントとして幾多の現場を経験。2005年〜2011年 タレント/モデル/経営者/著名人など1000名以上の撮影実績を重ねつつ、写真教室事務局の運営もこなすと同時に撮影講師としても活動、のべ500名以上の生徒さんにレクチャー。2011年 初の写真教室文化祭を見届けると同時に独立。2017年現在 フォトグラファー/撮影講師、両方の活動を精力的に行い、その実践に裏付けされたテクニックとわかりやすい指導に生徒さんからの信頼も厚い。

 

◆大工さんからフォトグラファー?

――プロのフォトグラファーになる前は何をされていたんですか?

まるや 青森県で生まれて18歳の時に上京し、すぐに洋服販売の会社に就職しました。そこに4年勤めた後に、大工さんをやりました。

――大工さんをやられていたんですか…!どうして洋服屋さんから急に?

まるや 父親が東京で大工さんをやっていたんです。洋服屋は23歳で辞めたのですが、特にやりたいことが無くて。今でいうニート生活を2か月くらい送っていました。父親と一緒に住んでいたら、そのうち、大工を手伝えって言われました。1、2か月くらいですぐ辞めるつもりだったんですけど、やりはじめたら結構給料が良くて。お金がみるみる貯まりはじめて、結局7年間くらいやりました。

 

◆感動が全く写っていなかった

――大工さんをやられていて、何がきっかけで写真を撮り始めたんですか?

まるや 2000年に旅行でタヒチに行ったんです。せっかく良い場所へ行くからということで、フィルムのコンパクトカメラを買いました。それでタヒチに行って写真をたくさん撮ったんですが、青い海や綺麗な海などでとても楽しかったんですよね。でも日本に戻って現像した写真を見たら愕然としました。自分が感動した風景が全然写っていなかったんです。それでも写真はすごく楽しかった。その頃大工さんを続けることに悩んでいた僕は、写真で飯が食えるようになりたいと強く思ったんです。ちょうど26歳の時でした。

――それは、もっと納得のいく写真が撮りたいと思われたからですか?

まるや というのが、2割か3割くらいですね。残りは、フォトグラファーへの憧れや、カメラそのものが楽しく、好きだという衝動でした。だから、何が被写体としてあるのかというのはよく分かってなかったですね。グラビアや風景ぐらいしか知らなかった。でもとにかく何かを撮りたい、ずっとそう思っていました。

――写真を仕事にするために何かしたことはありますか?

まるや 毎日大工さんの仕事が17時で終わるのですが、その後は必ず大手量販店に行ってカメラをさわり、そのままカタログを持ち帰って本屋さんに行き、写真の本を読み漁りました。家に帰ってご飯を食べたら、またカタログを見るとか。そういうのを3年くらい毎日。毎日の「ように」ではなく、毎日です。

――学校に入ろうということは考えなかったんですか?

まるや 「習うより慣れよ」という言葉が脳裏に浮かびました。専門学校に入ることも考えましたが、その学費を払うよりも現場に入ったほうがもしかしたら早いのかなと思ったんです。結婚式の司会の方が知り合いにいて、これから結婚式を挙げられる方で写真を撮らせていただける方が、もしいたら紹介してくださいって手紙を書きました。それで、少しずつ撮り始めるようになったんです。

――自分から撮る機会をつくりにいっていたんですね。

まるや とにかく撮りたくてしょうがなかったので。多少なりともお金を頂いて撮影していましたが、お金を払ってでも撮らせて欲しいくらいでした。今考えるとすごいですよね、衝動って。

 

◆全部ができる人は必要ない

――その熱い衝動はずっと続いたままですか?

まるや もちろん波はありますよ。写真をやめようと思ったことはないけど、悩んだことはあります。写真の世界はとても激変していて、今まではある程度なり方というものがあったんですよ。このステップを踏めばプロになれるというような。でも今はインスタグラムとかで有名になった方が、企業などから何十万の仕事を受けるとか、そういうことがあるんです。僕は日々色んな仕事を頂いて生活はできているので、そういう意味ではプロフォトグラファーを名乗れるのかなと思いますが、でもこれからの自分の在り方っていうのは考えますね。

――自分の在り方とは、どういうことですか?

まるや 写真って、技術はもちろん大事なんです。大事なんですけど、今僕は色んな種類を撮れるかというとそうではない。でも水中写真や陸上のスポーツ、料理写真など、なんでも撮れる必要はないと思っています。お医者さんの世界を見ていても、脳外科の人と心臓外科の人は、同じお医者さんだけど違うわけです。もちろん勉強はしないとお医者さんにはなれないけれど、やっぱり専門分野というか得意分野が絶対出てくるんですよ。編集者だって、今は写真の本を編集していますが、これからは医学の本を書いてくださいって言われたら、びっくりしませんか?

――無理ですね…

まるや そういうものですよね。だからなんでもやれる必要は全くなくて、やっぱり自分の好きなものとか、得意なものが大切なんだと思います。僕はそれが人物撮影であり、また誰かに写真を教える、ということでした。

 

◆自分がやりたかった世界が、そこにあった

――写真を教える立場になられたきっかけはなんだったんでしょうか?

まるや 「PHaT PHOTO」写真教室のプロ養成講座に入って、教室を運営している株式会社シー・エム・エスに入社したんです。僕は「習うより慣れよ」と思って独学で撮っていたんですが、結婚式の写真を撮る時にいい機材を使っていても、全く撮れなかったんです。出来上がりがよくなかった。壁にぶち当たったんですね。これはやはり習う必要があるなと感じ、写真教室のビギナークラスに入るのと同時に、プロ養成講座にも入りました。プロ養成講座は、自分がやりたかった世界、学びたかったものがあったので、すごく楽しかったです。ストロボを使った人物撮影とかですね。当時撮ったポラロイドフィルムは今でも残っています。でも養成講座を終えたからといって、すぐにプロの仕事をすることはできません。そのまま大工さんを続けていたんですが、ある時、「PHaT PHOTO」写真教室の校長でシー・エム・エス代表のテラウチマサト氏のアシスタントの方から、自分の代わりにアシスタントにつけないかという電話がきたんです。喜んで行かせてもらいましたよ。その後にも何度かアシスタントとして呼ばれるようになり、「プロになりたいならうちに来るか?」という感じでテラウチさんに声を掛けてもらって、シー・エム・エスに入社しました。それからは自分で撮影もしつつ写真教室を運営しながら、同時に撮影講師としても活動をスタートしました。振り返ると、シー・エム・エスに入らなければ、教えるというきっかけはなかったでしょうね。

――どうして独立しようと思ったんですか?

まるや 2011年の3.11がきっかけです。社会の在り方、自分の在り方について色んなことを考えました。うまく言えないのですが、なにかが変わったんです。いろんな現場を体験しながら、漠然と独立のことは頭にありましたが、このタイミングが独立の時期かもしれないと思いました。

――その後も写真を撮り続けようと思っていたんですか?

まるや 僕は写真を撮ることは自分の天職だと思っているので、それ以外になろうとは考えていないです。それは今も同じです。

★後編は後日更新!

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【カリキュラム・スケジュール】※時間はすべて10:30~18:30、途中休憩を含みます。
〈第1回〉2018/4/22(日):プロという意味/機材の種類・セッティング/光の種類ほか
〈第2回〉6/10(日):露出計の測り方・見方 人物撮影と1灯ライティングほか
〈第3回〉7/8(日):人物撮影と1灯ライティングのバリエーション
〈第4回〉8/5(日):人物撮影と1/2灯ライティングのバリエーション
〈第5回〉9/9(日):人物撮影と各種ライティングの読み取り・バリエーション
〈第6回〉10/7(日):人物撮影と日中シンクロ(外ロケ編・都内公園予定)
〈第7回〉11/11(日):人物撮影と日中シンクロ(室内編)
〈第8回〉12/9(日):人物インタビュー撮影
〈第9回〉2019/1/6(日):料理撮影(基本編)
〈第10回〉2/10(日):料理撮影(応用編)
〈第11回〉3/10(日):プロダクト撮影
〈第12回〉4/14(日):営業実務の実際/各自プロフィール写真撮影

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