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フォトまち便り「Hello Local」vol.5 紀南フィルム ~わたしと仕事とカメラ ~

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熊野、富山、郡山、下田という4つの地域で活動する写真部が週替わりで投稿するリレー式連載「Hello Local」。第5話は、紀南フィルムへと再びバトンが戻ります。今回は紀南フィルムのメンバーであり、ご自身も地方公務員として地域発信に関わり続けている佐向大輝さんが担当。写真が佐向さんにとって、地域を知る上でどういった存在・役割になっているのか。レンズを通して地域を見つめるという事について、とてもとても大切な事が書かれているフォトエッセイです。ご覧ください。


カメラ、きっかけ、気づき

はじめまして。和歌山県南部(=紀南)で活動する紀南フィルムメンバーの佐向大輝です。年齢は今年30歳。職業は地方公務員(12年目)。カメラ歴は約8年です。自分にとってカメラってどんな存在かな~と考えてみたところ、いまとなっては欠かせない存在になっているので、そんなことを綴ってみようと思います。

地元は世界遺産「熊野古道」があることで知られる和歌山県・田辺市

私が住むのは和歌山県のちょうど真ん中あたり、近畿最大1,027㎢(ざっくり東京都の半分くらい)の面積を持つ田辺市です。

「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている熊野本宮大社や熊野古道だけでなく、紀南の中核都市として発展してきた田辺市街地、さらに日本三美人の湯の龍神温泉、水の国わかやまの代表格である百間山渓谷、新鮮で美味しい山海の幸など、自然と歴史に恵まれたたくさんの魅力があります。

海・川・山の豊かな自然が近距離にひしめく恵まれた環境

そんな地域の魅力を理解していたわけではありませんが、なんとなく地元が好きだったので、高校を出てすぐに就職。田辺市役所で働くことに。

はじめから写真に関心があったわけではありませんでした。仕事で写真を撮る必要があったのと、職場のカメラが古くて使い勝手が悪かったので、自前のカメラを買ったことがきっかけでした。

その頃の私は公民館に勤務しており、主に地域行事や、子供たちの郷土教育のお手伝いといった、地域への誇りを育む仕事に携わっていました。

地域学習での1枚。講師は地元の大先輩。

学校に顔を出して子供たちの様子を撮ったり、地域の行事や地域の風景を撮ったり。最初は単なる記録写真でしたが、写真を撮ることで、暮らしていても意外と気付かない地域の魅力を意識するようになります。

例えば、季節の移り変わりが感じられること。地元は梅の一大産地で、6月頃は梅の収穫、8月頃から梅の天日干し、12月頃になると梅の木の剪定、2月ごろになると梅の花が咲き、3月頃は防除作業など。

最初は、特産品が生まれる過程として知ってもらいたかった何気ない風景が、農家さんの姿を見つめていくうちに、地域の“暮らし”を実感できる特別な風景だと感じられるようになりました。


季節で移り変わる景色

意識と環境の変化

このころ人との関わりを通じて、仕事に対する意識にも変化がありました。地元には地域のために活動している人、決してスポットライトは浴びないけど自分たちができることをコツコツと積み重ねて地域を支えている人がたくさんいて、少しでもその人たちの役に立ちたいと思うようになりました。

そんな思いを持つ傍ら、世間では、人口減少・少子化が深刻化していました。現実問題として地元でも小学校の統廃合があり、私もその瞬間に立ち会うことがありました。地方消滅なんて言葉も出ていたころなので、そんな場面に立ち会うとなんとも言えない気持ちになり、当事者である地元の人たちの気持ちは図りしれないものでした。いつか自分が役に立てるよう、とにかく経験を積もう、いろんなところに顔を出して、いろんな考え方に触れようとしていました。

その中でカメラを通じて感じていた「地域の魅力を伝えていくこと」がひとつの手段なのかもしれないと考えるようになっていきました。

在校生や関係者が残した手形の記念碑。

公民館での仕事が3年続いたあと、私は和歌山県庁に出向し、観光に関わる仕事をすることになります。そこでは、主に世界遺産の熊野三山やその起源となった豊かな自然、奥深い歴史がある紀南エリアの観光振興を担当。

観光地のことを発信するためには、まず現地のことを知らなければと思い、機会をみてはカメラ片手に県内の観光地を巡って写真を撮っていました。単に景色を撮るだけじゃなくて、そこにある和歌山ならではのストーリーや背景に触れると、さらに地元が好きになり、やっぱりその魅力を多くの人に知ってもらいたいと思うようになりました。

そもそも観光の仕事は和歌山の魅力を多くの人に知ってもらうことなので、そうした点ではうってつけで、パンフレットひとつ作るにしてもその伝え方を考えたり、上司からは戦略的なことも教わったり、ときにはテレビや雑誌の編集者と取材に入ってその視点を参考にしたり、地域の魅力を伝えるために必要なことをたくさん学ぶことができたように思います。

撮りためた観光地の写真(1枚目から那智の滝、橋杭岩、百間山渓谷)

観光とローカルの交わり

県庁時代の大きな出来事のひとつが紀南フィルムとの出会いです。仕事を通じて紀南フィルム結成の瞬間に立ち会い、カメラ好きだったこともありメンバーに加えてもらうことに。うまく言葉にできないけど、紀南フィルムのコンセプトはスッと入ってくるなにかがありました。それは多分、メンバーそれぞれが地元の「何気なくあるけど特別なもの」を感じていて、それを誰かに伝えたいという思いを持っているから。それがカメラというツールでつながり、一緒に活動できているのはすごく心強いです。

メンバーと写真を撮りに行ったときの1枚

そんな貴重な経験に恵まれた2年間の出向が終わって、いまは田辺市で観光の仕事をしています。観光はその地域に関心を持つ最初のきっかけで、そこからさらに深めていくには紀南フィルムのような活動が必要だなと思います。それぞれの視点で地域の魅力を伝えていくことが、少しでも地域でがんばる人たちの後押しになればと思いながら、これからもシャッターを切り続けていこうと思います。

カメラを持つ前はなんとも思っていなかった、地元の海岸から見える夕日。

プロフィール 佐向大輝(さこうだいき)

1991年、和歌山県生まれ
高校卒業後、田辺市役所に入庁。窓口業務、公民館業務、和歌山県庁への出向を経て、現在は観光振興課にてプロモーション業務等に従事。公民館時代にカメラを手にしたことをきっかけに、生活しているだけでは気づかない地域の魅力を切り取っている。

 


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